笠木望監督と武田梨奈がタッグを組んで送るノワールムービー『吾輩は猫である!』が、12月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中だ。一匹の猫を巡って、4人の男女の運命が交錯するという、ある意味群像劇的な展開も楽しめる一作。今春には、POV(主観映像)版が先行配信されており、ようやくその全貌が明らかになる。

 ここでは、主役・美那を演じた武田梨奈にインタビュー。役作りやアクション、POV撮影の感想などについて話を聞いた。

――『吾輩は猫である!』がいよいよ本日(12月3日)より上映となりました。まずは、公開を迎えた心境をお聞かせください。
 ありがとうございます。いつもは公開前にスクリーンで見せていただくんですけど、今回はまだ見られていないので、ちょっとドキドキしています。

 春先にauプレミアムで配信した時から、映画化できたらいいねというお話はしていたので、無事に公開ができてよかったし、うれしいです。

――今回はアクションもあり、POV撮影もあり、たいへんだったのでは?
 本当にたいへんでした。今回は撮影部のカメラマンさんのほかに、私と津田さん、黒田さん、そして猫というように4台の視点カメラを回していました。配信版では、私はカメラマンに専念していたので、ほぼ顔が映っていないんです(笑)。アクションシーンでは、カメラを額だけではなく、口でくわえたりもしたので、撮影に関しては、今までで一番って言えるぐらいたいへんでした。

――カメラを付けた状態でのアクションもあったわけですし。
 そうなんです。アクションを、自分がやって綺麗に見せるのではなくて、綺麗に写すことが必要でしたので、視線やパンチの出し方ひとつにも、注意しながらやっていたんです。普通、パンチはなるべくコンパクトにするんですけど、あえて外側へ大きく振り回すようにするとか、目線(視線)も相手の大きさをより出すためになるべく上を見るようにしていました。そういう意識を持ちながらのアクションは、かなり難しかったです。

 しかも、アクションですから激しく動いているんですけど、テスト映像を見たら、カメラ酔いしそうになるし、何をしているのかが分かりにくくなっていたので、本番では、アクションの躍動感を出しながらも、極力(画面が)揺れないようにしていました。なので、とにかく首と肩が凝りました。(カメラをくわえていたので)顎も痛かったです。

――本作では、久々にアクションも全開でした。
 自分の中では、全然全開とは思っていないんですよ。というのも、演じたのが記憶喪失の女の子でしたから、自分が格闘家であるという意識のない状態で物語が始まるので、なんで体が動くんだろうという不思議な気持ちを持ちつつ戦う、という感じでしたから、格闘家としての全開を出す、というものではなかったんです。

 ただ、自然と構えができたりするので、段々と体の感覚が蘇ってくるという仕草や動きを見せながらのアクションでしたから、その調整具合は難しかったです。

――中盤、アンナ(芋生悠)と一緒に戦うところでは、あっ戻ってきたという表情も見られました。
 ちょっとずつ感覚が戻るといいますか、こぶしの握り方が分かる! みたいな感じでした。

――記憶喪失という役作りはいかがでしたか?
 徐々に記憶を取り戻していく、(格闘家としての)感覚が戻ってくるという役でしたので、どういうことをして、どの瞬間に蘇ってくるのかということを大事にしながら演じるようにしました。笠木監督とは『いざなぎ暮れた。』でご一緒しましたが、その時は長回しも多かったので、感情を乗せやすかったのですけど、今回はカット割りも多く、セリフもほとんどなかったので、いろいろ考えることは多かったです。

 お芝居としては、自分から何かをすることも、感情を出すこともなく、本当に無に近い状態で、なぜ今ここにいるのか、この人たちが誰なのか、そもそも自分は何者なのか、という気持ち(心情)を引っ張り出すことを意識していました。ほぼ、受けの芝居ですね。

――ところどころ本当に戸惑っているようにも見えました。
 はい、実際に戸惑っていました。周囲の男性陣が結構激しいお芝居をするので、えっ何この人たち? と戸惑いつつも、実は見ていて面白かったです。

――今回は、芋生悠さんとの初共演も果たしました。
 共演する前にお会いしたこともあったし、共通の知り合いもいたりして、気になっている存在でしたので、今回がっつりバディ的な関係でやらせてもらえて、すごくうれしかったです。

 彼女の演じたアンナは、気が強くて、思ったことをストレートにぶつけてくるタイプの女性ですけど、芋生さん自身は正反対で、すごく素直で、周囲に気を遣える子でしたから、お姉さんみたいな感覚になって、かわいいーと思い、より好きなりました。彼女が先に撮影が終わった時など、私が(撮影が終わって)楽屋に戻ると、シップが置いてあるんです。なんて優しい子なんだって思いましたね。

――芋生さんも、武田さんを好きですとおっしゃっていました。
 うれしい、両思いですね。ちょっと照れちゃいます。

――現場では、武田さんにたくさん助けられたとも話していました。
 いえいえ、そんなことないです。私も支えてもらいました。事前のアクション稽古の時も、攻めた稽古をしていましたし、向上心もあって、難しいことにも前向きに一所懸命に取り組んでいました。やはり、空手をされていたからこその芯というか精神面での強さがあるのかなと感じました。

 今回は、あまり会話のないお芝居だったので、次はぜひ、会話のたくさんある、普通のお芝居で共演してみたいです。

――ネタバレにならない範囲でお聞きしますが、二人きりのシーンは新鮮でした。
 結構二人きりのシーンも多くありましたけど、私(美那)は記憶を失っているので、この人は誰だろうと思いながらも、アンナ(芋生)の言葉に頷いたり、目で反応したりはするんですよね。ただ、言葉は返さないので、お芝居がちぐはぐにならないかは心配していましたけど、撮影の合間にコミュニケーションをたくさんとることできたので、打合せをしなくても、すっと(二人の関係に)入れた感じはありました。

 中でも、ペンダントのシーンは美那の中で何かが変わる瞬間で、記憶を失っているので、何が本当なのか分からないけれども、何かを確信したし、(自分がしたことに対する)罪悪感が生まれた瞬間だったのかなと感じています。

――ところで、武田さんの中で印象に残っているシーンは?
 一番好きなのが、冒頭、車の中で、芋生(アンナ)さんと久保田康祐さんが口喧嘩するところです。芋生さんが頭をはたくしぐさはアドリブだったんですけど、久保田さんのリアクションも面白くて、すごく楽しくなってしまって(笑)、私も混じりたいって思いました。ちょっぴり『いざなぎ暮れた。』を思い出しましたね。監督はそういうのが好きなのかもしれません。

――ちなみに武田さんは猫派ですね。
 猫と犬を飼っているので、どちらも大好きです! 現場では、空き時間ができると芋生さんと一緒に猫の楽屋に行って、ずっと遊んでいました。

――猫のどこがいいのでしょう?
 気ままで自由なところですね。もともと犬を飼っていて、家に帰ると尻尾を振って(玄関で)待っていてくれるのもよかったんですけど、猫ってそんな仕草をしないんですよ。こっちがわしゃわしゃすると嫌がるくせに、何もしていない時には甘えてくるんです。そのじれったい感じがまたかわいいんですよね。すっかり猫にもはまっちゃいました。

――では最後に、2022年の抱負をお願いします。
 たくさんありますが、一番はがっつりとアクションのある作品をやりたいです。コロナ禍で作品に影響もあったりしますが、頑張ります!

映画『吾輩は猫である!』

2021年12月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中

<キャスト>
武田梨奈、芋生悠、津田寛治、松林慎司、大塩ゴウ、バンダリ亜砂也、CODY、白善哲、森本のぶ、篠田諒、久保田康祐、大迫茂生、真辺照太、望月卓哉、片山享、藤田瞳子、泉ひかり、斉藤波音、MochiBlanc、オフィスワイルド・スタントチーム

<スタッフ>
撮影監督:原俊介 アクション総指揮:柴原孝典 録音:田中秀樹 ヘアメイク:香理 衣装:村上由衣 キャットコーディネーター:野澤くるみ 助監督:東畑渉 ラインプロデューサー:矢加部英達 プロデューサー:カタオカセブン、玉澤成浩 脚本・監督:笠木望 協力:株式会社オフィスワイルド 製作:「吾輩は猫である!」製作委員会
(C)2021「吾輩は猫である!」製作委員会

<STORY>
借金のカタにとられた1匹の白猫。その猫が原因で4人の男女の運命が複雑に絡み合い物語が展開していく。対戦相手を半殺しにして留置場に入れられた女格闘家・美那(ミナ)。出所してきた彼女を待っていたライバルのアンナは美那が記憶喪失に陥っていることに気づくが、美那はすぐさま地下格闘技大会に出場させられることに。闇の仕事にアルバイトに来た男・行方(ナメカタ)。彼はひょんなことから白猫を巡る逃亡劇に巻き込まれてゆく。友達がいないスケボー少女すず。愛する白猫が奪われた彼女は、スケボーとパルクールを駆使して組織に忍び込む。息をつかせぬスリル、キレのある伏線と回収、少し前までは普通だった4人と1匹の織りなすドラマが新鮮なカタルシスへ結実する。

武田梨奈

●ヘアメイク:上地久美
●スタイリスト:松野仁美
●衣装クレジット:ベスト:リュウカガ(¥52,800 税込)
         ワンピース: リュウカガ(¥47,300 税込)
         ブレスレット:アルティーダ ウード(¥14,300 税込)
         ほか スタイリスト私物