アナログ、デジタルを問わず、AV機器が備えているRCAピン端子に差し込んで、有害なノイズが抑えられるという高周波ノイズ除去フィルターPNA-RC01(以下RCA01)。この類のアクセサリーはすでに他メーカーからも製品化されているが、この春、発売されると、その確かな効果が口コミで伝わり、静かなブームに。いまも順調に売り上げを伸ばしているという。

YUKIMU SUPER AUDIO ACCESSORY
PNA-RCA01
¥49,500(税込)

●ノイズ減衰値:18dB(3MHz以上の高周波ノイズの減衰値/出力抵抗220オームの場合)
●寸法:全長52×直径16.5mm(グリップ部)
●問い合わせ先:(株)ユキム TEL.03(5743)6202

ユキム スーパーオーディオアクセサリーとは

 世界各国から優れたオーディオコンポーネントを長年に渡り日本に紹介してきたオーディオ代理店の株式会社ユキム。その見識/知見を活かしたアクセサリーブランドとして2018年に立ち上げたブランドが「YUKIMU SUPER AUDIO ACCESSORY」。高度な技術に裏打ちされた、確かな効果を備えたアクセサリーの提供を目指し、日本国内で設計・製造を行なった製品づくりを続けている。PNA-RCA01以前には、除電ブラシ2種(ASB-1、ASB-2 ion)を展開。特にアナログ愛好家から高い評価を獲得し、定番アイテムとなっているのは、ご存知の通りだ。(編集部)

 パナソニックで各種AV機器のオーディオ回路設計に携わっていたエンジニア、山﨑雅弘氏(USBパワーコンディショナーの設計担当者)の開発というバックグラウンドの影響が大きかったことは確かだが、発売直後から評判を呼び、プラスワンアクセサリーの定番として認知されるケースも珍しい。

 なぜRCA01がここまで評価されているのか、ここではさまざまな使用シーンを試しながら、その実力を検証してみたい。製品としては、前述したように、オーディオ/AV機器のRCA端子に接続することで、デジタル回路やスイッチング電源から生じる機器内部の高周波ノイズが抑えられるというノイズ吸引アタッチメントだ。

 本体は全長52mm、直径16.5mm(グリップ部)とコンパクト。信号に混入した約3MHz以上の高周波ノイズ成分を、抵抗とコンデンサーの直列回路を経由して、インピーダンスの低い金属製ケース(削り出しの真鍮製)に吸収するという仕組みだ。

 回路はいたってシンプル。ただ英国LCR社製オーディオ用スチロールコンデンサーや、アムトランスの非磁性炭素被膜抵抗(AMRG2W)を採用したり、音質に影響をおよぼすプリント基板を使用せず空中配線で製作したり、随所に山﨑氏が長年の経験から培った知識/知見が見てとれる。真鍮の表面塗装についても、よりスムーズな電子の流れ方が得られるような仕上がりにこだわったという。

 ターゲットはあくまでもデジタル回路やスイッチング電源から生じる機器内部の高周波ノイズであり、音声信号の帯域には影響しない。装着端子はアナログ、デジタルを問わず、空き端子なら入力でも出力でもかまわない。自分のシステムで実際に試してみて、もっとも効果的と思われる端子に装着できるというわけだ。

後戻りが難しいほどの明らかな音質向上効果あり

 では早速、実力の検証といこう。今回はHiVi視聴室のリファレンスとなるパナソニックのUHDブルーレイプレーヤーDP-UB9000とデノンのAVセンターAVC-X8500Hとの組合せで、RCA01を1本、あるいは2本使用して、その効果について確認していく。

どこに使うのが効果的か?

 PNA-RCA01はRCAピン型端子であれば、アナログ/デジタル、入力/出力端子を問わず幅広く使用できるノイズ吸収アクセサリー。つまりどの端子に差しても一定の効果は見込まれるが、いっぽうでどこに使うのが効果的なのか、という使いこなしの幅もあることになる。ここではパナソニックのUHDブルーレイプレーヤーDP-UB9000(Japan Limited)とデノンのAVセンターAVC-X8500Hを使って、いくつかのパターンを試した。1個遣いでの検証とともに、2個使った場合の最適箇所もあわせてチェックしている。(編集部)

パナソニックDP-UB9000(Japan Limited)に使用

パターン①アナログ7.1ch音声出力のR端子

パターン②アナログ2ch音声出力のL端子

パターン③同軸デジタル音声出力端子

パターン④アナログ7.1ch音声出力のR端子+同軸デジタル音声出力端子(2本遣い)

デノンAVC-X8500Hに使用

パターン⑤フォノ入力のL端子

パターン⑥CD(アナログ音声)入力のL端子

パターン⑦同軸デジタル音声入力端子

パターン⑧UB9000の同軸デジタル音声出力端子+X8500HのCD(アナログ音声)入力のL端子

 まず手始めにUB9000のアナログ7.1ch音声出力のR端子に装着して(パターン①参照、以下同)、私の愛聴CD『Famous Blue Raincoat/Jennifer Warnes』から数曲再生してみたが、全体に刺激臭が抑えられる傾向で、声の質感もなめらかで、リズムも刺々しさを感じさせない。

 スネアの張り出しやピアノ立ち上がりなどは、やや大人しくなる印象もあるが、帯域バランスが崩れることはなく、聴き心地も悪くない。同R端子に変えてみたが、音質傾向はほとんど変わらず、同様の効果が確認できた。

 続いてアナログ2ch音声出力のL端子に装着すると(パターン②)、わずかに太く柔らかな感触となり、ほどよく音の芯を出して、深みが増す傾向だ。低域よりの帯域バランスのためか、リズム感がゆったりとして、口元もやや大きく感じられる。

 もっとも効果的と思われたのが、同軸デジタル音声出力端子への装着だ(パターン③)。音の勢い、分解能、空間の描き分けと、非装着時との音質差が大きい。特に中低域に厚み、強さが加わることで、全体の躍動感が増して、より生き生きとしたサウンドが満喫できる。

 映画『アリー/スター誕生』のチャプター7、レディー・ガガとブラッドリー・クーパーの2人がお馴染みの「シャロウ」を歌うシーンを聴いたが、ここでもRCA01の効果は明らかだ。

 リードギターの響きの緻密さ、声の質感のきめ細かさ、そして高さ方向、奥行方向に重層的に拡がっていくスタジアムの空間描写と、RCA01のあり/なしで、空間全体を支配する表現力が大きく変化してしまう。この違いを目の当たりにすると、もう後戻りは難しいと感じてしまうほどだ。

 アナログ7.1ch音声出力のR端子と同軸デジタル音声出力端子の2本遣い(パターン④)を試してみたが、ここでは濁りのない芳醇な響きと、ストレスのない空間の拡がりが特徴的だ。

 『アリー/スター誕生』の再生でもセリフ、効果音、音楽と、音の鮮度が高い。空気のグラデーションをきめ細かく描き上げ、緻密な響きが奥行方向にスムーズに拡がる。このヌケのよさ、開放感はなかなか魅力的だ。

AVセンターX8500Hも大きな効果が感じられた

 続いて装着対象の機器をUB9000からX8500Hに移して、その効果を確認してみよう。まずは手始めにわずかにゲインを持つフォノ入力のL端子(パターン⑤)に使用。帯域バランスは変わらないが、音像/音場のフォーカスがより明確になり、音楽の骨格が見えやすくなる。

 「これはいけそう!」という期待を抱きつつ、CD(アナログ音声)入力のL端子に装着して(パターン⑥)みたところ、予感は的中。実に堂々とした落ち着きのあるサウンドで、微小信号の解像力、空間の静けさ、ピアニシモ表現と、より洗練される。

 『アリー/スター誕生』の再生では、セリフのニュアンスが実に豊かで、ガガの歌声も艶やか。多彩な情報が複雑に絡み合っても、明瞭度は損なわれることなく、それぞれの微細な表情の違いを淡々と描きわけていく様子が鮮明になった。

 同軸デジタル音声入力でも試して(パターン⑦)みたが、声の質感、スネアドラムの張り出し、空間の拡がりと、それほど大きな変化は感じなかった。今回のシステムでX8500H単独で使用するなら、CD入力のL端子(パターン⑥)が有力候補となる。

 最後にUB9000とX8500Hの2本遣いという使用シーンを想定して、いくつかの装着パターンを確認してみた。これは予想通り、UB9000の同軸デジタル音声出力端子とX8500HのCD入力のL端子の組合せ(パターン⑧)がベストだった。

 基本的な情報量が増えるという印象ではないが、誇張のない素直なサウンドがよく弾み、躍動する。高域、低域ともに表現がオーバーにならず、音源の持ち味を無理なく描き出していく。脚色を排した生なりのサウンドに触れられる感じが、実に新鮮だった。

BS4Kの1.5ch録画で画質・音質改善を実感

 この状態のまま、NHKBS4Kの『4Kクラシック倶楽部/REICH85-加藤訓子-』のBD-R録画を再生してみたが、ここでは音質と画質の両面で絶大とも言える威力を発揮した。

 プログラムは現代音楽の巨匠スティーヴ・ライヒの作品を、世界的なパーカッショニスト加藤訓子が「ライヴソロ+多重録音」で表現するという内容で、「ピアノ・フェイズ」ヴィブラフォン版の世界初放送も含む実に貴重なコンテンツだ。演目は「シックス・マリンバ・カウンターポイント」。6台のマリンバの多重収録で、すべてのパートを加藤訓子自身が演奏している。初めは同じ音の繰り返しに聴こえ単調に思えるが、時間の経過とともに耳が慣れて、フェーズのズレが得も言われぬ不思議な感覚、空気感をもたらす……。

 複雑かつ奇妙な表情を感じさせる響きのズレだが、この体験したことのないような音の表現がRCA01装着時にはストレスがなく、重厚でしなやか。微妙なズレもいやな気分ではなく、どちらかといえば、心地よく感じられる。画質についても明らかにしっとりとした質感で、黒が艶っぽい。

 試しにRCA01をすべて外してみたところ、音の質感が乾き気味になり、表現も単調。さっぱりとした調子で、響きのニュアンスも感じとりにくい。画質もコントラスト感がやや浅く、総じて淡白な描写になりやすい。音質、画質の両面で、もっと繊細で情緒豊かな表現力が欲しいと感じてしまった。

どの機器のどの端子でも確かな効果があるアイテムだ

 今回はっきりしたのは、どの端子であっても、RCA01を装着すると、音質は少なからず変化するということ。ただその変化は一様ではなく、システムの組み方や電源の環境によって、効果の度合いは変わってくると考えた方がいい。

 これにはシステム全体のノイズを大きく左右するアース環境が一様ではないためだろう。まずはRCA01を1本手に入れて、さまざまな端子に装着して、試してみることをおすすめしたい。ココという端子を見いだしたとき、貴方のシステムはより上質なAVの世界を手中に収めることになる。時間のかかる宝探しだが、恩恵は大きい。

開発者からのコメント

試聴を繰り返し完成したこだわりの音質改善アクセサリーです

楽音倶楽部 主宰
山﨑雅弘 さん

 大手メーカー在職時は、さまざまな音質改善アクセサリーを考案して、市場に導入してきました。定年退職しましたが、まだまだ音をよくするアクセサリーのアイデアがあり、ぜひとも皆様にお届けしたく「楽音倶楽部(らくおんくらぶ)」を起業しました。

 研究成果をすべて投入して、PNA-RCA01を開発・製造しました。ホームページ( http://rakuon-club.com )にも詳しく記載しておりますが、こだわったポイントは、全部品を非磁性部品で構成することです。抵抗とコンデンサーは、試聴を繰り返し厳選し、それらの部品は、旭化成の電波吸収材パルシャットで包みこみました。音質に影響するプリント基板は使わず、空中配線でハンドメイドとしています。最終的に音質を決定したのは、外装ケースである真鍮の筒を、いかに精度高く表面仕上げするか、という部分です。さまざまな工場で試作しましたが、最終的に八尾の町工場のおやじさんによる、こだわりの切削加工品に出会えました。

 なめらかな真鍮の表面は、電子の流れを変え、鮮度が高くクリアーで伸びやかな音質を得ることが出来ました。これからも、いろんなものにチャレンジしていきたいと思っていますのでご期待ください。

内部に使われているこだわりのパーツ類。左がアムトランス製非磁性炭素被膜(カーボン)抵抗(AMRG 2W)、中央が英LCR社製オーディオ用スチロールコンデンサー、右が旭化成製の特殊電磁波吸収シート・パルシャット。こうしたパーツを真鍮製円筒に手作業で配線、効果的なノイズ吸収を図るアイテムだ

リファレンス機器
●4K有機ELディスプレイ:東芝48X9400S
●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニックDP-UB9000(Japan Limited)
●AVセンター:デノンAVC-X8500H
●スピーカーシステム:モニターオーディオPL200Ⅱ(L/R)、PL100Ⅱ(LS/RS)、イクリプス TD508MK2(オーバーヘッドスピーカー×6)、TD725SWMK2(LFE)

視聴に使ったソフト
●CD:『Famous Blue Raincoat/Jennifer Warnes』
●UHDブルーレイ:『アリー/スター誕生』
●エアチェック:『4Kクラシック倶楽部 REICH85/加藤訓子』(NHK BS4K HDR/5.1ch)

関連サイト

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