Cartridge
オルトフォン
VNL
オープン価格(想定市場価格¥12,000前後)
●発電方式:MM型●出力電圧:6mV(1kHz、5cm/sec)●インピーダンス:47kΩ●適正針圧:4g●自重:6.5g ●トラッキングアビリティ(315Hz、適正針圧下):交換針Ⅰ=100μm、Ⅱ=90μm、Ⅲ=90μm●水平コンプライアンス:交換針Ⅰ=16μm、Ⅱ=15μm、Ⅲ=14μm/mN●備考:本機には交換針Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを付属する●問合せ先:オルトフォンジャパン(株)

大オーケストラの重厚な響きも想定した本格志向

 針交換できるのがMM型フォノカートリッジの利点であり、このVNLは3種の交換針と組み合わせたセットで販売される。

 アルミニウムカンチレバーに取り付けられた針の先端部=スタイラスチップの違いでⅠ、Ⅱ、Ⅲのタイプで分けられている。いずれもチップの曲率半径は18㎛であり、接合部先端の高さや水平コンプライアンスの違いが記されているが、ねらった音質傾向については不明。自重は6.5gと軽い。

 ヘッドシェルはオルトフォンのSH4を起用して試聴した。まず「Ⅰ」は重厚さより軽快な表現向き。美空ひばりの「リンゴ追分」(ドーナツ盤)は日本人離れしたアクセントと声色に聞こえる。これはラップやディスコ系など平均レベルが高い音源に合わせたもののようだ。しかし「Ⅱ」は一変して流れがよく余韻の表情がよく析出される傾向である。「リンゴ追分」はBGM風で、往年のポップス、ムード音楽、典雅な室内楽向きか。そして「Ⅲ」となると演歌のこぶしに生気が与えられ、濃い情調が吹き上がってくる。ピアソラの妖気をふくんだ1960年代のタンゴにしても、ぐっと迫ってくる。十分に明朗な中高域だが、低音の刻みがややふっくらする。これは高出力のMM型によくある傾向だ。ともあれ、大オーケストラの重厚な響きも想定した本格志向といっていい。

 このように針先交換だけで各種の音の性格が楽しめる好企画を歓迎したい。

↑付属する3つの交換針はトラッキングアビリティ(垂直方向の音溝の変化への対応力)と水平コンプライアンス(水平方向の針先の動きやすさ)が異なる。それぞれサウンドの持ち味も違う。スタイラスチップは半径18μmの丸針で共通、カンチレバーはいずれもアルミ製となる。

↑試聴に使用したレコードプレーヤー

テクニクス
SL-1000R ¥1,600,000
jp.technics.com

↑3種の針先による音の違いを試す吉田氏。

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