映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第60回をお送りします。今回取り上げるのは、久保田さんをして“これぞ東映映画”と大興奮の『孤狼の血 LEVEL2』。とにかく出演者全員がとてつもなく熱いそう。実録ヤクザ映画を知っている人も知らない人も、血沸き肉躍るであろう本作を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『孤狼の血 LEVEL2』
8月20日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、丸の内TOEIほかにてロードショー

 『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『止められるか、俺たちを』『凪待ち』と、邦画界にガリガリと爪痕を残してきた白石和彌監督の快作『孤狼の血』(2017年)の続篇。広島・呉原市で再び、血と暴力、怨嗟と裏切りの宴の幕が上がる。

 脚本の池上純哉、音楽の安川午朗、美術の今村力、編集の加藤ひとみ、照明の川井稔、録音の浦田和治らは白石組の精鋭で、多くが前作『孤狼の血』で日本アカデミー賞の部門賞を受けている。撮影の加藤航平は、『人類資金』『孤狼の血』ほかで撮影助手を務め、今回が長篇デビュー作。

 役者たちも遠藤憲一、中村獅童、音尾琢真らが前作につづいての出演。そしてもちろん呉原東署所属の日岡秀一役の松坂桃李も、前作で殉職した大上役・役所広司が作品中で実際に使っていた狼の刻印のあるライターを握りしめ、酸いも甘いものマル暴刑事に成長して再登場する。

 今回は柚月裕子の原作から発展させたオリジナル・ストーリー。上記スタッフも、村上虹郎、中村梅雀、寺島進、宇梶剛士、斎藤工らの初登場組も気合が入りまくりで、とにかく全員攻撃、全員守備! これが映画だ。これぞ東映映画だ。熱量がとんでもなく、頭から尻尾までエネルギッシュで面白い。

 “このモンスターを止めろ!”のキャッチコピーとともに日岡の前に立ちはだかるのが、7年ぶりに出所し、敵対ヤクザも女も皆殺しにする怪物・上林成浩を演じる鈴木亮平。もみあげを剃り落としたふた昔前のテクノカットみたいな髪型だが、もみあげと一緒に人間性や良心も捨て去っており、極悪非道な猟奇性を爆発させる。

 鈴木演じるこの男、『ブレードランナー』でレプリカントのロイ(ルトガー・ハウアー)がタイレル社社長にお見舞いした荒業を憤怒のトレードマークにしており、どちらも生みの親への恨みが下敷きになっているので、案外本当にあそこから持ってきたのかもしれない。

 クライマックスは、深夜の激烈なカーチェイスを経ての日岡=松坂桃李と上林=鈴木亮平の大激突!

 この場面がちょっと面白い。街にはひとっこひとりおらず、対向車も現れない。ここだけリアリティーがすっ飛んで、ふたりはある種のファンタジー空間で戦っているのだ。

 東宝映画でいえば『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』、プロレスならアンドレ・ザ・ジャイアントとスタン・ハンセンの激突みたいなものか。そこに遅れて自衛隊=広島県警のパトカー群がやってくる。このへんのアップデートされた感覚が新時代のヤクザ映画を生んでいるように思える。

 『仁義なき戦い』シリーズや『県警対組織暴力』、『仁義の墓場』などの70年代東映実録ヤクザ映画を知っているおじさんファンも、そうでないひとも存分に楽しめビックリできる血湧き肉躍る一作! 東映マークの映画館へ行こう!

映画『孤狼の血 LEVEL2』

8月20日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、丸の内TOEIほかにてロードショー

監督:白石和彌
出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬
配給:東映
2021年/シネマスコープ/139分
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」制作委員会

公式サイト https://www.korou.jp/

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