常にワールド・ファーストを目指すデノンの姿勢が、
新しい物を好むモンキー・パンチさんの共感を呼んだ
モンキー・パンチシアターのメインソースはCDやブルーレイ、UHDブルーレイなどの12㎝メディアだった。その再生には“プレーヤー”が使われていたわけだが、ブルーレイの登場初期には絵や音にこだわった本格プレーヤーは数が少なかった。そんな中で、モンキー・パンチさんが選んだのは、デノンのユニバーサルプレーヤーだった。ここではその経緯や、現在のデノン製品に受け継がれる品質へのこだわりを探ってみたい。(編集部)
●筆者:潮 晴男
何事にも実際の体験が伴わなければ首を縦に振らなかったモンキー・パンチさんだが、デノンのブルーレイプレーヤーを導入した時の素早さには、驚きを通り越して、思わず耳を疑った。
確かあれは2008年の春のことだったと思う。持ち前の好奇心から、リリースが始まったばかりのブルーレイソフトのロスレス音声を早く聴きたいという相談を受け、ぼくのお薦めユニバーサル・ブルーレイプレーヤーの、デノン「DVD-3800BD」を持参して体験会を実施した。その時の印象がよかったのか、取材からわずか数週間後には、「入れたよ」という連絡とともに、DVD-3800BDがモンキーさんのシアターに設置されていた。
モンキー・パンチさんが愛用していたデノンの名機
モンキー・パンチさんは、ブルーレイのロスレスオーディオを自宅で体験するために、アナログ5.1ch出力を備えたデノンのブルーレイプレーヤー「DVD-3800BD」を導入、その絵と音を楽しんでいた。その後システムを入れ替えた後も後継期の「DVD-A1UD」を導入するほどデノンプレーヤーのパフォーマンスがお気に入りだった。
当時モンキーさんは、マークレビンソンの「No40L」という、最高峰AVプリアンプでオーディオビジュアルを楽しんでいたが、残念ながらこのモデルはHDMI経由でロスレス音声をデコードすることができなかった。さりとて音に惚れ込んで招き入れたこの製品を無碍に扱いたくはない、というモンキーさんの意を汲み、No40Lの5.1chアナログ入力を活かしたいと考えた。
そのためには、アナログ音声出力のクォリティを追求したブルーレイプレーヤーが必要だったが、まさにぴったりの製品として白羽の矢が立ったのが、DVD-3800BDというわけである。
それからしばらく、このモデルはモンキー・パンチシアターで活躍したが、その後、最上級機として登場したデノン渾身の一作「DVD-A1UD」に入れ替わる。このモデルはぼくも愛用していたのでよく覚えているが、目の醒めるような高画質映像と、エネルギー感とふくよかさを湛えたサウンドが魅力だった。
そのデノンというブランドについて紹介しておく。同社は1910年に国内初の国産蓄音機メーカーとして誕生した。以来、音に関する製品を作り続けているハードメーカーであり、昨年には創立110周年を迎えた、日本のオーディオの歴史の中で燦然と輝く老舗ブランドなのである。
デノンの製品がオーディオビジュアルの世界でも注目を集めるようになったのは、個々のモデルが基本的な品質の高さを備えていることと、プロ機器の開発で培った長期にわたる信頼性が備わっていること、そして激動のオーディオビジュアル界にあって、常に新しいフォーマットを率先して取り入れる、「ワールド・ファースト」とでも呼ぶべきアグレッシブな姿勢を貫いていたからに他ならない。先のDVD-3800BDもその好例といえる。
そして同社は昨年、創立110周年を記念した製品4モデルをリリースした。これらも、単に記念碑的な位置づけの製品ということではなく、節目を彩るにふさわしい技術とノウハウが注ぎ込まれている点で、常に全力投球する開発陣の姿が目に浮かぶ。
これからホームシアターを始める方は要チェック!
110年の伝統を受け継ぐ記念モデルを好評発売中
デノンは2020年に創業110周年を迎えた。それを記念して、SACD/CDプレーヤー「DCD-A110」、プリメインアンプ「PMA-A110」、AVアンプ「AVC-A110」、MC型カートリッジ「DL-A110」の4モデルを発売している。いずれも既存モデルをベースにしながらも、開発スケジュールやコストの面で断念していた項目を改めて見直すことで、より理想に近いクォリティを追求した、特別仕様となっている。同社が到達した質の極限を体験できる、注目のラインナップだ。
とりわけAVアンプの記念モデルとなった「AVC-A110」は、ベースとなったフラッグシップモデル「AVC-X8500H」で設計者がやり残したと感じていた部分にメスを入れ、コストを度外視して作り上げるという、同業他社も羨む製品に仕上げられている。この時期にベースモデルより20万円も高価な製品を作ること自体尋常ではないが、それはリーディング・メーカーとしての意地とプライドがなせる業であろう。
今の時流からすれば、価格を抑えて売りやすさを求めた機能性重視の物づくりに傾きがちだが、デノンはどのランクの製品にも本質を重視し、限界まで性能を求める姿勢を崩さない。これが、ファンの心に響くのだろう。
※4月26日公開の後篇へ続く