ファーウェイは6月16日に、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場の最新トレンドをテーマにしたメディア向けイベントを開催した。

 同社では完全ワイヤレスイヤホンの「FreeBuds Pro」「FreeBuds 3」「FreeBuds 4i」をラインナップしており、いずれもコンパクトなサイズやノイズキャンセリングなどの機能性、デザイン性でイヤホンファンの耳目を集めている。

同社製完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル「FreeBuds 4i」

 今回はそんな完全ワイヤレスイヤホン市場の最新トレンドについて、オーディオ・ビジュアル評論家の野村ケンジさんが解説を行い、またファーウェイ・ジャパン 東京研究所音響技術研究室室長の角田直隆さんも登壇し、同社のオーディオ分野最新技術について説明してくれた。

 野村さんのテーマは「TWS市場の最新トレンド〜市場拡大とユーザーニーズの二極化」というもの。野村さんによると、現在の完全ワイヤレスイヤホン市場ではAppleとソニーの人気が高く、2021年は「Air Pods Pro」と「WF-1000XM4」が売り上げの上位に入ると予測しているそうだ。

 そこに他のメーカーも多く参入しており、中でもJabraやGLIDiC、BoCoといったオーディオメーカー以外からの参入が目立つのがこの市場ならではの現象だという。もちろんHUAWEIを始めとするスマホメーカーの製品も多くあり、同じブランドで揃えることで使い勝手が向上する点も人気の秘密になっている。

 先述のAir Pods Proはその代表で、iPhoneとのマッチングのよさが大きな購入理由のようだ。野村さんも、「日本ではiPhoneユーザーも多く、利便性も高いので深く考えないとこれに落ち着く」と分析していた。

 ただしそれらの製品は音質や機能面に配慮したハイエンドクラスに属しており、これに対しもっと手に取りやすいモデルも増えてきている。AVIOT、ag(final)など日本メーカーからも機能性・音質・価格のバランスに優れたモデルが出てきているし、圧倒的なハイコストパフォーマンスが特徴の中国ブランドもここ数年で音質・デザイン面の改善が進んでいるそうだ。

 そしてこういった低価格帯モデルが充実してきたことが完全ワイヤレスイヤホン市場の拡大につながっている。実際完全ワイヤレスイヤホンの販売台数は大きく増えているが、これは低価格の有線イヤホンからの買い替えがほとんどだそうだ。

完全ワイヤレスイヤホンの上位モデル「FreeBuds Pro」

 このように製品数、ユーザー数とも増加している完全ワイヤレスイヤホンだが、上記のような要因もあり、ユーザーが二極化も進んでいる点は注意が必要だと野村さんは語る。

 これは、ANC(アクティブノイズキャンセリング)などの高機能、高音質な製品を好む層と、ハイコストの製品を好む層に分かれており、自分がどの点を重視するのかなど、製品を選ぶ際には気をつけて欲しいということだろう。

 ではファーウェイの製品はどんなポジショニングにあるのか。この点については最新モデルのFreeBusds 4iを例に上げ、税込¥9,680という価格でANC+外音取り込み機能搭載を備えており、さらに通話時のマイク性能が優れている貴重なモデルで、お手頃価格で便利に使える製品だと高く評価していた。

 さらにトップモデルのFreeBuds Proも、ANCの効果が優れており、完全ワイヤレスイヤホンでここまで必要なのかと驚いたそうだ。こちらは簡単・手軽に高機能を使いこなせるモデルで、周りのノイズに惑わされずに音楽や通話を楽しみたいユーザーにお薦めだと説明してくれた。

オーディオ・ビジュアル評論家の野村ケンジさん

 続いてFreeBUds4iで使われている技術について、角田さんが解説してくれた。角田さんが所属するファーウェイ・ジャパン 東京研究所音響技術研究室は、中国や欧州の研究所とともに、2〜5年後に製品に応用される技術の研究、開発を担当している組織だという。

 FreeBuds 4iでは音質、装着性、ワイアレス接続を重視している。まず音質では、ふたつのマイクを内蔵し、クリアーな音質通話を可能にしている。時間差ビームフォーミングとAI雑音低減というふたつを組み合わせることで、環境ノイズや風雑音を効果的に低減、時間軸での音声スペクトラムを解析して人の声だけをきちんと取り出している。野村さんがマイク性能を評価していたのは、この機能が優れている故だろう。

 ANCは、マイクで外部ノイズを集音・分析して打ち消すフィードフォワード型を採用。この処理内容も常に進化させているそうだ。

 ドライバーは10mm径のダイナミック型で、基本仕様はFreeBuds 3のドライバーを踏襲している。なお10mmというサイズは耳に装着しやすい大きさで、かつ音響的に許される最大サイズを選んでいるそうだ。このドライバーそのものも高域の周波数特性が優れており、ハイレゾ対応もできるくらいの再現性を持っているとのことだ。

 装着性は延べ数千回のテストを実施し、ハウジングの形状を追い込んでいる。ちなみに装着テストは1回に少なくとも2時間は着用しているとかで、これだけでも膨大な手間と時間がかけられていることがわかるだろう。

 接続性も、初めてのペアリングではケースのふたを開けるだけでペアリングモードが有効になり、2回目以降はふたをあければ自動接続されるといった具合に使い勝手に配慮されている。

 またこういった完全ワイヤレスイヤホンでは、プレーヤーとの接続時に片方がプライマリ、残りがセカンダリモードでつながるようになっており、実はプライマリ接続の方が電池の消費が早い。そのためL/Rのどちらかだけ電池が早く消耗してしまうということもあるそうだ。

 FreeBuds 4iでは電池残量を判別しながらプライマリ接続、セカンダリ接続を自動的に切り替える機能を内蔵し、L/Rでの電池残量を平均化しているそうだ。これもユーザーにとっては有り難い配慮といえるだろう。

ファーウェイ・ジャパン 東京研究所音響技術研究室室長の角田直隆さん

 イベント終了後に、角田さんにファーウェイの完全ワイヤレスイヤホンの今後について聞いてみた。ハイレゾや空間オーディオをどう考えているのか尋ねたところ、具体的なことは決まっていないが、重要なテーマとして取り組んでいるとの返事だった。

 先述の通りドライバー自体はハイレゾ再生に対応できる能力を持っているわけで、コーデックをどうするかなどが解決できればファーウェイの完全ワイヤレスイヤホンでハイレゾ音源を楽しめる可能性もあるわけだ。世界規模で技術開発を進める同社ということもあり、ここには期待したい。

 また現在は全世界共通で音作りをしているそうだが、言語の問題などを踏まえて、地域ごとに細かく音作りを変えていくことも技術的には可能だという。同社が考える、日本語に最適化したイヤホンの音も聴いてみたいと思った。(取材・文:泉 哲也)

先日クラウドファンディングがスタートしたスマートグラス『HUAWEI ×GENTLE MONSTER Eyewear Ⅱ』も展示されていた。メガネのつるの部分にセミオープンスピーカーを内蔵し、Bluetooth(コーデックはSBCとAAC)で音楽を楽しめるアイテムだ。UVカットのサングラスタイプと度なしメガネの2種類をラインナップする

メガネを付属のケースに入れ、ケース背面のUSB Type-Cコネクターに電源ケーブルをつなぐことで充電が可能。ケースは充電機能のみでバッテリーは内蔵していない