映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第74回をお送りします。今回取り上げるのは、香港映画界を牽引しているアンディ・ラウ主演の『バーニング・ダウン 爆発都市』。オープニングからタイトル通り爆発のオンパレードという。60を超えてもアクション全開の彼の姿を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

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『バーニング・ダウン 爆発都市』
4月15日(金)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー

 中国、香港合作という表記になっているけれど、印象としては香港エンターテイメント映画の伝統をド真ん中で受け継ぐ一作だ。やっぱりおもしろいな、香港映画。お客さんを疲れるくらい楽しませてやるっ! というやる気に満ちている。

 舞台は香港国際空港から繁華街の旺角、そして環球貿易広場、青馬大橋(市街地と空港方面を結ぶ長大な吊り橋)と、香港の新旧の名所が次々に登場。それらが開始3分でバリバリと崩れ、紅蓮の炎をあげて燃えさかる。

 主演は『インファナル・アフェア』シリーズ、『暗戦 デッドエンド』、アン・ホイ監督の『桃(タオ)さんのしあわせ』と、ここ30年の香港映画を支えてきたアンディ・ラウ。

 それにアンディとは『暗戦 デッドエンド』(1999年)以来の共演になる『奪命金』のラウ・チンワン。もうひとり新進女優のニー・ニーがアンディのかつての恋人役で快演している。

 ニー・ニーはチャン・イーモウ監督の『金陵十三釵』(2011年・未公開)で話題を呼んだ注目株。その後『孫悟空』『雪暴 白頭山の死闘』などに出演している。今回は記憶を失ったラウに新たな記憶を植え付けるという難しい役どころ。ラストシーンでのふたりのやりとりはわかっていても泣けます。

 アンディー・ラウは2017年にタイでCF撮影中に落馬事故を起こし、下半身に大怪我を負った。本作で爆弾処理班のエキスパートを演じる彼は、作戦中に仔猫を助けようとしてブービートラップに引っかかり、左足を失ってしまうという役どころ。

 実際の怪我を考慮した設定かな、と考えていたけれど、走る、飛ぶ、逃げる、爆風に巻き込まれると香港アクションならではの体当たり演技を披露する。無くしたという設定の左膝から下は、もちろんCG製だけどね。

 それで最後には主題歌「相信我」まで歌いあげるのだから、これが香港のスター男優のきびしさ、華やかさなのだ。

 ウォン・カーウァイ監督のラヴストーリー『いますぐ抱きしめたい』が日本公開されたときだから、1991年か。来日したアンディは未来を夢みる青年だった。

 そんな彼ももう60歳を越えた。それで、これだけの娯楽作に挑むのだからすごい。

 監督は『イップ・マン 最終章』『ホワイト・ストーム』(力作『レクイエム 最後の銃弾』の続篇)などのベテラン、ハーマン・ヤウ。アクション監督は『ドラゴン・マッハ!』のニッキー・リー。VFXアクションは正直、邦画よりも上を行っている。

映画『バーニング・ダウン 爆発都市』

4月15日(金)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー

監督・脚本:ハーマン・ヤウ
出演:アンディ・ラウ、ラウ・チンワン、ニー・ニー、フィリップ・キョン、ツェ・クワンホー
原題:拆彈專家2
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
2020年/香港・中国映画/シネスコ/5.1ch/121分/映倫G
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