ソニーが開発したイマーシブ・オーディオ(立体音響)が楽しめる新たなフォーマット“360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティ・オーディオ)”。このフォーマットはドルビーアトモスと同様にオブジェクト・ベースを採用しているが、大きな違いは名前の通り360°全天球の中心にリスナーが位置し、全方向から音が聴こえてくる所にある(ドルビーアトモスは、上半球状のサウンド)。

 360 Reality Audioのコンテンツは、欧米で2019年よりAmazon Music HDによって配信されていたが、日本も2021年3月19日より本格始動。ポニーキャニオン、ワーナーミュージック、ソニー・ミュージックレーベルズなどの国内レーベルと連携、人気邦楽アーティストの楽曲を含めた4,000曲以上が配信される。配信サイトもDeezerとnugs.net(サービス開始は4月16日)が加わり、コンテンツも充実しつつある。

 同時に360 Realty Audioのポテンシャルを最大限に引き出す新曲制作も始まっており、ここで紹介する「Yoshida Tamotsu Classic」シリーズもそのひとつ。メイン・エンジニアに山下達郎、大滝詠一などの名盤を数多く手掛けてきた吉田 保氏、そして、東京藝術大学にて3D音響に関する研究を行なう亀川 徹教授が協力・監修する共同プロジェクトである。新進気鋭の若手演奏者が集まり、独自のマイキングによる新解釈のクラシック音楽を楽しめるシリーズ作品だ。企画は、360 Reality Audio対応のスタジオが完成間近のラダ・プロダクションで、同社の360 Reality Audio専門レーベルpanorama noteから発売される。

 シリーズ1作目は、モーツァルト:クラリネット五重奏曲を収録した『Composition I』(4月16日リリース予定)。2作目はミニマル音楽の巨匠スティーブ・ライヒのMallet Quartet(発売は今夏を予定)。すでに3作目のレコーディングも決まっており、今後の展開が楽しみだ。

レコーディング・エンジニアの吉田 保氏

 

360°のどの場所から音を出すのか、定位をコントロールする特製パンナー

 

レコーディングは、東京藝術大学にあるスタジオ Aにて行われた。写真は、360 Reality Audioのポテンシャルを引き出すよう、スタジオの空間を捉えるアンビエンス・マイクを配置しているところ

 

吉田氏と、監修を務めた亀川氏でセッティングした、それぞれの楽器を録るマイク

 

ヴィブラフォン奏者は、安藤巴、彌永和沙の2名、マリンバ奏者は麻生弥絵、岡田満里子の2名

 

「Yoshida Tamotsu Classic」シリーズ第1作目は、4月16日にリリース予定のモーツァルト:クラリネット五重奏曲『Composition I』

 

360 Reality Audioに対応した製品や仕組みがわかるソニーの特設サイト