新製品が続々と発表される季節となったが、注目すべきはディスプレイやスピーカーだけではない。ここでは、AVシステムを間違いなくワンランクアップさせる、“プラスワン”アイテムを紹介したい。(編集部)

 オーディオ界広しといえど、30cmLPレコードと12cm光ディスクの洗浄を1台でやってのけるクリーナーを私は知らない。キース・モンクスのPRODIGY RECORD CLEANING MACHINE(以下、プロディジー)は、そんな希有なクリーナーだ。

 

KEITH MONKS
DISC CLEANER
PRODIGY RECORD CLEANING MACHINE

¥195,800(税込)
● 寸法/質量:W550×H140×D220mm/5kg
● 備考:discOvery33/45 250ml(LP50枚分)、Eco Roller洗浄ブラシ、ラバークランプ、シングル盤アダプター、照明調整用リモコン付属
● 別売オプション:デジタルディスク洗浄液 discOvery Digital 500ml(¥6,600税込)
● 問合せ先:(株)タクトシュトック
 ☎ 03(5848)2239

 

 

 おそらく本機に関心を抱く人の大半は、熱心なアナログファンに違いない。しかし、今回の取材・テストの主旨は、12cm光ディスク。すなわちCDやBD、UHDブルーレイである。これらポリカーボネート製ディスクをそもそも濡らしても大丈夫なのかと訝しがる声も聞こえてきそうだが、結論からいえば無問題。むしろその高い効能からして、12cmディスクにも積極的に使いましょうと言いたくなる有り難みなのである。ここではその手順と効果のインプレッションを報告しよう。

 始めにキース・モンクスというメーカーをザッとご紹介。69年にBBCと共にレコードクリーナーを開発し、今日までに大英図書館や米国議会図書館に正式採用され続けているという。日本でも大手中古レコード・チェーン等に多数の納入実績があり、高い信頼を得ている。

 ここで採り上げたプロディジーは、大きくて重たい既成の業務用機の機能をコンパクトにまとめた民生用機。とはいえ同社の特徴であるアーム式の吸引ノズルは継承。クリーニング後の廃液をレコードの音溝に沿って吸い上げていく、唯一無二の独自機構である。

 同社の現在の経営は、創業者の息子ジョナサン・モンクに引き継がれており、糸を利用した従来のバキューム機構に改良を施し、クリーニング液を流体クッションとして使用し、バキューム力を上げて処理時間を大幅短縮したメソッドを新たに開発。それをもっと手軽に使えるようにと、3年の期間を擁して開発されたのが、このプロディジーである。

 購入時に添付されるクリーニング液は、レコード専用タイプ。12cmディスクを洗浄するには、まずは専用液「discOvery Digital」を別途購入する必要がある。

 ラバークランプで光ディスクを(裏面側が上になるよう)固定し、スイッチを入れて回転させる。次に付属の「エコローラー」でdiscOvery Digitalが飛び散らないようガードしながらヒタヒタになる程度に盤面に垂らす。そのままやさしくブラッシングした後、アーム式ノズルの先端を盤面内側に移動させるとバキューム動作が開始され、内周から外周に向かって自動的にアームが動き、廃液を吸い取っていくという按配だ。

 ここで注意すべき点は、盤面に液を残さないようしっかりと吸い取ること。アームはモーターで自動的に円弧運動をするが、アームを降ろす位置やノズル先端の当たり方によって吸い取り残しがあると、ディスクやプレーヤーのピックアップを傷める恐れもある。

 

こちらは照明用のリモコン。PRODIGY本体に仕込まれたLED照明色の調整などが行なえる(オフも可)

 

12cmデジタルディスク洗浄用の「discOvery Digital」は500mlで¥6,600 税込。PRODIGY購入時には、レコード洗浄用「discOvery33/45」の250ml品が付属する

 

付属するEco Roller洗浄ブラシ。これでディスク表面をブラッシングする。交換用のブラシは¥17,600 税込で購入可能だ(ファイバーブラシ部3本付属)

 

 

アナログ&デジタルディスク、映像&音声に効く「二刀流」モデル

 洗浄効果は絵と音、双方に現われる。絵に関しては、コントラストレンジの拡大がはっきりと実感でき、特にハイライト側の伸びが著しい。UHDブルーレイ『ジョーカー』のオープニング、事務所の鏡に向かってピエロの化粧をする主人公。窓から差し込む陽光が明るくなっており、その影となる窓下のヒーター等の暗部の様子が明瞭にわかる。顔のアップでは、白塗りの肌の様子などのディテイル向上が目覚ましい。BD『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でも、スーツの服地や原稿用紙の紙質など、テクスチャーのリアリティが上がり、撮影カメラのレンズ性能が上がったかのような違いを感じた。

 UHDブルーレイ『フォードvsフェラーリ』では、主に音をチェック。AVセンターのボリュウム位置は同じにも関わらず、ディスクの洗浄後に再生すると、音圧感が上がったような錯覚すら抱くほど、エキゾーストノートが一段と太く響いた。セリフの押出しもグッと高まり、より明瞭で分厚くなった印象だ。

 このことから、例えばCDをリッピングする前、あるいはバルクのBD‒R等に番組をコピーする前などに、光ディスクをしっかりとクリーニングしておくことで、よりよい絵と音が期待できる。これは静電気の防止などの要因が改善につながると考えられるから。もちろん新品・中古のLPレコードの洗浄でも、以前の自宅テストにおいて著しい音質改善効果が実感できたことを付記しておきたい。遂にオーディオ・クリーナーにも「二刀流」の波がくるのかしら!?

 

操作は簡単。ディスクをセットしてスイッチを入れて回転させ、洗浄液を垂らしながらEco Rollerでブラッシング。この時、盤面が洗浄液でヒタヒタになるようにする(写真上)。次に吸引口のついたアームをディスクの内周にセットすれば自動で外側まで汚れをバキュームしていく。従来のクリーナー類は最後に盤面を拭きとる作業が必要となり、静電気を起こしてしまう可能性がある。PRODIGYではその必要がないことも大きなポイントだ