デノンから、サウンドバーの新製品「HOME SOUND BAR 550(SB 550)」が発表された。市場想定価格8万円前後で5月下旬の発売を予定している。

 昨今の巣ごもり需要もあり、サウンドバーの国内市場での売り上げが伸びているという。デノンでも一昨年末に発売した「DHT-S216」が好評で、金額ベースでの売り上げも順調に拡大しているそうだ。

 今回発表されたSB550は、「既成概念を壊すべく、デノンの誇る技術とノウハウを投入したハイエンドモデル」と位置づけられている。いい音を知っている日本人のためのピュアでストレートな音を目指し、同社のサウンドマイスター山内氏が監修、ハイファイモデルやAVセンターと同じ方向性で音を磨き上げたという。

 同時に本体サイズにも配慮している。W655×H75×D122mm、重さ3.3kgという大きさは、40〜60インチクラスの様々なテレビとの組み合わせにもマッチするように考えられた結果という。でありながら、どの画面サイズで使っても物足りなくならないよう、充分な広さを持った音場空間を再現できる能力を備えている。

 そのために、まずスピーカーの基本に忠実な設計を採用した。新開発低歪ドライバーを搭載し、トゥイーターには19mmサイズを、ウーファーには55mmサイズを2基使用。これによる2ウェイ3スピーカーシステムを本体のL/Rそれぞれに搭載、さらに50×90mmのパッシブラジエーターを3基加えて(フロント両サイドと背面向かって右側)、安定した低音再生を可能にしている。

 なおDHT-S216では楕円型ウーファーを1基使っていたが、今回は真円型ウーファーに変更されている。楕円型ウーファーは振動板面積が広い反面、その形状故にエッジ部での歪みが発生することがある。SB 550ではより忠実度の高い低音を再現するために真円型とし、左右各2基とすることで振動板面積を稼いでいる。

 これらのドライバーをしっかり駆動するために、筐体の剛性にも配慮した。ABSにポリカーボネイトを混合した素材を使い、FEM(有限要素法)によるシミュレーションで強度解析を加えている。またインナーシェル構造や、底板にハニカムリブを加えることで高い剛性を実現した。

 そのユニットを駆動する電気回路にも細かな気配りがほどこされている。信号処理のプロセッサーにはアナログデバイセズのSHARC(グリフィン・ウルトラライト)を採用、演算能力の向上と消費電力の低減を可能にした。このチップで圧縮音源のデコードから、バーチャルサラウンド処理まで受け持っている。

 DHT-S216で好評だった「Pureモード」も引き続き搭載された。このモードを選ぶと、デコーダーからの出力をそのまま(サラウンドモード等の処理を内部的にバイパス)アンプ部に伝送した音を楽しめるようになっている。

 また耐熱性、安定性に優れた新型デジタルアンプを内蔵し、可聴ノイズと歪みの低減も達成している(出力トランジスターもユニットごとに1基、合計6基を内蔵)。電源回路も新規設計され、瞬間的な大出力にも充分対応できるという。

 サラウンドフォーマットは、ドルビーアトモス、DTS:Xなどのデコードに対応。BS4K放送で使われているMPEG4-AACのビットストリーム再生もできる。さらにDolby Atmos Hight VertualizerやDTS Vietual:Xといったバーチャル3Dサラウンドモードも搭載しているので、2chソースも臨場感たっぷりに楽しめることになる。

 またHOME 250やHOME 150などの同社製ワイヤレススピーカーをワイヤレスサラウンドスピーカーとしても組み合わせ可能。その設定もHEOSアプリから簡単にでき、4chリアルサラウンドのシステムが楽しめるようになる。ワイヤレススピーカーは、サラウンド用として使わない場合は音楽再生用として活用できる。

 ネットワーク機能のHEOSも内蔵しているので、Amazon Music HDやAWA、Spotifyなどのストリーミングサービスやインターネットラジオなども本体だけで試聴できる(別途契約は必要)。またUSBメモリーやPC、NASと組み合わせてのネットワーク再生にも対応している。Bluetooth、AirPlayでの再生もOKだ。

 入力端子はHDMI入力1系統(4K対応)、HDMI出力1系統(4K対応)、光デジタル入力1系統、USB Type-A 1系統、3.5mmアナログ入力1系統、LAN端子1系統など。HDMI出力はeARC対応なので、TV放送等をSB550で簡単に楽しめる。

 製品説明会でSB 550試作モデルの音を聴かせてもらった。49インチテレビの前にSB 550を置いた状態で再生してもらったが、ドルビーアトモスのトレーラーでは3D的な包囲感を持った音場が出現した。横方向の広がりは若干制限されるが、木の葉の移動感や上から降ってくる雨音が高さを持って再現される。

 続いて「PUREモード」でCDを再生してもらうと、幅655mmの一体型とは思えないほど広がりのあるステレオ音場が展開された。女性ヴォーカルがセンターに定位し、各楽器の配置もよくわかる。先述の通り、SB 550は各種音楽ストリーミングサービスも再生できるので、日常使いすることで、快適な音楽ライフが楽しめそうだ。

 最後にサラウンドスピーカーにHOME 150を2基加えて、ワイヤレスの4.0chシステムを構築、先ほどと同じドルビーアトモスのトレーラーや映画コンテンツを視聴してみた。

 当然ながら、サラウンドスピーカーが加わったことで音場が広がり、半球状の空間に包まれる印象に変化した。トレーラーの移動感も明瞭になり、雨粒もさっきより高い場所から落ちてくるうようだ。さらにSB 550で再生する情報が整理された結果か、映画の台詞もクリアーで聴き取りやすくなっていた。なおSB 550とHOME 150はダイレクトに無線接続されるそうで、伝送による音の遅れも感じなかった。

 サウンドマネージャーの山内氏によると、DHT-S216は比較的シンプルな構造だったので音もまとめやすかったそうだが、SB 550は内部構造が複雑で、かつパッシブラジエーター等を採用していることもあり、音作りが難しかったという。発売までには、もっと音の深みが再現できるようチューニングをしていくとのことなので、製品版でどれほどのクォリティに仕上がるか期待したい。