ソニーでは、独自の立体音響再生技術「360 Reality Audio」(サンロクマル・リアリティ・オーディオ)の日本での本格導入を決定、その対応サービスと対応モデルが発表された。
360 Reality Audioは、2019年のCESで発表されたオブジェクトベースの立体音響再生技術となる。視聴位置を360度取り囲む全球に音源を配置し、さらにそれを自由に動かすこともできる。音素材を後処理で再配置もできるので、クリエイターがイメージする表現に忠実な音源制作が可能になるという。
視聴方法は最大13個のスピーカーを使ったリアルサラウンドと、ヘッドホン/イヤホンによるHRTF(頭部伝達関数)を使ったバーチャル再生が可能。それらの360 Reality Audio技術詳細については、麻倉怜士さんの連載等で詳しく紹介しているので、関連リンクを参照いただきたい。ドルビーアトモスなどの映画用イマーシブサラウンドとも違う、音楽をメインに捉えた立体音響再生として新しい楽しみを提案している。
そして今回、日本でも360 Reality Audioを楽しめるエコシステムが整い、サービス、製品ともに拡充していくという。具体的には音源の充実、賛同パートナーの拡充、再生機器の提供だ。
まず音源は配信(ストリーミングサービス)で提供される。実はこれまでも「Amazon Music HD」で360 Reality Audioの音源配信は行われていたが、それはアマゾンの「Echo Studio」でしか楽しむことが出来なかった。今回はAmazon Music HD(一体型スピーカー用サービス)に加えて、「deezer」と「nugs.net」(一体型スピーカー用とスマホ向けサービス)でも360 Reality Audioの音源が配信されることになる。
その音源も、ポニーキャニオン、ワーナーミュージック・ジャパン、ソニーミュージックの協力を得て、邦楽の制作体制が整ってきた。既に海外では4000曲を超える楽曲が配信されているが、加えて大滝詠一、リトル・グリー・モンスター、森高千里といったタイトルも楽しめるようになるそうだ。
ちなみに先日の2021 CESオンラインで、新しい制作ツールとして「360 Reality Audio Creative Suite」が発表されている。これはPro Toolsといった音楽制作ツールのプラグインとして使えるもので、クリエイターにとっては立体音響に取り組みやすく、かつ自身のイメージを直感的に反映できるものになっているそうだ。
ハードウェア面では、一体型スピーカーの「SRS-RA5000」(市場想定価格6.6万円前後、税込)と「SRS-RA3000」(市場想定価格3.6万円前後、税込)を4月16日に発売する。
両モデルのスペックはこちらの記事(https://online.stereosound.co.jp/_ct/17439951)で確認いただきたいが、どちらもストリーミングサービスにつないで360 Reality Audioの音源をデコードできる他、2ch音源もアップミックスして臨場感たっぷりに再現してくれるというものだ。
またスマホを使った視聴方法としては、各ストリーミングサービスのアプリ上で360 Reality Audioのコンテンツが選べるようになるという(アプリのアップデート方法はサービスによって異なる模様)。360 Reality Audioの音源でも、これまで同様にアプリで聴きたいタイトルを選ぶだけで、アプリ内のデコーダーを使ってバーチャル再生される。
これらの試聴についてはイヤホンやヘッドホンのメーカーは問わないが、ソニーが定めた360 Reality Audio認定モデルと「Headphone Connect」アプリを使えば、個人に最適化したサウンドで楽しめるようになる。
使い方としては、Headphone Connectをインストールしたスマホで耳の写真を撮影すると、アプリがクラウド上のデータベースにアクセスし、各個人に最適なパラメーターを設定してくれるというものだ。またソニー製ヘッドホンなら製品に応じた調整も施される。
なおウォークマンのA100、ZX500シリーズも360 Reality Audioの再生が可能で、スマホを併用することで個人への最適化もしてくれる。手順はやや複雑になるが、両シリーズのユーザーはぜひ試していただきたい。