ハードバイオレンス作で頭角を現してきた阪元裕吾監督の最新作『ベイビーわるきゅーれ』が、いよいよ7月30日(金)より公開される。凄腕の殺し屋でもある女子高校生コンビの「ちさと」(髙石あかり)と「まひろ」(伊澤彩織)が、淡々と仕事をこなしながらも、社会に適合していこうと奮闘する、コメディ色も強い作品だ。今回W主演を務めるのは、阪元監督の前作『ある用務員』でも同じ設定の女子高校生殺し屋の「リカ」と「シホ」を演じた髙石あかりと伊澤彩織の二人だ。公開に先駆けてインタビューした。

――映画『ある用務員』にワンポイント出演したコンビが、今度はW主演で映画となりました。まずは、感想をお願いします。

髙石あかり 嬉しいです。しかも、『ある用務員』のリカ&シホ コンビが好評だったと聞いて、喜びも二倍ですね。

伊澤彩織 本当に嬉しいです。実は、『ある用務員』の撮影が終わって2カ月ぐらい経った時でしょうか、監督から「リカとシホが一番人気です」と連絡を頂いたんです。しかも、好評すぎてスピンオフの話が持ち上がっています、ということで、『ある用務員』の公開前に(スピンオフではなく新たな役で本作の)制作が決まって、ちょうど昨年の12月に撮影しました。

――『ある用務員』の撮影中には、こうなる(作品ができる)と思っていましたか?

髙石&伊澤 いやー、思ってないですよー(笑)。

髙石 まさか、主役をこの二人で務められるとは想像もしていなかったので、びっくりしました。でも、監督や相方が違っていたらよりプレッシャーも大きかったと思いますが、阪元監督や伊澤さんがいてくれたおかげで、出演がとても楽しみでした。だから今、こうして撮影を終えてみて、次ができたらいいなーなんて、夢みたいなことを考えています。

伊澤 私も! でも、撮影しながら監督は、2(作目)どころか、3(作目)をどうしようかって話されていましたから(笑)、監督の頭の中では、もうすでに3部作出来上がっているみたいなんです。最後の3は、前日譚(0)にするって、笑顔で話してくれました。

髙石 すごーい!

――さて、主演となったことで、アクションもセリフも増えたと思いますが、台本を読んだ時の感想はいかがでしたか。

伊澤 すごく面白かったです。

髙石 めちゃくちゃ面白かったです。ただ、セリフ量が経験したことのないものだったので、できるのかなという不安は大きかったです。

伊澤 私もですよ。

髙石 当たり前なんですけど、実物の台本を見ると、衝撃的というか、これを本当にできるのかと、ちょっと怖くなりました。

伊澤 個人的にはおでんのシーンが一番たいへんでした。

髙石 撮影は長回しで、しかも一発撮りでしたから、驚愕でしかないですよ。

――髙石さんは歌手活動もされていましたが、歌詞を覚えるのとはまた違いますか?

髙石 歌詞はリズムとかメロディとあわせて覚えられるので、メロディを聞けば自然と歌詞が出てくるんですけど、セリフはどうしたら出てくるんだろうって悩みました。体に染み込むぐらい、一所懸命セリフを覚えて現場に臨みました。本当に難しかったです。

――伊澤さんはいかがでしたか?

伊澤 私も、アクションを覚える方が全然楽でしたよ。セリフはもう本当に覚えられなくて! 撮影の合間に、あかりちゃんとずっと本読みしてました。

――お二人が演じられたキャラクターは、お二人自身に似ている部分も感じられましたし、一方で2面性もあり、演じるのはたいへんだったのでは?

髙石 2面性がある、という部分は自分に似ていると思います。すごく元気で楽しいことが好きなんですけど、ドライな部分もあって。そういうところは、すごく似ているな、共感するなと、台本を頂いた時から思っていました。それもあって、2面性の部分ははっきり見せようと思ったので、人懐っこいなと思ったら、急にドライになる、というお芝居は切り替えをきっちりと演じ分けるようにしました。

 喧嘩のシーンなんかでも、それまでは明るめのトーンで話していたのに、急に(声のトーンが)低くなったりして。観てくださる方が、“えっ”ていう戸惑いみたいなものを感じてもらえたらいいなと思って演じました。

――伊澤さんはいかがでしたか?

伊澤 結構、自分との共通点は感じましたね。あてがきではないと思いますけど、まひろは自分と似ているなって思いました。

髙石 結構、似てますよね。

伊澤 寝るのが好きだし、動きにしか取り柄がないし、仕事道具が銃とナイフとかだし、日常生活はだらしないしと、かなり似ていますね。まひろのセリフとか行動で、これは理解できないなというものは、ほとんどありませんでした。まひろって、社会不適合者ではありますけど、じゃあ暗いのかと言えばそうではないし、自分にただ甘いだけで、自分のご機嫌の取り方を知っている子なんです。観に来て下さる方の中にも、まひろは自分と似ているなーと感じる人がいるんじゃないかな。

――普段、抱っこしてとかやりますか?

伊澤 あははは、ありますね(笑)。

――一方で、ちさとは天真爛漫で、舌足らずでしたが、それは髙石さんの中にあるものですか?

髙石 えーと、それはですね、打ち解けると自然と出てきてしまうものなんです(笑)。緊張している時や、仕事モードの時はきちんと話さないといけないと注意しているんですけど、仲が良くなってくると出ちゃうんです。(伊澤さんに向かって)どうですか?

伊澤 私にはまだ……打ち解けていないのかなー?

髙石 えー! 私的には結構出していると思っていたのですが!

――えー、それはさておき、ちさとの2面性の部分はスパッと切り替えられていて、ギャップが際立っていました。

伊澤 そうなんですよ。切り替えがすごく早くて! 個人的には、電話でブチ切れるシーンが一番印象に残っています。電話相手に「いまそっち行くからな」ってキレた直後に、「まひろさーん、お願いがあるんですけど」って(猫なで声で)言われた時、本当に笑いそうになってしまって、必死にこらえていたんです。

髙石 確かに! 私は普段、あまり怒ることはないので、「オラー」みたいなのは、やっていて新鮮でしたし、そこから甘えに切り替えるところは、すごく楽しかったです。普通なら、ゆっくりテンションが変わって行くと思うんですけど……。

伊澤 起伏がすごかった。

髙石 上げ過ぎちゃったかもしれません(笑)。

――その関連で言えば、バイトから帰って来て、謝るシーンもいいですね。

伊澤 あーあそこですね。つかつかって怒った風に歩いてきたと思ったら、急に猫なで声で謝ってきて。

髙石 やっていて、何がしたいのかなって、少し考えちゃいました(笑)。

伊澤 監督がモニター前でずっと爆笑してたよね。

――そういえば、監督は伊澤さんより年下です。

伊澤 そうなんですよ。髙石さんとも同い年の役ですけど、実際には9歳違うので、一緒に横に並んで大丈夫かなって、不安も大きかったです。

髙石 画面では、まったく年の差は感じませんでした。

伊澤 よかった。スタントマンには、年齢よりも若く見える説があるので(笑)、それが効いたのかもしれません。

――えー話を映画に戻しまして、劇中では結構長回しシーンがあり、アドリブに見えることもありました。

伊澤 監督からアドリブをしてほしいという要望は、結構ありました。ただ、話す内容については予め監督から、こういう風にしてほしいという指示はもらっているんです。

髙石 本当に監督はアドリブが好きでしたよね。

――髙石さんが間違って極道を殺ってしまって、その後始末を頼むシーンとかは?

髙石 そこはセリフとアドリブが混ざっていますね。アドリブをするには、相手役の背景とか役柄を知っていないと出てこないと思うんですけど、そこでは(相手役の)水石亜飛夢(田坂役)さんがほぼほぼ言葉を与えてくれたので、それがもう面白くて仕方なかったんです。ご一緒できてよかったなと思います。

――さて、本作でお二人の好きなシーンを教えてください。

髙石 二つあります。一つは、相方のまひろちゃんとしゃべっているところ。長回しも多いので、仲の良さとか、お互いが思っていることとか、こういう子なんだっていうのがよく分かると思うのでチェックしてほしいです。特に、お部屋でお鍋をしているところは観てほしいですね。

 二つめは、初めてのガンアクションシーンです。相手から銃を奪い取って撃つという一連のアクションを観てほしいです。短いシーンではありますけど、練習をすごく頑張ったので。

伊澤 私はアクションシーンで二つですね。初めのコンビニファイトのところと、ラストファイトのところです。今回、アクション監督を務めている園村健介さんが作るアクションはすごく独特で、一朝一夕で出来るような動きじゃなかったんです。

 作品に入る2カ月ぐらい前から、園村さんに練習をつけてもらって、自主練習を重ねていきましたけど、骨や筋肉をどういう風に動かすか、というところから意識して練習するので、もう体よりも頭がパンクしてきてしまって! 最近になってようやく、園村さんの体の使い方が自分の体に馴染んできたので、本作の撮影の時にはまだまだできていなかったな、という反省もあります。

 立ち回りが決まっているとはいえ、暴力とアクションの中間の世界にいるなと感じていました。女性スタントの中では、私にしかできない立ち回りだったんじゃないかなって思ってます。園村さんのおかげです。

――園村さんと言えば、ものすごい近接アクションが多いですよね。

伊澤 そうそう、本当に近いんですよ。相手の顔の前にパンチを通すのが一般的なアクションのやり方ですが、園村さんは首の後ろや背中をこすりに行くくらい密着したパンチを出したりする。銃撃戦もあの近さでやるのは、なかなか見られないと思います。日々アクションを練習しているスタントマンでも難しい動きをしているので、注目して観てほしいです。

――そして、ぜひ3部作の実現を。

髙石&伊澤 はい! がんばります。

映画『ベイビーわるきゅーれ』

7月30日(金)テアトル新宿ほか、
8月20日(金)シネ・リーブル梅田にて ほか全国順次公開

<キャスト>
髙石あかり 伊澤彩織
三元雅芸 秋谷百音 うえきやサトシ 福島雪菜 / 本宮泰風
水石亜飛夢 辻凪子 飛永翼(ラバーガール) 大水洋介(ラバーガール) 仁科貴

<スタッフ>
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
音楽:SUPA LOVE
主題歌:KYONO「STAY GLOW feat.TAKUMA (10-FEET)」
挿入歌:髙石あかり×伊澤彩織「らぐなろっく~ベイビーわるきゅーれ~ feat. Daichi」
エグゼクティブプロデューサー:鈴木祐介 プロデューサー:角田陸、後藤剛 音楽プロデューサー:松原憲 撮影・照明:伊集守忠 美術・装飾:岩崎未来 録音:五十嵐猛吏 スタイリスト:入山浩章 ヘアメイク:赤井瑞希 編集:阪元裕吾 CG・エフェクト:若松みゆき 音響効果:吉田篤史 演出補:工藤渉 制作:吉田浩太 「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会(TOKYO CALLING/ライツキューブ/SUPA LOVE/渋谷プロダクション) 制作プロダクション:シャイカー 配給:渋谷プロダクション
95分/DCP/ビスタ/ステレオ
(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

公式サイト:https://babywalkure.com
公式ツイッター:https://twitter.com/babywalkure2021

ヘアメイク:西田美香(atelier ism(R))