カナザワ映画祭と金沢市竪町商店街が発足させた「期待の新人監督スカラシップ」第1回作品に選出された話題の映画『きみは愛せ』の舞台挨拶が1月28日(金)にアップリンク吉祥寺で開催され、葉名恒星監督、主演の海上学彦、細川岳、兎丸愛美が登壇した。

 物語は、リサイクルショップで働く無欲な男・慎一(海上)、スナックで働きながら好きな人を待つ毎日を過ごす慎一の片想い相手・凛(兎丸)、雀荘で働く凛の兄で慎一の同居人の朋希(細川)という若者などが登場する群像劇。この舞台挨拶でも興味深い話を聞くことができた。

葉名 来年30歳になるんですけど、年齢を重ねるにつれて、今までドラマや映画の中からでしか見てこなかった不倫とかが、より当たり前というか、普通に自分の身にも起こりうるものなんだとして考えられるようになってきました。友人の結婚式に参列していると、友人とか親戚にも当たり前のように愛を誓うじゃないですか。そこに対する疑問というか、これはどういうことなのかというものが一つあって、それを元に書き起こしたのがこの作品です。

海上 監督はあてがきをしてくださったそうですけど、(役柄と自分が)「なんか似てるな」とは思いました。思ったことを口にするのが苦手で、自分の中で消化していく部分がある。そこは慎一とリンクしているのかなと思います。僕と監督は、実は大学の先輩・後輩なんです。ただ、そこまで親交があったわけではなかったんですが、映画を撮るときに声をかけていただいて、そのあてがきを見たら、「こんなに俺のことをわかってたの?」と思いました。ちょっと怖い反面、しっかり見る人なんだなと感じました。僕の大学の学科は男性が特に少ないんですよ。で、僕の学年のときは5人だったんですけど、2つ下の彼の学年では彼ひとり。

細川(葉名監督の第1作『愛うつつ』で主演を務めた) 前作のときの監督は、初めての長編だからか、探しながら撮っているような印象があったんですが、今回はそういう感覚ではなくて、撮りたいもの、やりたいことがしっかりある印象がすごく強かったですね。「あてがきした」と1回言われたんですけど、あれはヤバいですよ(笑)。シャンプーの一件で彼女を帰らせるところとか。彼女は確実にいい子なのに。

兎丸 私が演じる凛ちゃんは、愛されることは知ってるけど、愛し方は知らないというような、あまり物事を知らないような女の子なのかなと感じました。でも、最後はちゃんと前に進む。これから強い女性になっていくんだろうなとは思います。

葉名 撮影の前の年、凛(を演じる女優)を探していた頃に、K’s Cinema(新宿)で映画を観たら、主演の兎丸さんがピカッと光っていて、お会いしてみないとわからないとは思ったんですが、映画から兎丸さんが持っている悲愴感というか、なんか闇みたいな部分が武器になる人なんだなと思いました。そういう女優さんは多くないし、でもそういう一面だけではないなというのも伝わってきました。

兎丸 凛というキャラクターについて、3時間ぐらい話しましたね。「うん」って言わないと返してくれない雰囲気でした(笑)。

葉名 僕はまだ2本しか映画が撮れてないんですけども、毎回、映画を通して皆さんとこう対話ができないかなと思いながら、手紙を書くような気持ちで作っています。この作品は僕なりにあまりかっこつけずに、ド直球にいろんなものを込めた作品です。それが皆さんのもとに届いたら、すごく嬉しく思います。

映画『きみは愛せ』

1月28日(金)よりアップリンク吉祥寺、2月12日(土)より金沢・シネモンド ほか 愛知・シネマスコーレほか全国順次公開

【キャスト】
海上学彦 細川岳 兎丸愛美 高野春樹 田中爽一郎 花影香音 白子 川添野愛 宮城大樹 南ユリカ

【スタッフ】
脚本・監督:葉名恒星
企画・製作:一般社団法人映画の会竪町商店街振興組合
制作:HANAOHANACO Co.
配給:映画の会
宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:シネマスコーレ、ミカタ・エンタテインメント
2020/日本/ビスタ/103分
(C)2020「きみは愛せ」製作委員会