劇場版『銀河鉄道999』のドルビーシネマ版の公開を記念して、1月14日に、丸の内ピカデリー ドルビーシネマにて、りんたろう監督と、アニメ評論家・藤津亮太の両名が登壇する「公開記念テイキング・オフ!イベント」が開催された。

 劇場版『銀河鉄道999』は、1979年に劇場公開された長編アニメーションであり、当時大ヒットを飛ばし、その2年後の1981年には、2作目となる『さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-』が製作・公開されている。

 今回、最新技術によって、鮮明な映像と臨場感あふれるサウンドで蘇ったドルビーシネマ版の同作を観たりんたろう監督は、「蘇ったなという感じです」とご満悦の様子。「体感できる作品こそが映画だと思っているので、ドルビーシネマによる臨場感はほんとうにSFには向いていると感じました。今日は(作品を)観るというより、それを体感してほしい」と満席の客席に向かって喜びのコメントを発していた。

 また、公開から43年、こうしてリバイバルを迎えることについて、「はるか遠い昔に、無我夢中で飛び乗った列車で銀河の果てまで旅をして、今こうして地球という惑星に戻ってきました」と、感慨深い表情も見せていた。

 トークでは、MCの藤津より、ドルビーシネマ版になって、りんたろう監督独特の透過光の処理がより鮮やかになったことを受けて、当時のこだわりを聞かれると、「光の処理は、ほんとうにこだわりましたよ。当時はすべて手描きなんですけど、どうしても光を感じないんです。ある時ふと、黒のラシャ紙を使ったらどうかと思いたって、そこで紙に針で穴を開けて、部屋を暗くして、下からライトを当てて、上からのぞいたら、完璧に星の光になったんですよ。フレアもきちんとあって! これだと思いましたね。(透過光処理を使うようになったのは)それが最初でした」と、嬉しそうに当時を思い出していた。

 続けて、「SFですから、とにかく煌びやかで綺麗な映像を作りたいと思っていました。観る人が、列車の客席にいる感覚になれるよう願って描きました」と、当時の想いも話してくれた。

 また、テレビ版との違いについては、「当時、今田社長から“青年から上の層を狙うアニメーションを作りたい”という意図を受けて、原作の松本零士さんとも話して、テレビシリーズとは違った青春ものにしよう、というところから始めて、そこにキャラクターを合わせていったんです」と、その狙いを説明。

 主人公 鉄郎の年齢を原作の10歳から15歳へと成長させたことについては、「テレビの延長線というわけにはいかないので、映画として成り立つ人物にしようと思って変えたんです。まあ、メーテルはそんなに変わらないんだろうけどね(笑)。そして脚本も、少年の旅立ちを意識してまとめてもらいました」。

 当時、監督にとって、「銀河鉄道999」は初の長編アニメーション作。フランス映画のテイストを感じるという藤津の問いかけに、「初めてなので、どう作っていいのか分からないわけですよ。しばらく悩みましたけど、最後はやけくそで、自分のスタイルで作ればいいと思ってコンテを切っていきましたけど、自分の中にあるのは、中学生ぐらいからずっと観てきたフランス映画とかイタリア映画で、もう自分勝手に作ったら、音楽の使い方とか、ネオリアリズム的な見せ方とか、結果としてそういうものが出てきたんでしょうね」と、我が意を得たりというにこやかな表情で、藤津の問いかけに応えていた。

 そして、1月21日からは、2作目もドルビーシネマ版で上映されるが、「1作目は初めての監督作だったこともあり、とにかく全力投球して、終わった時には抜け殻みたいになったんです。達成感もありましたけど、疲れ果ててしまったので、続編はほかの人に任せたいと思っていたんです。そうしたら、プロデューサーの高見さんが必死に食いついてきて。まあ、そんなことがあって、仲間も揃っていたので、じゃあやろうかという話になったんですよ」と、当時のいきさつを話してくれた。

 展開については、「登場人物は変わらないので、切り口を変えよう、ということで松本さんとも話して、戦争ものにしたんです。そして、自分の持っている演出を全面的に出してしまおうということでもう、アニメを作るのではなく、映画を作る感覚でカットを切っていったり、カメラワークをつけていったのが、“さよなら銀河鉄道”の思い出ですね」と当時を述懐。

 やり尽くした? という藤津の問いには、「人間って、追いつめられると結構いい線が出てくるんですよね。やるからには居直ってしまおう。そうしたら、パワーが出てきたんです」と、2作目への取り組み方を説明していた。

 最後に来場したファンへ向けて「最初は、40年も前のものをやる(上映する)の? って思っていましたけど、いろいろな人の努力で、映像も綺麗になったし、音も臨場感あるものに蘇ったなと感じています。43年も前の作品なので、浦島太郎みたいな感覚ですけど、玉手箱を開けてみたらびっくりで、とにかく楽しんでもらえたら幸せです」というコメントを以て、イベントは終了した。

劇場版「銀河鉄道999」ドルビーシネマ版
2022年1月14日(金)より、全国7館で順次公開!

「さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅」ドルビーシネマ版
2022年1月21日(金)より、全国7館で順次公開!

【上映劇場(全国7館)】
丸の内ピカデリー
T・ジョイ横浜
MOVIXさいたま
ミッドランドスクエアシネマ
MOVIX京都
梅田ブルク7
T・ジョイ博多

(C)松本零士・東映アニメーション