確かなクォリティとスタイリッシュな外観で人気を集めたモニターオーディオの5.1chサラウンドスピーカーセット、MASSシリーズが内容を一新、より魅力的なシステムへと生まれ変わった。
まず球体型の可愛らしいエンクロージャーに注目していただきたい。素材は高剛性コアMDF材をグラスファイバーで強化したABSで、指先で軽くたたいても、安っぽい共振は皆無。この造りのよさは密閉型の優位性を引き出すためにも有用である。
サランネットに加えて、スピーカーターミナルを覆うバックカバーも備え、前後からサンドイッチするように装備する。いずれも高級感のある織り布仕上げで(グレー系とホワイト系の2色)、全方位から見てきちんとデザインされているオーディオ機器はほとんど他に例がなく、なかなか魅力的だ。
ラウンド形状のバッフル面にはウーファーとトゥイーターが近接に配置され、点音源の理想を追求。同時に球面波に近い拡散性を獲得しているという。
89mm径のウーファーにはポリプロピレンをベースに金属粒子を充填したMMP(Metal Matrix Polymer) Ⅱ振動板を採用。軽く、高剛性でレスポンスの速さが持ち味だ。19mm径のトゥイーターは自然な音色のソフトドームタイプとしている。
では早速、デノンのAVセンター、AVR-X4700Hとの組合せで、そのパフォーマンスを検証していこう。まず2.1chのシステムでヴォーカル、ジャズトリオと、聴き慣れたCDから2、3曲再生してみたが、これが予想していた以上にいい。実に堂々とした抑えの効いた聴かせ方で、雑味がない。質感の高い、落ちつきのある音調は同ブランドの最高峰、プラチナムシリーズ2に通じる。
ジェニファー・ウォーンズの声は艶やかで、ニュアンスも豊かだ。声の定位の明快さは、密閉型の小型2ウェイならでは。陽気に、開放的に鳴るタイプではないが、窮屈さはなく、適度な湿りけを感じさせる大人っぽいサウンドは好印象だ。
映像と合わせた音響が真の姿、セリフや環境音がくっきり
ここまで聴かせてくれると、おのずと5.1ch再生への期待が高まる。そこでUHDブルーレイ『TENET テネット』を再生。音場の拡がり、スケールはやや抑え目にして、音源の移動感、明瞭度を際立たせる。響きは重厚で、セリフは抜けがよく、輪郭がにじまない。
低音はでしゃばらずに、音場全体を下支えしている感じ。さすがに体を揺さぶるような低音を期待するのは難しいが、銃声、爆破音、ヘリの旋回音と、ダイナミックレンジの広い音源も歪むことなく、冷静に描きわけ、単調にならない。
大合戦が繰り広げられる喧騒の場面から、一瞬のうちの静寂な空間に引き戻す動と静のコントラスト、その描きわけが見事。レスポンスが素早く、しかも無駄な音は出さないというスピーカーシステムとしての素性のよさが実感できる。
『大相撲2021年初場所』(NHK BS4K録画)も視聴してみたが、その空間、気配の生々しいこと。足音、歓声、悲鳴、拍手と、多彩な音が複雑に重なり合う中、ひとつひとつの音が歪むことなく、スムーズに拡がり、両国国技館の、その空間に引き込まれたかのような感覚さえある。
そして人気力士が土俵に上がった時の拍手と歓声の生々しさ。四股を踏み、ぱんぱんっと胸を叩き、立ち合いとともに、2人の力士の頭がドスンとぶつかり合う音の迫力の凄味。音がよくなるだけで、ここまで相撲が楽しくなるとは。テレビ内蔵スピーカー、あるいはサウンドバーとは明らかに別世界だ。
5.1chシステムとは別に、サテライトスピーカーMASS2G Satelliteは1本単位の購入が可能。サブウーファーの単品販売は現段階では非対応。ただ「サブウーファー単品が欲しい」という要望は強く、現在、輸入元が交渉中だという。
両者の単品販売の道が開ければ、MASSの2.1chシステム、あるいはサブウーファー2本設置が可能となり、システムの可能性は大きく拡がる。ナスペックにはタフな交渉をお願いしたい。