JVCケンウッドでは、同社のD-ILAプロジェクター最新モデルの映像を実際に体験できるイベント、「8K鑑定団」を開催している。同社の新製品4モデルの違いを一度に視聴できる貴重なチャンスであり、StereoSoundONLINE読者諸氏も注目の催しだろう。

 そこで今回は、3月12日に新子安のJVCケンウッド横浜本社ビルで開催された麻倉怜士さんによる「HiViグランプリ 2021ゴールド・アウォード受賞記念イベント」にお邪魔した。

2面の120インチスクリーンを設置し、従来モデルと新製品の直接比較を行った

 会場には「DLA-V90R」「DLA-V80R」「DLA-V70R」が、さらに比較用に既発売モデルの「DLA-V9R」「DLA-V7」も並んでいる。また1月13日にリリースされた「DLA-V50」も準備されていた。

 これらを使って、V90R/V80Rに新搭載された8K/e-shift Xの実力、V70R の8K/e-shiftの効果、さらに3モデルに使われているレーザー光源や、HDR機能搭載による緻密で自然な奥行感/臨場感あふれる映像美を体験してもらおうというものだ。

 麻倉さんから各モデルの特長紹介があった後、それらを使った体験会がスタートした。まずは2面並んだ120インチスクリーンの左側にV7、右側にV50の映像を投写し、4Kネイティブパネルを使ったランプ光源モデル同士の比較が行われた。

 ちなみに再生機器にはパナソニック「DP-UB9000」を使い、マランツのAVセンターのセパレートHDMI出力から2系統に分配して2台のプロジェクターに同時に映像信号を入力している。

 V7とV50の映像では画面全体の輝度、明るさが異なる。ウィル・スミスのSF作品では、ロングショットでのディテイル感、奥行感再現に差があり、V50の方が画面奥を走る列車までの距離も遠く感じる。

JVCケンウッドの担当・西窪英博さん。HiVIグランプリ受賞の楯も展示していただいた

 続いて4K放送のエアチェックコンテンツや、ビコムのUHDブルーレイを使った宮古島の風景でも比較が行われた。なお今回は宮古島と夜景のUHDブルーレイを全モデル共通のリファレンスとして使っている

 麻倉さんは、「宮古島らしい南国の空気感がV50でしっかり出ています。空気がクリアーで澄んでいる。続く海岸の岩の存在感、パースペクティブ、空の青さと雲の階調などもとてもよくわかりますね。同じネイティブ4Kモデルでもここまでの違いが確認できるのは驚きです」と話していた。

 続いて右側のプロジェクターをV70Rに切り替え、V7とV70Rの違いを確認する。価格的にはV70Rの方が1割ほど高くなっているが、V9Rに搭載されていた8K/e-shiftを内臓し、さらにレーザー光源になっていることを考えるとV70Rは割安感もある。

 映像でもその違いが確認でき、夜景や宮古島の砂浜をやどかりが動き回るシーンなど、砂粒の細かさ、微妙な色の違いまでV70Rは描き出している。またレオナルド・ディカプリオ主演作のUHDブルーレイでは、「薄暗い中で寝ている人物の階調感や、冒頭の水面のシーンでの反射や映り込みに違いがありました。今年のVシリーズは光の追従性がよくなっていますが、それが映像にきちんと反映されています」と解説してくれた。

弟機のDLA-V70R(左)と上位機DLA-V80R(右)のシュートアウトも実施

 ここまでは昨年モデルとの比較だったが、次はV7をV80Rに入れ替え、最新兄弟モデルを使ったシュートアウトが行われた。V70RとV80Rは使われているD-ILAパネルやレンズ周りは共通で、V70Rが8K/e-shift搭載機なのに対しV80Rは8K/e-shoft Xを採用している点や、レーザー光源の輝度、コントラスト比などが主な違いとなる。

 夜景のUHDブルーレイでは武蔵小杉や渋谷を上空から捉えたシーンを上映、さらにルーブル美術館の展示品の4K映像も再生している。これらについて麻倉さんは「夕景のタワーマンションや渋谷上空の夜景では、光の再現がどちらも細かく綺麗でしたね。V70Rもまったく不満はないレベルですが、V80Rは光がさらに細かく、色の描き分けも微細になっています。これが8K/e-shift Xの恩恵です」と語っていた。

 ちなみにV70R、V80Rは8K/60p対応のHDMI入力を備えており、パソコンを使って8Kネイティブのデモ映像も再生された。なお接続にはビクターの48Gbps対応HDMIケーブル「VX-UH1150LC」を使っている。

 ブルガリアの風景では、手前で民族衣装を着た人たちが踊り、その奥に山並みが見えている。8Kネイティブ信号らしく、遠景の細部まで明瞭で、かつ精細に再現されている。もちろんe-shift Xでの投写なのでリアル画素とまではいかないはずだが、それでももともとの情報量が掘り起こされ、4Kとも違う細やかさ、精細さが感じられた。

 ここまでV50、V70R、V80Rと価格順に新製品の絵を見てきたわけだが、末弟のV50でも昨年モデルのV7と比べても輝度感、コントラスト感が進歩して、高品質な4K画質が実現できていた。

上がDLA-V90Rで下はDLA-V9R。この2モデルは150インチスクリーンに交互に投写している

 もちろんV50も充分満足できるクォリティだが、そこからV70R、V80Rと見比べていくと、画面全体の輝度感が上がり、光のニュアンスやコントラスト再現が向上し、結果として精密感も上がって感じられる(もちろん8K/e-shiftや8K/e-shift Xの効果もあるが)。視聴回に参加した来場者もその違いを実感していたようだ。

 そして今回のクライマックスは、トップモデルであるV90Rと前世代機V9Rの比較視聴だった。スクリーンを150インチ/シネスコサイズに入れ替え、それぞれの映像を交互に投写して違いを確認してもらおうというものだ。

 宮古島では、画面のパワー感、ピーク輝度の再現などに違いがあり、V9Rは波がちょっとぼやっとするのに対し、V90Rでは躍動感が出てきている。8Kネイティブのブルガリアでも「8K/e-shift Xによる画素の多さが繊細さを演出し、細かなグラデーヨンまで描き出しています。8Kが本来持っている色の芳醇さ、魅力が自然に再現できていると思います」という麻倉さん言葉の通り、V9とV90Rの違いが如実に感じられた。

 また2Kブルーレイや4K UHDブルーレイからの8Kアップコンバートも150インチに相応しい映像として再現され、V90Rの対応力の広さも確認できた次第だ。

 同社では「8K鑑定団」を引き続き以下の日程で開催予定だ。それぞれホームページで参加者を受け付けているので、興味のある方は申し込んでいただきたい。(取材・文:泉 哲也)

イベント終了後には、具体的な設置方法等について質問する熱心な来場者も

「8K鑑定団」 in 北海道 道東オホーツク会場
●解説:小原由夫さん
●日時:2022年3月19日(土)①11:00-13:00 ②14:30-16:30
●会場:ヤマデン ホームシアタールーム 北海道北見市常磐町3-1-26
●定員:各回10名

「8K鑑定団」 in 九州
●解説:麻倉怜士さん
●日時:2022年4月9日(土)①10:30-12:30 ②14:00-16:00
●会場:FFB HALL「8F Dホール」 福岡市博多区博多駅前2-10-19
●定員:各回15名(先着順)

「8K鑑定団」 in 関西
●解説:麻倉怜士さん
●日時:2022年4月16日(土)①10:30-12:30 ②14:00-16:00
●会場:ハートンホテル心斎橋 別館「2F 風」 大阪市中央区西心斎橋1-5-24
●定員:各回15名(先着順)

「8K鑑定団」 in 中国
●解説:麻倉怜士さん
●日時:2022年4月17日(日)第1部 V50/V70R/V80R 13:00〜14:30/第2部 V90R 14:45〜16:00
●会場:オーディオギャラリーAC2本社 2F「Audio Labo.」 岡山市北区尾上733-1
●定員:15名

「8K鑑定団」 in 中部東海
●解説:麻倉怜士さん
●日時:2022年5月14日(土)①10:30-12:30 ②14:00-16:00
●会場:国際デザインセンター「6F セミナールーム2」 名古屋市中区栄3-18-1
●定員:各回15名