毎年、CESの中国・ハイセンスのプレス・カンファレンスは、レーザーテレビが中心だ。「テレビ」といっても、これはプロジェクターである。レーザー光源をDLPチップで変調して近接のスクリーンに下から投写する、業界用語でいうと「超短焦点プロジェクター」。

 それをプロジェクターとは呼ばず、「レーザーテレビ」と呼ぶのがハイセンス流。つまり特別な場合にしか使わないプロジェクターではなく、日常的なテレビとして、使って欲しいというネーミングだ。でもハイセンスは大画面での魅力を訴え、スクリーンサイズは100インチ以上をPRしている。正しくは「レーザーシネマ」が適切な名前だろう。

3色方式の「L9G TriChroma Laser TV」 を発売して以降、売り上げが格段に上がった。アップグレードでDolby Visionに対応する

 毎年のCESでは、技術的な進歩が喧伝される。その方向のひとつが、レーザー数を増やすこと。当初は青レーザーに蛍光体を塗布し、RGBを得ていた。次にBとRのレーザー機を加え、2019年からRGB三原色の3レーザーを搭載(TriChroma Laserと称する)して、格段に色再現帯域を拡大した。

 2020年モデルはBT.2020比90%に、さらに2021年モデルは107%と拡大した。セールスも好調という。2021年は全世界のレーザーテレビの売り上げは2倍以上になった。特に3色方式の L9Gを発売して以降、2021年の秋は前年に比べ300%、伸びているという。

 今年の進化は「8K」だ。今CESでの製品発表はなかったが、8K対応のSoCを発表。8KのミニLED液晶テレビにも使えるもので、8K/120Hzのサポートに加え、2万個のミニLEDバックライトをサポートするとしている。2022年の第1四半期に量産に入る。

世界初を謳う8K/120Hzのエンジン。次世代のレーザーテレビに搭載される

 私がハイセンスのレーザーテレビを見たのは、2020年のCESが最後だが、それ以前のスクリーン上でのローコントラスト、粗い解像感、不自然な色……という困った画質が、かなり改善されたと判断した。それから2年が経過しているので、さらに改善されていると思われるが、問題はコントラスト。

 ハイセンスは解像度や色再現には言及しているが、コントラストについては、アナウンスしていない。DLPはコントラストが弱点なので、その意味で、ハイセンスがどう対処しているのかは見物だ。スクリーン開発も怠ってはならないだろう。

 面白いのは、左右に2台並べて超横長スクリーンに同時に投写するブレンディングプロジェクション。つなぎ目をスムーズ化する技術により、平坦な32:9映像になる。シネスコアスペクトの横長映画をサイドカットで再生するという使い方はあるかもしれない。

左右に2台並べて超横長スクリーンに投写するブレンディングプロジェクション

※写真はすべてハイセンスのプレス・カンファレンスから。