先日お知らせした通り、finalは4月29日に開催された「春のヘッドフォン祭2022mini」会場で新製品発表会を開催した。そこでは自社ブランド製品に加えて、輸入販売を手がけているDITAとFiR Audioの注目モデルも紹介されている。

DITAの新しいフラッグシップイヤホン「Perpetua」

 まずシンガポールのDITAからは新しいフラッグシップイヤホン「Perpetua」(パーペチュア=永遠)が登場する。DITAの技術の粋を集めた有線イヤホンで、5月中旬の受注開始を予定、価格は50万円前後(予価)だ。

 今回、DITAのダニー・タン(DANNY TAN)氏がヘッドフォン祭2022に合わせてシンガポールから来日、発表会で新製品に対する思いを語ってくれた。

 そもそもDITAのイヤホンは今から10年前、2012年春のヘッドフォン祭で初お披露目されたという。当時は試作モデルの展示だったが、そこからブランドがスタートしたそうで、ダニー氏としても特別な思いがあるイベントであり、今回もコロナ禍という環境にも関わらず来日したのだという。

 そのPerpetuaは、創業から10年間のテクノロジーの集大成として開発された新しいフラッグシップイヤホンだ。新開発の12mmドライバーを搭載し、内部配線、ケーブル、プラグも新設計されている。

新開発の12mmドライバー「PPT-D」(Perpetua-Driver)

 ダニー氏によると、この数年ステイホームの機会が増えたこともあり、改めて音楽と向き合う時間が取れたという。そこで「音楽はエモーショナルさも大切」ということを改めて実感したそうだ。Perpetuaではそのエモーションとテクニカルの両方を充実させる製品を目指したとのことだ。

 なおダニー氏は高校生の頃からオーディオファンで、自宅では真空管アンプを使って音楽を楽しんでいるという。それらハイファイ機器で聴くサウンドが持つ表現力が、エモーショナルという感想につながり、イヤホンでその感動を再現しようと企画したのがPerpetuaということだろう。ちなみにダニー氏は高校時代から、日本語が読めないにも関わらず「StereoSound」誌を愛読いただいていたそうだ。

 Perpetuaの第一の特徴は、ダニー氏の説明にもあった新開発の12mmダイナミック型ドライバー「PPT-D」(Perpetua-Driver)の搭載だろう。重厚感とスケール感のあるサウンドを実現するために開発されたユニットで、従来の10mmドライバーから振動板の面積が65%増加している。

 振動板にはTEIJIN(帝人)のTEONEXという優れた強度特性をもつ特殊樹脂を使用し、きわめて精度の高いドライバーを実現した。内部配線には日本のハイエンドブランド、オーディオノート社の純度99.99%の純銀線を採用している。銀素材ながら、きわめて自然な音を再現できる素材として選んだそうだ。

DITA 代表取締役のDANNY TAN氏は、高校生の頃からオーディオ愛好家とか。同社サイトで公開されているYouTubeには開発室らしき場所が写っているが、そこには世界中のオーディオの名機が並んでいる

 ドライバーを格納する筐体は、DITAのフラッグシップイヤホンで使用されてきたチタンを継承。軽量かつ剛性が高いので、筐体の不要な共振も防いでくれる。ただチタンは硬い金属のため加工がたいへんで、Perpetuaの丸みを帯びた形状に切削するためには時間とノウハウも必要だったとのことだ。本体表面には高級時計にも使われるサファイアガラスがあしらわれている。

 イヤホンケーブルは、導体に高純度無酸素銅(PCOCC)を使用し、芯線に6mmピッチで線材を巻き付ける特殊なコイル構造を採用した、「コイルオーバーケーブル」が付属する。イヤホンとのプラグは交換可能で、接合部がさらに進化した「Awesome Plug2」を搭載している。

 Perpetuaはタイムカプセルのようなパッケージをイメージしているとかで、キャリングケースには高い質感と使い心地に優れたイタリアンレザーを使用し、また蓋がゆっくりと閉まるように設計されたこだわりのキャニスターケース(アルミ切削加工)も付属している。

 これらのデザインやロゴマークは多くの候補から厳選されたとかで、そこからも開発陣がPerpetuaという製品に込めた世界観を深く感じることができるだろう。

春のヘッドフォン祭2022 mini のfinalブース。DITAやFiR Audio、finalの新製品を試聴したいというファンが列を作っていた

「Perpetua」の主なスペック
●使用ユニット:12mmダイナミック型ドライバーPPT-D(Perpetua-Driver)
●再生周波数帯域:20Hz〜20kHz
●感度:108dB
●インピーダンス:20Ω
●コネクター:2Pin
●ケーブル:コイルオーバーケーブル
●筐体:チタン切削加工