マックトンというと、OTLアンプや大型ビーム管を搭載した大規模な構成のパワーアンプで知られている。本機はその究極というか、300Bパラレルプッシュプルのステレオアンプである。それで300B(EH=エレクトロ・ハーモニックス製)が計8本、林立しているわけだ。直流点灯されるフィラメントの消費電力だけで48W相当だから結構な発熱量となる。それでもA級動作なので出力は30W。直熱3極出力管の大スターたる300Bへの敬意がうかがえる。

 初段はECC82(12AU7)のパラレル接続。2段目は12BH7のカソード結合型位相反転。全段コンデンサー結合であり、また全段固定バイアスというのが特徴だ。ユニークなのがレベル調整で、初段と2段目の間に置かれているが、出力端子から初段にNFBが掛かっているのでNFBループ内なのである。つまり、絞るほど裸ゲインが下がりNFB量も下がるはずだ。試してみると、中央以下に絞るとエッジ感がゆるんでムーディなトーンになる。ちょっとした音質調整として使えそうだ。

 マックトンらしい悠々たる鳴りっぷりに、透明感としなやかさが加わった印象。中域は、なで肩風にさらりと描写して、音量を上げても澱みがない。ジャズもクラシックも旋律美をていねいに描き、あからさまな鮮度感は強調しない。この傾向はまさに、マックトン版の300Bパラレルプッシュプルらしい音といえる。

Power Amplifier
マックトン MG300
¥1,200,000(税別)

●定格出力:30W+30W●入力端子:LINE1系統●入力感度:1.2V●スピーカー出力端子:3Ω〜16Ω●使用真空管:12AU7×2(JJまたはEH)、12BH7(EH)×2、300B(EH)×8●寸法/重量:W465×H215×D380mm/25kg ●問合せ先:(株)マックトンTEL. 03(3394)0131


チャンネル当たり4本の300Bを使うパラレルプッシュプル構成。前段は手前中央の12AU7と12BH7で構成。シールド板越しに電源トランスとコンデンサーが見える。左右独立のゲインコントロールも装備。

カバーを外して背面を見る。中央に電源トランス、左右に出力トランスを配置。スピーカー出力は負荷インピーダンス3Ωから16Ωに対応する。

底板を開けた内部。基板を使わない手配線で、パーツ類は左右対称に配置されている。


MG300の使用真空管を確認する吉田氏。

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