デノンから、イマーシブオーディオに対応したAVセンターのエントリーモデル「AVR-X1700H」が登場、定価¥77,000(予価、税込)で11月下旬に発売される。

 同社では現在7モデルのAVセンターをラインナップしている、今回のAVR-X1700Hはこのうち、価格的には下から2番目の「AVR-X1600H」の後継機で、7.2ch仕様のモデルとなる。

 デノンによると、同社製AVセンターのユーザーはマルチチャンネル再生用に使っている比率が高く、85%以上の方が4ch以上のスピーカーをつないでいるという。X1700Hはさらにそういった層を広げ、“最高の技術で最高のマルチチャンネル体験” をしてもらうための製品と位置づけられている。

k まず同社AVセンターらしく、サラウンドに求められるスペックにはいち早く対応した。目指したのは “最強のエントリーAVセンター” であり、4K8K/HDCP2.3に対応したHDMI入力端子を3系統、出力1系統を装備した(HDMIは入力6系統あり)。8K/60pや4K/120pの映像を受け付け可能で、2Kや4K信号からの8Kアップスケーリング機能も搭載する。

 HDR信号ではHDR10、HLG、ドルビービジョンに加えてHDR10+やDynamic HDRにも対応。昨今のゲーム需要を受け、VRR、QFT、QMSといった信号にも対応済み。イマーシブオーディオのドルビーアトモス、DTS:Xはもちろん、4K8K放送で使われているAAC 5.1chのビットストリーム信号もデコードできる。

AVR-X1700Hのリアパネル。写真右側、HDMI入力4〜6が8K対応となる

 さらに今回から、音質チューニングを同社サウンドマネージャーの山内慎一氏が担当、「Vivid &Spacious」というデノンサウンドをさらに進化させている。これは同社ハイファイモデルと共通のサウンドポリシーで、サラウンドとしてはより鮮明でシャープな躍動感と透明度の高い音場再生を目指すという。

 そのために、使われている部品にも大幅に変更が加えられた。X1700Hではパワートランジスターをパーツメーカーと共同開発、さらに内部パターニングも改良し、信号ラインの出力インピーダンスを可能な限り低減している。この結果、フォーカス感や分解能が向上したという。

 他にもワイアリングやビスの選定等にも時間と手間をかけ、緩衝材やコンデンサーの耐圧・容量の変更など、70点以上に及ぶ製品に適したチューニングを行っている。なおこの数値はX1700Hのプロトタイプからのもので、前モデルのAVR-X1600Hと比べるとさらに変更点は多いという。

 ボリュウムについても、デノンカスタム仕様の電子ボリュウムを搭載。一般的な電子ボリュウムICでは音量調整機能とセレクターが一体化されているが、今回はそれらの機能を分け、別々のICを使うことで信号の流れをシンプルにし、同時に不要なバッファ回路を削除している。結果としてストレートなサウンドが獲得できるという。

 D/Aコンバーターまわりでは、DACの出力段により高性能なオペアンプを追加、ドライブ能力を高めた。なおDACチップはX1600Hでは8ch仕様を1基使っていたが、X1700Hではここも変更され、2ch用DACチップを4基搭載した。これまでハイファイモデルで使っていた馴染みのあるブランドのチップで、音質面でも信頼のある製品だという。

デノンの試聴室で、B&Wのスピーカーシステムと組み合わせた音を体験した

 AVR-X1700Hの説明会で、試作モデルの音を聴くことができた。同社視聴室にセットされた試作機はX1600Hとほとんどみわけが付かない。外観はそれくらい変更されていない。この状態で、SACD/CDプレーヤー「DCD-SX1 LIMITED」のアナログ出力をつないでCDを聴かせてもらう。スピーカーはB&Wの「802D3」。

 女性ヴォーカルは、シャープな音像がセンターに定位し、声の再現がとてもなまなましい。実体感を伴ってそこで歌っているようなイメージが創出される。映画音楽のコンサート(2ch再生)でも、ホールの響きを伴った自然で豊かな空間が再現され、場の空気をしっかり感じ取ることができた。

 映画のサラウンド再生(ドルビーアトモス)では、レースシーンの迫力、盛り上がる観客席の歓声、一方でドライバーたちの緊迫したやりとりなど、細かな音情報が作品への求心力、没入感を高めている。

 山内氏によると、X1700Hは組み合わせるスピーカーを選ばない点も魅力で(今回も802D3を充分ドライブしていた)、その意味ではエントリーユーザーからサラウンドにこだわる層まで幅広く使いこなせる製品になっているといえるだろう。

 7万円台のAVセンターとして、ホームシアターの楽しみを大きく広げてくれるのは間違いない。