初めてのカスタム・イン・イヤー・モニター作り!
ここ数年、音に拘るユーザーに注目が高いのが、カスタム・イン・イヤー・モニター(以下カスタムIEM)です。
カスタムIEMとは、主にミュージシャンやサウンドエンジニアなどが、ライブでの演奏中やスタジオでの音作りで使う、高解像性能と高遮音性を持った、自分専用にカスタマイズされたイヤホンを指します。
このカスタムIEM、通常のイヤホンと何が違うのかと言うと、オーダーメイドで自分の耳型をとり、それを元にイヤホンの本体(シェル)を作成するところが、通常のイヤホンと大きく異なります。
とはいえこのカスタムIEM、これまではプロ向けで費用も高かったり、作成(耳型を採取)できる店が限られていたりと、なかなか一般のユーザーには購入しづらいものでした。
ところが、昨今の安価な3Dプリンターの出現や各メーカーの企業努力により、一般のユーザーでも購入が容易になってきました。
このカスタムIEMに、大手オーディオメーカーのオンキヨーが参入したのは昨年の2015年。オンキヨーのカスタムIEMに関しては、新興メーカーながらも、ドラムの名手テリー・ボジオ(「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大な100人のドラマー」で5位。)がライブなどでも活用しており、プロの品質を一般ユーザーでも手軽に楽しめるメーカーの一つになっています。
このように、一般的になりつつあるカスタムIEMですが、「自分の耳型をどうやってとるの?」「痛くないの?」「作成にどれくらいの時間がかかるの?」など、音楽ファンにとって不安な点があるのも事実です。
そこで、今回は日本の若手ヘヴィメタルバンドで、今一番世界に近いバンドGYZEのメンバーにご協力いただき、一般のユーザーが購入する時と同じ手順で、実際に耳型をとって、製品が完成するまでをご紹介したいと思います。
GYZE(ギゼ)
2015年に開催された、日本最大級のメタルフェス「LOUD PARK 15」のオープニング・アクトにも出演した、北海道出身のメロディックデスメタルバンド。2016年も、ドイツで開かれる巨大メタルフェス「Summer Breeze Open Air」に、日本のバンドとしては初めて出演することも決定しており、国内外問わず今最も勢いのあるメタルバンド。
カスタム・イン・イヤー・モニターの選び方
今回は東京駅にほど近い、オンキヨー八重洲ビル1Fの「ギブソン・ブランズ・ショールーム・トーキョー」に伺いました。
ここは、2014年にオープンしたオンキヨー、ギブソン、ティアック、3社のコラボレーションによるショールームで、ガンズ&ローゼスのスラッシュなど、世界の名だたるミュージシャンもイベントなどで訪れている場所です。(部屋の奥の壁には国内外の有名ミュージシャンのサインがズラリ!)
本日はGYZEのドラマーShujiさん、ベーシストとのArutaさんにご協力していただき、カスタムIEMを作成することになります。(残念ながらリーダーのRyojiさんは3rdアルバムの作成中の一番忙しいところということで、今回はご参加いただけませんでした。)
まずは、ShujiさんArutaさんのお二人に、カスタムIEMのベースとなる、イヤホンIE-C1、IE-C2、IE-C3のサンプル機を、それぞれ聴いてもらいました。
オンキヨーのカスタムIEMのベースになるこの3機種は、音を出す再生ユニットにBA(バランスド・アーマチュア)というドライバーを採用し、高音質を実現しています。IE-C1ではBAドライバーを1基、IE-C2では高域と低域とで2基、IE-C3では高域と中域と低域で3基搭載。それぞれ独自のチューニングが施されています。
一般的にBAドライバーの個数で価格が異なってくるため、搭載個数が多ければ多いほど高性能だと思われがちですが、それぞれのチューニングにより音質や音圧も異なるため、一概に搭載個数が多い方が良い音と言えないのがイヤホンの面白いところです。この辺りは実際に店頭に行って試聴していただくのが一番良いと思います。その時には、ぜひ自分が普段使っているオーディオ機器を持っていくことをお勧めします。
Shujiさん<IE-C3>
選んだ理由:実はずっとライブ中に使えるイヤーモニターを探していたところでした。これまで使っていた物はどれも耳に合わず、ライブ中に外れないように、イヤーモニターの上からガムテープを貼付けてプレイしていました。IE-C3を選んだのは、このモデルが一番低音が良く聴こえたことと、個人的にはライブ感が半端ないと感じたのが理由です。
Arubさん<IE-C2>
選んだ理由:今回のカスタムIEMに関しては、出来れば普段使いとライブとで両方使えるようなモデルがいいと思って聴きました。自宅ではSONYのMDR-7506をリスニング用として使っています。最近のメタルの音作りが音圧を上げるタイプが多いので、聴き疲れしないように比較的フラットな音が出るタイプを使っていました。IE-C2に関してはMDR-7506の上位互換的なモデルに感じたので選びました。
ちなみにオンキヨーのカスタムIEMのシェル(イヤホン本体)制作に関しては、耳への密閉度の違いで3種類から選ぶことができます。
1、プロ・ミュージシャン:密閉度がより高く、遮音性に優れたタイプ。
2、スタンダード:通常のリスニングに最適な遮音性と装着感を両立したタイプ。
3、スポーツ:外の音がより聴こえるよう密閉度を下げたタイプ。
もちろん、お二人は「プロ・ミュージシャン」タイプを選びました。
更にイヤホン本体の3モデルを選ぶ他に、シェルのカラー12色と、ケーブルのカラーを3色から選ぶことができます。
ちなみにシェルのカラーは、レッド/マゼンタ/パープル/ブルー/グリーン/イエロー/オレンジ/ブロンズ/パールホワイト/メタリックブラック/ギャラクシー/ブラック。ケーブルは、ブラック / ホワイト / レッド。
ケーブルに関しては、着脱式タイプ(リケーブル)を採用しており、ギターのケーブルなどでもプロのミュージシャン達に信頼の高い、オヤイデ電気製のものを選んだそうです。
最終的にGYZEの二人が選んだのは
Shujiさん
右耳(レッド)・左耳(ギャラクシー)、ケーブル(レッド)
Arutaさん
右耳(マゼンダ)・左耳(パープル)、ケーブル(ホワイト)
今回偶然ですが、それぞれが左右異なるシェルのカラーを選びました。理由を伺ったところ「ライブ会場とか暗いところでも、左右がすぐ分かるように。」とのこと。さすがはプロのミュージシャンです。
耳型をとろう
それでは、耳型の採取に入ります。採取はそのままショールーム内で行なわれました。耳の中にシリコンで出来た印象剤を注入しますが、その前に、取り出しように紐の付いたスポンジを入れておきます。
印象剤は2種類のシリコンで出来ており、担当者が手際良く混ぜ合わせて注入器に詰め込み、耳に注入します。印象剤は5分程度で固まるので、両耳合わせてわずか10分程度の作業です。
お二人に感想を伺うと、「完全に密閉になるので気持ちいい。」「超密閉なので落ち着いて寝ちゃいそう。」「あまり耳の穴なんか普段見られる事がないので、ちょっと恥ずかしいかも。」とのことでした。
耳型の採取はこれで終了。耳型は、別の場所にあるカスタムIEM作成の工場に運ばれ、1週間程度で完成します。
カスタムIEMが完成
耳型の採取から1週間後、オンキヨーから製品完成の連絡を受けて、再度GYZEのお二人と製品の受取りに伺いました。
オンキヨーのカスタムIEMは、高級そうな黒い箱に入って納品されてきます。中にはカスタムIEMの本体とケーブルはもちろん、専用のキャリングケースとメンテナンス用のクリーニングブラシが付属してきます。
Shujiさん「うぉお! カッケー! オレの耳穴にピッタリ!」「おまけになんだかデカい!」
どうもShujiさんの耳穴の入口が、少し標準より大きかったようで、それで以前使っていた、一般のヘッドフォンが合わなかったようです。
Arutaさん「いい! かっこいい。」「白いケーブルがたまらない。」「ピッタリで密閉感がすごい。取り外すのにコツがいるかも。」
カスタムIEMは、自身の耳型に合わせて作成されているので、装着後の取り外しに少しコツがいるようです。オンキヨーの本谷さんに伺ったところ、前方にひねると取れ易いとのこと、Arutaさんもすぐに慣れて、簡単に取り外しが出来るようになりました。
ちなみに完成後、耳のフィッティングに関して、どうしてもしっくりこない場合には、無償で再度作成をしてくれるそうです。(商品受取りから30日以内)
また、オンキヨーのカスタムIEMの着脱式ケーブルに関しては、MMCX端子を採用しており、音に拘るユーザーは更に他社製のケーブルで、音の違いを楽しむ事も出来るそうです。
オンキヨーでは、今回訪問した東京の八重洲のショールームの他に、大阪北浜のオンキヨーカスタムIEMポップアップストア、鳥取倉吉のOTOKURA(オトクラ)でも、耳型採取&購入が可能だそうです。
また地方などで、どうしても直営店舗への来店出来ない場合でも、全国にオンキヨーカスタムIEMを取り扱っている眼鏡・時計店や補聴器センターなどがあります。こちらでも耳型採取と購入が可能です。全国の販売店情報は、オンキヨーカスタムIEMのホームページに掲載されていますので、そちらをご確認ください。
▼オンキヨー カスタム・イン・イヤー・モニター 全国取り扱い店舗案内
https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/headphone/custom/shop/index.htm
また都内などの出張のついでに来店し耳型の採取を行い、その後店舗になかなか足を運べない場合でも、完成後の商品を来店でなく自宅に発送してもらうことも可能だそうです。詳細に関しては各店舗に直接お問い合わせください。
今回の取材で、カスタムIEMが想像以上に簡単に作成できることに驚きました。これまではプロミュージシャンのような専門家しか作成できない(作成するのが難しい)と思われていたカスタムIEMですが、このように一般のユーザーでも容易にプロレベルの製品が作購入可能です。音に拘るユーザーであればカスタムIEMが今後のイヤホン選びの一つの選択肢になると思います。
※1週間使用してみた感想※
Shujiさん
3rdアルバムの作成やレコーディングで早速使っています。正直これまで使っていたイヤーモニターと比べて別次元の音がしました。カスタムIEMということで、耳に完全にフィットしていて、頭を振っても汗をかいても取れることはありません。次回のライブでは耳にガムテープで固定する必要はないと思います。プレイに完全に集中できます。実はこれまでライブの後耳鳴りがひどかったんです。これは耳に合わないイヤーモニターを使っていたので、どうしても音を大きくせざるをえなくて、それで耳を痛めていたのだと思います。これなら音を小さくしても十分聴き取れるので、全国のドラマーに勧めたいです(笑)。個人的には低音がやはり気持ちいいので、一般のユーザーもこれでGYZEを聴いてもらいたいです。僕の迫力のツーバスを聴いてください!
Arutaさん
普段からリスニングで使っています。まず驚いたのはエージングしてゆくと、どんどん音が変ってゆく所です。当初は少しぼんやりしていた部分も、日に日にクリアになっています。いらない振動が無くなっているような気がします。正直これまではイヤホンなどの再生機に、拘らないタイプだったのですが、こういう経験をするとはまりそうです。音楽に拘る人は絶対買った方がいいです。僕的にはイヤホンの概念が変わりました。このイヤホンを使って一番違いを感じたのが、ライブ盤などの音源を聴いた時です。これまでは聴こえなかった音や、空気感までも感じられるようになりました。実は今GYZEではライブ機材のコンパクト化を考えており、このカスタムIEMをライブでも使おうかとも検討しています。最後になりますが、一般のユーザーにはぜひこのIE-C2を購入してもらってGYZEを聴いてもらいたいです。GYZEは音数の多いバンドなので、各楽器の細かな部分も聴いて楽しんでもらいたいです。
▼GYZE
公式サイト http://www.gyze.jp/
公式Facebook https://ja.wikipedia.org/wiki/Facebook
最新アルバム
2nd「BLACK BRIDE」
国内でのライブ情報
2016年8月10日「GYZE 5th Anniversary 2Days Special Live」東高円寺二万電圧
2016年8月11日「GYZE 5th Anniversary 2Days Special Live」東高円寺二万電圧
▼ONKYO
カスタム・イン・イヤー・モニターWEBページ
http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/headphone/custom/index.htm
東京、大阪、鳥取の直営店価格
IE-C1 59,800円(税別)
IE-C2 79,800円(税別)
IE-C3 119,800円(税別)
※全て耳型採取も含む
お知らせ
東京八重洲のギブソン・ブランズ・ショールーム・トーキョー、大阪北浜のオンキヨーカスタムIEMポップアップストア、鳥取倉吉のOTOKURA(オトクラ)では、学割応援キャンペーンを開催中です。学生さんであれば、リーズナブルな価格で購入が可能だそうですので、詳しくは各直営店に問い合わせてください。