パナソニックから、4Kディーガのプレイアムモデル「DMR-ZR1」が発表された。市場想定価格36万円前後(税込)で、2022年1月28日の発売を予定している。

 パナソニックでは、最高の画質・音質を追求したディーガ・プレミアムモデルをラインナップしてきた。初のUHDブルーレイ再生対応機「DMR-UBZ1」(2015年発売)や、UHDブルーレイプレーヤーの「DP-UB9000」(2018年)などがそれにあたる。今回の新製品はその流れを受け継いだ、“究極の4K録画再生機”として開発されている。

新製品の「DMR-ZR1」

 基本スペックは、4Kチューナーを3基搭載し、4K放送を含めた3番組同時録画が可能。内蔵HDDは6Tバイトで、4K/DRモードで約390時間の録画ができる。録画モードも新たに4Kの1.3倍が追加された。このモードを使うと25GバイトのBDメディアに約2時間が収まるので、映画の保存にぴったりだという。

 ディーガ21年秋モデルから搭載された、90日間「お録りおき」機能も搭載、設定した時間帯に放送されるドラマやアニメを自動で録画・保存してくれる。録画タイトル数も最大10,000まで増えているので、6TバイトHDDに思いきり保存しても心配ない。さらに、4K/2Kとも1.3倍と1.6倍の音声付き早見再生が楽しめるようになった。

 UHDブルーレイ関連では、ディーガのレコーダーとして初めてドルビービジョンの再生に対応した他、HDR10/HDR10+/HLGも出力できる。さらに4K/HDRのインターネット動画配信サービスも楽しめる(YouTubeは非対応)。

 さてDMR-ZR1は先述のように“究極の4K録画再生機”として設計された。そのためには再生専用機のDP-UB9000を超えることが不可欠だと開発陣は考えたという。そこでまず電源、電気回路、筐体の抜本的な見直しから着手している。

内部コンストラクション。写真中央にはドライブメカとHDDが、その左側には電源回路が配置されている。その電源基板は左側がデジタル専用、右側がドライブ専用に分けられている

 シャーシ自体はDP-UB9000を継承しており、7mm厚のアルミフロントパネルや4層構造のベースシャーシを採用。内部は4ブロック独立構成となっている。本体サイズはDP-UB9000と同一で、フロントパネルも再生用のボタン等がなくなっているくらいの違いしかない。

 DP-UB9000とDMR-ZR1の最大の違いは出力端子で、DMR-ZR1ではアナログ出力をなくし、HDMIとデジタル音声出力(同軸、光)に限定している。こうすることでアナログ出力用の電源や基板のスペースを活用、デジタル回路やドライブ系に資産を集中投下して品質向上を狙ったわけだ。

 担当者によると、デジタル的なアプローチはDP-UB9000で完成しており、それを超えるためにはアナログ的な切り口が必要だと考えたという。電源や電気回路、筐体を見直すことで、全体的なレベルアップを果たそうという狙いだ。

 DMR−ZR1の電源基板ではデジタル回路用と光ディスク/HDDドライブ用の電源が分けられており、これによってそれぞれに最適、かつ強力な電源回路を組むことができている。ちなみに、開発時にDP-UB9000をベースに電源回路を分けたセットを試作したところ、音質にも余裕が出てきたそうだ。さらに映像でも改善効果が確認できたので、DMR-ZR1に採用している。

ドライブメカの右側にはデジタル基板が配置され、その手前(フロントパネル側)にはUSB端子も設けられている。写真の赤く見えるパーツがUSBパワーコンディショナーだ

 デジタル回路で重要なクロックにも配慮しており、システム用には超低位相ノイズ水晶発振器を採用した。このチップは軍事転用も可能な性能を持っているそうで、DP-UB9000から約15dBの改善が達成できている。AV用としては、超低ジッターPLLとローカルレギュレーター、チップフィルムコンデンサーを採用するなど、徹底した低クロックジッター設計がとられている。

 またDP-UB9000で使われていたUSBパワーコンディショナー(ルビーマイカコンデンサーと炭素皮膜抵抗で構成)を、フロントとリアのUSB端子にそれぞれ1個、さらにセパレートHDMI出力端子にも各1個の合計4個を内蔵している。これによりノイズ抑制効果が向上し、回路全体のS/Nも改善できるとのことだ。

 HDMI端子については、ノイズ対策も大きく進化した。DP-UB9000では2系統のHDMI出力に対し、電源高周波ノイズ低減用のチップビーズを1基あてがっていたが、DMR-ZR1では映像/音声用に2個、音声用に1個の合計3個がおごられている。またそれぞれの出力端子の近くにチップフィルムコンデンサーを追加している。この回路構成により、映像/音声用HDMI端子から音声用HDMI端子に回り込むノイズが低減できるという。音決めに際しては、ノイズが落ちすぎておとなしい音にならないように注意し、力感とS/Nの両立を目指したそうだ。

DMR-ZR1の背面端子。左からアンテナ端子、セパレート型HDMI出力、USB、LAN、光/同軸デジタル音声出力が並ぶ。本文にある通り、アナログ音声端子は非搭載だ

 LAN端子にも同様に低ノイズ電源や超低ジッタークロック水晶発振器を追加し、ジッターの低減を実現。さらに同軸デジタル端子にも専用出力トランスを追加、シャーシのグラウンドから分離することで純度の高いデジタル信号の出力が可能になっている。これはテクニクス「SU-R1」と同等の出力回路で、外部DACと組み合わせた際の音質改善が期待できるそうだ。なお同軸端子からは最大192kHz/24ビット/2chのリニアPCMまで出力可能という

 DMR-ZR1はレコーダーなので、録画用のHDDドライブが不可欠だ。容量は先述の通り6Tバイトで、AV機器用に最適化したアクセス制御を導入、パナソニック独自の厳しい出荷条件をクリアーしたデバイスを使っている。複数メーカーの中から、低回転タイプで振動も少なく、音質的にいいものを厳選したという。

 そのHDDドライブは3.2mmと0.8mmの剛板を貼り合わせた専用ベースにマウントされる。これまでは振動を吸収するためにHDDドライブとベースの間にゴムを挟んでいたが、DMR-ZR1ではそれを撤廃。重量物同士を強固に組み合わせることで振動自体を抑え込んでいるそうだ。

録画用の6TバイトHDDドライブは、厚4mmの頑丈なシャーシにマウントされている

 電源やシャーシなどのアナログ周りをここまでしっかり対策し、その上で独自のデジタル信号処理を組み合わせた点もDMR-ZR1の特長といえる。

 映像信号では、映画やドラマをオリジナルのフレーム数にもどして出力する点にこだわった。4K放送ではコンテンツの種類に関わらず4K/60pでオンエアされるが、その内容を解析し、映画なら24p、ドラマも30p製作のものは30pに変換してHDMIから出力できる。なおこの機能は、1080/60iで放送されているハイビジョン番組を再生する場合にも有効だという。

 こうすることで独自のクロマアップサンプリング性能を活かした信号(4K/24p/4:4:4など)が出力されるし、組み合わせるディスプレイ次第でさらなる高画質化も期待できるわけだ。動画配信サービスについてはコンテンツプロバイダー次第だが、Amazon Prime Video等では4K/24p出力も可能という。

 映画ファン待望の機能として、放送録画での字幕輝度低減ができるようになった。HDR(HLG)放送の開始に伴い、映画字幕が眩しく感じられることも増えている。しかし放送の字幕は映像に焼き込まれているため、これまではどうにもできなかった。

BDドライブメカはDP-UB9000から細部をチューンナップ。トレイを閉じた状態では回転音もほとんど気にならないはずだ

 DMR-ZR1では、独自処理で映像の中の字幕を検出し、字幕部分のみ明るさを抑えている。この機能はメニューから「切/弱/強」の3段階が選択でき、字幕の明るさは映像によって自動調整されるという。

 「弱」を選ぶと画面内で一番明るい部分と同等の輝度で、「強」ではそれよりももう少し明るさを抑えている。こうすることで画面の明るさに応じた字幕が再現され、観ている側も違和感を覚えることがないはずだ。なお字幕は画面下側に表示されるものを対象にしており、状況説明等で使われる縦字幕はこの機能の対象外となる。

 マニア向けとして「ダイナミックレンジ/システムガンマ」連動調整モードも搭載された。これまでDP-UB9000等では、「ダイナミックレンジ」と「システムガンマ」をそれぞれ独立して調整することで、画面全体の明るさや暗部階調再現を追い込んでいた。

 だがその案配をどうするかは難しかったのも事実。今回の改善では、連動機能をオンにすることで、ダイナミックレンジだけ調整すれば、システムガンマについてはエンジニアの推奨値に自動的に設定されるようになっている。

「ダイナミックレンジ/システムガンマ」連動調整モードの動作イメージ。ダイナミックレンジを調整するだけで、システムガンマが画質設計者のお薦め値に設定されるので、とても使い勝手がいい

 音声関連のトピックとして、NHKが採用している22.2chサラウンド音声を、ドルビーアトモスとして楽しめるようになった。これはパナソニックとドルビーの協業で実現したもので、22.2chのAAC信号をDMR-ZR1でデコード、独自処理で22.2chのリニアPCM/ドルビーアトモス音声としてHDMIから出力する仕組みだ。

 その際には「Dolby MAT」と呼ばれる方式を使っているようだ。これはリニアPCM信号とメタデータを組み合わせて、チャンネルベースのドルビーアトモスとして送る方式となる。ドルビーアトモス対応AVセンターなら必ずDolby MATに対応しているので、DMR-ZR1とAVセンターの組み合わせで22.2chの情報を持ったアトモスサラウンドが楽しめることになる。

 ちなみに4Kディーガでは初代機の「DMR-SUZ2060(SCZ2060)」からDMR-ZR1までの全機種で、4K/DRモードで録画している場合は22.2chの音声信号をそのまま記録する仕様になっているそうだ。これはBDディスクにダビングしても保存されるので、今までの放送をDRモードでコレクションしている方にとっては嬉しい提案になるだろう。

NHK BS4Kの22.2ch番組をドルビーアトモスとして再生できる。スピーカーマッピングなどはAVセンター側で行うので、お使いのシステム構成に最適化した状態で楽しめることになる

 その他にも、再生コンテンツの詳細情報表示の内容がより詳しくなり、かつ配信コンテンツでもある程度の内容が分かるように進化した。その際にはリモコンの「i」ボタン(画面表示)を使うが、このリモコン自体も自照式バックライトが搭載され、またボタン配置を見直すなど、ホームシアターでも使いやすいように配慮されている。

 もうひとつ、ハイレゾ音源の再生にも対応しており、対応DACやAVセンターとの組み合わせで高音質を楽しむこともできる。出力できるフォーマットはWAV、FLAC、DSD、ALAC、AIFFで、ロッシーであればMP3、AAC、WMAにも対応済み。DSDは最大11.2MHz、WAVとAIFFでは384kHz/32ビットのファイルまで扱える。

 今回、DMR-ZR1試作機のデモを体験させてもらった。65インチの有機ELテレビに映し出された映像は、ひじょうに繊細でディテイル情報に溢れたもの。画面全体がクリアーで、細かい部分まで色がしっかり乗っている。光が当たった縁側の床の艶、木目の表情までとてもリアルだ。

 これは4K放送の録画ディスクの印象だったが、市販のブルーレイでも同様で、車のボンネットの輝き、レストランのシャンデリアのきらびやかさ、軍服の素材感など手で触れられそうな錯覚を覚えるほどだ。

左がDMR-ZR1で、右がプレーヤーの「DP-UB9000」。本体サイズはどちらも同じだが、重さはDP-UB9000の12.5kgから13.6kgに増えている

 DP-UB9000でも同じディスクを再生してもらったが、こちらも基本的な傾向は同じで、ひじょうにクォリティが高い。さすがプレミアムモデルという安定感のある映像だ。

 DMR-ZR1とDP-UB9000の絵を比べてみると、ここが違うといった決定的な差異は感じられない。だが、DMR-ZR1の映像はいっそう鮮明でS/Nがよく、光のニュアンスまで描写されている。特定の部分ではなく、画面全体としての再現力、見え方が違うとでもいったらいいだろうか。

 実はDMR-ZR1とDP-UB9000では映像処理回路等は大きく変わっていないそうだ。つまり、ベースとなるアナログ周りを徹底して追い込んだことで、元の信号に含まれる情報が現れたということだろう。

 別の機会に22.2chからドルビーアトモスへの変換も少しだけ体験させてもらったが、こちらも驚きのパフォーマンスが楽しめた。もちろん元々の22.2chの音作りによって効果に差はあったが、きちんと作り込まれた番組なら、充分な包囲感と迫力を体験できるはずだ。DMR-ZR1は、音の面でもホームシアターの新しい楽しみを提案する製品として、注目を集めるだろう。