テレビだけでなく、パソコン/スマホ/タブレットでも気軽に楽しめるのがネット動画の魅力。リビングのテレビで観ていたドラマの続きを通勤途中にスマホで観たり、家族が寝静まったあとに自室のパソコンで観たり、場所を選ばずコンテンツを楽しむことができる。その際に問題となるのが音質だ。最近はBluetooth接続によるワイヤレスヘッドホン/イヤホンが普及していて、それはそれでとても便利なのだが、音質的に物足りないと感じる方も少なくないだろう。

 そんなクォリティ志向の方におすすめしたいのがアステル&ケルンのUSB DAC/ヘッドホンアンプ、PEE51 AK USB-C Dual DAC Amplifier Cable(以下、PEE51)である。

 

USB D/A CONVERTER / HEADPHONE AMP.

PEE51 AK USB-C
Dual DAC Amplifier Cable
¥14,980 税込

● 型式:USBタイプC接続専用D/Aコンバーター+ヘッドホンアンプ
● 接続端子:USB タイプC1系統(Windows 10/Mac OS/Androidスマートホン&タブレット/iOSタブレット)、3.5mmヘッドホン端子1系統
● 対応サンプリング周波数/量子化ビット数:PCM・最大384kHz/32ビット、DSD・最大11.2MHz/1ビット(ネイティブ)
● 寸法/質量:USBプラグ部・約12×20×8.2mm/約25g、本体・約17×50×10.3mm 
● 問合せ先:アステル アンド ケルン ☎ 0570-002-220

USBタイプC端子に直結できる超小型DAC兼ヘッドホンアンプ。小型サイズからは考えられない本格的なサウンドが得られるのが唯一無二の魅力だ

 

 

 写真をご覧いただければわかるように、USB DACといってもPEE51はきわめてコンパクト。USBタイプC端子を備えるパソコン/スマホ/タブレットに片方を接続して、もう片方にステレオミニ端子のヘッドホンやイヤホンを接続するだけで、かんたんにワイヤレスヘッドホン/イヤホンよりもワンランク上の音質を目指すことができる。

 まず最初に、Windows OSのパソコンのステレオミニ端子に直接ヘッドホンのケーブルを挿し、Amazon Prime Videoから『ジョーカー』のオープニングシーンを再生してみた。ヘッドホンはウルトラゾーンのSignature STUDIOで、その名の通りスタジオでのモニター用途を想定したモデルだけに、街を行き交う人々の会話やクルマの走行音を、脚色のない音で聴かせてくれる。仕事用の看板を少年たちに奪われ、クルマに接触しながらも必死で追いかける主人公の息遣いや走る足音には生々しさがあるし、少年たちに暴行され、路地に倒れ込む主人公の背景でかかる劇伴の低域の豊かさも充分と言っていいレベルだ。

 しかし同じシーンをPEE51を加えた状態で再生してみると、さらに薄皮を一枚はがしたようなクリアーな音世界がパッと開ける。静かな場面と騒がしい場面のコントラストがより明確になり、それによってひとつひとつの音の存在感がグッと高まっている。街の喧騒が、路地をひとつ入ることで一気に静まる様子もよく再現されているし、少年たちの残酷さや主人公の置かれた悲惨な状況がより近くに感じられる。劇伴に使われているエレクトリック・チェロの低音にも深みが増し、作品に通底する不穏さがむき出しになって迫ってくるような印象が得られた。

 もちろんネット動画だけでなく、音楽ストリーミングサービスを聴いてもその効果は明らかだ。iPad ProのUSBタイプC端子にPEE51を接続し、ステンレススチールの本体を持つアコースチューンのイヤホンHS1677SSを組み合わせて聴いてみると、普段使っているiPad ProとAirPods Proの組合わせよりも明らかに鮮度が高い。YOASOBIの「大正浪漫」をApple Musicでロスレス再生したのだが、明瞭なヴォーカルのバックでシンセサイザーのフレーズが小気味よく弾む。そのいっぽうで井筒香奈江「雨の鼓動」のような静謐なバラード曲では、ピアノの響きがまるで水面に広がる波紋のようにスムーズで、パーカッションの朴訥とした演奏も身近に感じられる。

 

パソコンのみならず、USBタイプC端子を備えたスマホやタブレットが増えている。iPad Proもそのひとつ。PEE51は、オフィシャルにはiOS端末をサポートしていないが、実機で試したところ問題なく使えた

※ヘッドホンは、ULTRASONE Signature STUDIO(実勢価格6万6,000円前後)、
イヤホンはAcoustune HS1677SS(¥82,980 税込)を用いた。
いずれも問合せ先:アユート

 

 とても小さなUSB DAC/ヘッドホンアンプだが、その効果はとても大きい。映画も音楽も自由に持ち歩けるようになったストリーミング時代だからこそ、PEE51のような「プラスワンアイテム」を活用して、より深くコンテンツを味わってみてはいかがだろうか。