1987年公開の長編アニメーション映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』が、2022年3月14日に35周年を迎えた。本作は山賀博之監督をはじめ、庵野秀明や貞本義行、樋口真嗣など、後に多くの名作、話題作を世に送り出すトップクリエイターが集結した若き制作集団GAINAXと、バンダイ(現 バンダイナムコアーツ)がタッグを組み制作された、両社にとって初の長編アニメーション映画。

 通貨や言語、文化に至るまで、全てゼロから作り上げられた膨大、且つ緻密な世界観は、その世界で息づくキャラクターとともに高い評価を得ている。また、その作画技術の高さは当時世界中のアニメファンに熱烈に支持されている。特に庵野秀明によるクライマックスのロケット打ち上げシーンはそのリアリティで観る者を圧倒する仕上がり。1987年の劇場公開以来、今なお「後世に遺したいアニメーション作品」のひとつとして世界中で語り継がれる伝説的な作品となっている。

 そんな『王立宇宙軍オネアミスの翼』の公開35周年を記念して、本編の4Kリマスター化が決定。山賀博之監督の監修のもと、35mmマスターポジフィルムからの4Kスキャン&4Kリマスターを実施し、フィルムが持つ情報を鮮やかに再現。そして、この 4Kリマスター化に伴い、2022年に4Kリマスター版によるリバイバル上映(音声は当時のオリジナル版を予定)も決定した(詳細は後日、公式サイト・Twitter等で発表)。

 また、今回の 35周年&4Kリマスター化に寄せて、山賀博之監督よりコメントも到着した。「1987年3月14日に生まれた世界に立って」と題されたコメントの中で、本作が劇場公開された1987年3月14日を「その机上の空論がこの現実とリンクした日である。」と振り返っている。

■山賀博之監督『王立宇宙軍オネアミスの翼』35周年コメント

「1987年 3月 14日に生まれた世界に立って」
脚本・監督山賀博之

机上の空論という言葉がある。
机の上だけで考えた現実とリンクするかどうかも分からぬ理屈のことであるが、今から38年前、僕と岡田斗司夫さんの二人はこれに取り組んでいた。

その時、二人が向かいあって座っていた大阪市生野区にある桃谷駅前商店街の喫茶店のテーブルの上に載っていたのは、おしぼりと水とコーヒーのみ。メモ用紙の一枚も無かった。

二人の机上の空論に特徴があったとすれば、話題にしているテーマ自体が「机上の空論」についてだったことだ。

この喫茶店の空間内で語られている理屈は、一歩店を出れば、果てしなく流れる大河のようなあの世界の重さに匹敵することができるのか?

そして3年後となる1987年3月14日。その机上の空論がこの現実とリンクした日である。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

<スタッフ>
エグゼクティブ・プロデューサー:山科誠/企画:岡田斗司夫・渡辺繁/原案・脚本・監督:山賀博之/キャラクターデザイン・作画監督:貞本義行/作画監督:庵野秀明・飯田史雄・森山雄治/助監督:赤井孝美・樋口真嗣・増尾昭一/美術監督:小倉宏昌/撮影監督:諫川弘/音響監督:田代敦巳/音楽監督:坂本龍一/制作:GAINAX

<キャスト>
シロツグ・ラーダット:森本レオ/リイクニ・ノンデライコ:弥生みつき/将軍:内田稔/指導官:飯塚昭三/マナ:村田彩/マティ:曽我部和恭/カロック:平野正人/ドムロット:鈴置洋孝/ダリガン:伊沢弘/チャリチャンミ:戸谷公次/ネッカラウト:安原義人/アナウンサー:徳光和夫

<ストーリー>
シロツグ・ラーダット。彼は戦わない軍隊、「王立宇宙軍」の兵士。この30年の歴史を誇る宇宙軍も政府には見放され、今じゃ人間どころか人工衛星すら満足にあげられない。いつの間にやら、宇宙への夢も遠ざかり訓練もさぼり放題のシロツグ。そんなある日、街で神の教えを説くふしぎな少女リイクニに出会ったことでシロツグの運命は変わってしまった。シロツグは仲間の兵士の反対にもめげず宇宙パイロットに志願してしまったのである。かくして「王立宇宙軍」の威信と名誉挽回の宇宙飛行計画が開始された…。

(C)BANDAI VISUAL/GAINAX