Xiaomi(シャオミ―)から、完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデル「Xiaomi Buds 3T Pro」(¥24,000前後)が発売中だ。

 Xiaomi Buds 3T Proは、既報の通りスティックタイプの完全ワイヤレスイヤホン。Proというネーミングからも分かるように、同ジャンルの製品で近年注目の機能は全部入り、となっている。アクティブノイズキャンセル(ANC)機能を筆頭に、独自コーデックLHDCによるハイレゾ伝送(もちろん対応機器との組み合わせ時)、外音取り込み機能、3Dオーディオ、IP55の防水・防塵機能、ワイヤレス充電対応と、至れり尽くせりなもの。

質感も高い仕上がり(蓋裏のシールはがし忘れました)

 加えて、フラッグシップモデルらしくデザインも秀逸で、テストに用いたブラック(深いブルーにも見える)仕様は、マット(艶消し)で質感も高く、充電ケースの蓋の噛み合わせも隙間なくピッタリとしている。イヤホン本体もケースと同様な仕上がりで、高級感溢れる見た目となっている。イヤーチップの形状は楕円形と少し特殊なものであり、内部のゴミ侵入防止用のメッシュが、本体側だけでなくイヤーチップ側についているという不思議な仕様。

 曲面で構成されたイヤホン本体は、手触りもよく、引っかかる部分がない割には持ちやすくなっている。充電ケースからの取り出しもしやすい。

 イヤーチップは他のメーカーに比べると柔らかく、装着感は良好。スティックタイプなのでバランスもいい。そのイヤーチップ自体はかなり柔らかいため、カナル型モデルで感じやすい、耳の詰まった印象がないのは特筆できるだろう。一方で、柔らかいためか遮音性に関してはほぼ周囲の音がそのまま聞こえてくる感じとなる。試しに電車内で、イヤホンを着けたり外したりしてみたが、ノイズ感はそれほど変わらなかった。

 では音質について簡潔に紹介したい。テストに用いた再生機は、Astell&Kernの「A&ultima SP1000」とXiaomiのスマホ「11T Pro」の2台。基本的な音質チェックはSP1000で行ない、Xiaomi独自のハイレゾコーデックLHDCや3Dオーディオのチェックに11T Proを使っている。

 SP1000との接続コーデックはAACとなる分、CDクオリティの楽曲では音質は軽めで(音の重心も高め)、細かい音(ディテイル)の表現力はいま1歩だが、SBCに比べれば、音場感や定位感はきっちりと再現されており、音楽の雰囲気を味わえる仕上がり。

 コンテンツをハイレゾ(96/24)すると、音に厚みが増すとともに、重心が下がってどっしりとしたサウンドとなり、ハイレゾらしさが感じられる再現性となる。音の消え際の響きの余韻も増え、より音楽らしさが味わえるようになった。音場感も広がるし、定位感もよくなるのが分かった。

 一方で、mp3コンテンツを再生してみると、レンジ感や音場感は大幅に制限されるものの、音楽らしい雰囲気はうまく再現されている。

 アクティブノイズキャンセル(ANC)のオン/オフによる音質の変化は多少あり、SP1000&AACコーデックでの再生時では、高域部分が若干押しつぶされるようになる(オフにすると、上方にふわっと空間が広がるように感じる)。

 ANCの効果は、リリースにもあるように、「ライトモード」「バランスモード」「ディープモード」「アダプティブモード」の4種類から選べるが、アダプティブモードについては、地下鉄のように周囲のノイズ(騒音)が連続的に変化するような環境下では、ノイキャンの効き方が急にカグッと変わるような挙動を示すことが多くあり(今回のテストでは)、それ以外を選んだ方か結果はよかった。

スマホ「11T Pro」のメニュー表示。ノイズキャンセルの効果は4種類から選べる

 ノイキャン効果については、周囲の騒音を薄くする感じで、例えば10の騒音が、ANCをオンにすると3~4ぐらいになる、という具合だ。先述したように、イヤーチップの遮音性はあまり高くないので、車内アナウンスはよく聞こえてくる。ちなみに、ノイキャンオンにすると、ノイキャンモデルが出始めたころの、頭の内側に吸い付くような違和感があるのと、屋外使用時に風切り音が強化されてしまうという弱点もあった。

 今度は、再生機を11T Proにして、XiaomiのハイレゾコーデックLHDCを試してみる。スマホがXiaomi製ということもあり、Bluetoothで接続すると、アプリを入れなくてもXiaomi Buds 3T Proの設定画面が表示される。トップ部分では、イヤホンの充電具合のほか、アクティブノイズキャンセルのオン/オフ/外音取り込みモードの切り替えアイコンが表示される。メニューを下にたぐっていくと、3Dオーディオ(頭の動きを追跡)のオン/オフや、LHDCコーデックのオン/オフの項目が出てくる。

スマホ側のイヤホン操作画面で「LHDC」をオンにする。低レイテンシー(低遅延)機能もあり

 ここでは、コーデックはLHDC(96/24)を、送信状況は「オーディオ品質の最適化(900kbps)」を選択している。

スマホ側は、LHDCコーデックを選択

 音質としては、音の軽さは依然としてあるものの、音場感や響き、余韻といった部分では96/24という伝送スペックを味わえるもの。コンテンツをハイレゾ(96/24)にすると、重心が下がり、響き感もより豊かになる印象だ。ハイレゾらしい雰囲気を感じられる再現だ。ただし、SP1000(こちらはAACコーデック)に比べると、音楽プレーヤーとしての基礎体力に大幅な違いもあり、S/Nや音の艶っぽさには大きな差が出ているのも事実。クリアネスはAACコーデックで聴くSP1000のほうが圧倒的に高い。

 ちなみに、この状態でANCをオンにしてみると、SP1000の場合とはかなり音調が異なり、低音の再現性がかなり強化され、細部の再現性というよりは力強さが前に出てきて、全体的に野太い音になる。高域はかなり圧縮される印象だ。

 3Dオーディオについては、他社のようにコンテンツ連動しているのではなく、いわゆるバーチャル的に効果をかけているようだが、なかなかに面白い仕上がり。クリエイティブメディアのSXFIのように、音が頭内定位から解放され、スピーカーから聴いているような感覚が味わえるようになる。手元にあるスマホで設定していることもあり、機能をオンにすると、そのスマホから音が聴こえてくるような感じとなる。

中央にあるメニュー項目「頭の動きを追跡」が3Dオーディオ機能

 Netflixでいくつか映像コンテンツを再生してみたが、音質についてとやかく言わなければ、効果としては面白く楽しめたし、「低レイテンシ―」機能もあり、音声の遅延はほぼ感じなかった。好みの映像コンテンツをダウンロードして通勤時に楽しむ、といった使い方には、便利で楽しい機能と言えるだろう。