レコーダー市場は、パナソニックDIGA(ディーガ)のほぼ一人勝ち状態が近年続いている。なかでも任意の放送局/番組を一定期間、丸々録画できる、「チャンネル録画モデル」は安定した支持を得ている。かくいう私も、愛用者の一人だ。
改めてチャンネル録画モデルの恩恵とはなにかを考えてみた時、私の具体的な経験をお話しすればわかりやすいと思う。
「あっ」と思っても後悔しない。安心のチャンネル録画が4K放送に対応
かつて友人との酒宴の席で新作ドラマが話題となった。私はまったくノーマークだったのだが、彼があまりに熱弁を振るうので関心を持ち、そういえばわが家のチャンネル録画モデルは2週間(つまり2話)遡って見られる設定になっていたことを思い出し、帰宅して無事にその連ドラを見ることができたのだ(それが『下町ロケット』で、以来、池井戸潤原作の連ドラはほぼ欠かさず見るようになった)。
このように、見逃してしまった番組を遡ってチェックできる点は、チャンネル録画モデルの特徴であり、大きな魅力のひとつである。
ただし、その頃(数年前)に導入したチャンネル録画モデルは、チューナーや信号処理デバイスの制約もあって、対象となる放送が地デジとBS/CSの2K放送まで。そこへいくと、今回採り上げるDMR-4X1000は、なんとBS/CSの4K放送もチャンネル録画できるようになった。まさしく隔世の感がある。
DMR-4X1000が4K対応となったことで、私は新たな顧客層の掘り起こしが叶うと思った。4K放送はリピートが多く、録り逃したとしてもすぐまた再放送されるではないかとおっしゃる方もいるだろう。だったら、チャンネル録画である必要はないじゃないかと……。
しかし、実はBS4K放送にも特番性の強いコンテンツが少なくないのである。ごく稀ではあるが。洋楽のライヴや一部の映画は、著作権やロイヤリティの関係からかリピート放送されないケースがこれまでにもあった。私の場合、元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの最新ライヴを見逃していた。4K放送がチャンネル録画に対応していれば、こうしたケースでも安心というわけだ。
ちなみに取材時点ではまだ開局していなかったが、この3月1日にはついにWOWOWも4Kチャンネルをスタートさせている。その意味でも4K放送のチャンネル録画機能は大きな存在価値があるといえるだろう。
チャンネル録画対応4Kレコーダー
パナソニック
DMR-4X1000
オープン価格
●寸法/質量:幅430×高さ66×奥行239mm(突起部含まず)/約4.3kg
4K対応のチャンネル録画に加えて、UHDブルーレイや各種ネット動画に対応
今回はDMR-4X1000を自宅で一定期間テストすることとなった。視聴環境は、4Kレーザープロジェクター+200インチサイズのスクリーン投写、60インチ8K液晶テレビの2パターンだ。現在の拙宅は地デジの受信環境があまり芳しくないので、録画対象はBS4K放送とBSデジタル2K放送とした。市販のUHDブルーレイももちろん観ている。
レコーダーの性能は、実際にハンドリングしてみなければ何もわからないというのが私の持論。そこで確認できたことは、本機がDIGAの伝統、血統を正統に継承していることだ。パナソニックの伝家の宝刀ユニフィエが使われなくなって久しいが、「4Kリアルクロマプロセッサ」をベースに、HDRトーンマップや各種ダイナミッレンジ調整機能、システムガンマ調整などが搭載されており、機能面からしても同社の単体ビデオプレーヤーの最上位機DP-UB9000(Japan Limited)と遜色ない内容となっているのが見逃せない。
また、NetflixやAmazon Prime Videoといったネット動画(VOD/ビデオ・オン・デマンド)コンテンツが視聴可能という点も、他社にはないDIGAの強みである。
「HDMI詳細設定」の活用で、表示デバイスの特質に合わせて最適化できる
まずはUHDブルーレイ『オリエント急行殺人事件』(2017年のリメイク版)を視聴した。チャプター13、雪の屋外での尋問シーンでは、デイジー・リドリー演じるメアリのアップの肌色の表現、探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)の口髭の質感など、細部をとてもていねいに描写する。全域にビシッとフォーカスが合い、瞳の輝き、髪の毛の風合いなど、この高画質コンテンツの特色を忠実に引き出している印象だ。雪の白さや眩しさにも飽和感はなく、しっかりとしたコントラストをキープしている。
UHDブルーレイ再生時にポイントになるのが、4X1000に備わる「HDRディスプレイタイプ」設定機能。60インチ8K液晶テレビでは『中・高輝度の液晶』設定に、プロジェクターの場合は『高輝度のプロジェクター』をそれぞれ選択したが、的確に4X1000側で輝度レンジをアジャストしている様子が見て取れた。具体的には、60インチ液晶では緻密なディテイル感で魅了し、200インチ投写では広大なコントラストレンジ感を示したのだ。
10Tバイトの大容量HDDと「使える」長時間変換モードで4K番組保存も不満なし
チャンネル録画の保存日数に関しては、2K放送(=地デジ/BSデジタル/CS110度デジタル)の8チャンネルを最大28日間可能であることに加え、2K放送を2チャンネル×13日間または4K放送(=BS/CS4K)を1チャンネル×13日間を追加できる(これら追加チャンネルはDR録画モードのみ)。今回私は言うまでもなく4K放送を追加し、NHK 4K放送をチャンネル録画した。
4Kチューナーを2基内蔵しているので、チャンネル録画しながらの裏番組視聴や、別番組の録画(2番組同時録画)にも対応している。他社の4Kレコーダーとの比較では、まず4K放送を全録(チャンネル録画)できるレコーダー自体が存在しないことに加えて、通常の4Kレコーダーと比べてみても、録画モードがDRモードから「おまかせ長時間4K 8〜12倍モード」までの18段階に対応しているなど、痒いところに手が届くといった内容だ。
そうしたパワフルな録画機能に対して、内蔵ハードディスクの10Tバイトの記録容量は必要にして充分だろう。この中で、通常録画用に6Tバイト、チャンネル録画用に4Tバイトと容量が切り分けられている(初期設定時)。
個人的に便利と感じたのが、「チャンネル録画用保存領域」から再エンコードをかけて「通常録画用保存領域」にムーブ(データ移動)できること。しかも、データ移動時でも移動後でも長時間録画モードの変更は可能ときた。HiVi誌などのテスト記事でも再三再四いわれていることだが、パナソニックの場合、そうした変換プロセスを経ても、解像度やフレームレートはもちろん、さらに色域、ビット数、あるいはHDR情報も、すべてそのままキープされる。ここが凄い。
DR録画においては、何も足さない、何も引かない。つまり、オリジナルに忠実な絵である。4Kならではの高いコントラストと緻密なディテイル描写は見事というほかない。
その4K放送のDR録画で、キアヌ・リーブス主演のメガヒット映画『マトリックス』(NHK BS4K)を録画。ダビング時に1層のBD-Rブランクメディア(25Gバイト)1枚には収まりきらないアラート表示が出たので、「おまかせダビング」にてレート変換し、BDメディアにダビング。それを鑑賞したのだが、これが予想以上に高画質で驚いた。
DR録画後、「4K 1.5倍録画モード」に再エンコードされてメディア保存されたようだが、解像感はおろか、グラデーション(階調のなめらかさ)が犠牲になっておらず、ノイズが増えている感じもしない。さすがに20年以上前の作品のため、最新映画と比べると先鋭さやグレインノイズの出方が異なるが、冒頭の暗いシーンでも驚くほど暗部の階調と深みがあり、不満なく観られた。
単純比較はどうかと思ったが(同様な絵づくりだろうと考えて)、「チャンネル録画」領域から「通常録画」領域に、DRのまま(再エンコードせず)に移動した映画『マトリックス レボリューションズ』(NHK BS4K)と比べてみてもほとんど遜色ない。さらに、こちらは「4K 1.8倍モード」でBD-R(25GB)メディアにダビング。それでも200インチ鑑賞でバッチリ。割安な1層のBD-Rに4K番組が公称3時間弱録画できる「4K 1.8倍モード」は、大いに使えるコスパ大のモードとわかったことは収穫だった。
UB9000譲りの「PQ変換優先モード」を搭載。高い品格のHDR画質が素晴らしい
ところで、拙宅の200インチ投写は、JVCの4KプロジェクターDLA-Z1を使っているのだが、DMR-4X1000とのコンビネーションにおいて「PQ変換優先モード」を選択できる点は大いに有益。つまり本機側でBS4K放送で使われているHLG(ハイブリッド・ログガンマ)方式のHDR番組を、HLGシステムガンマ処理を高精度に行なったうえで、HDR10(PQ)信号として変換して出力することで、両社がタッグを組んで完成させた連携モードによる12ビット再現が叶うからである。
8Kコンテンツを4Kに変換して放送された『8Kベストウィンドー/京都の大宇宙 東寺』(NHK BS4K)を200インチスクリーンで鑑賞した。DMR-4X1000の画面表示にて、「HDR(HLG)」「4K/60p」で出力されていることを確認。DLA-Z1のメニュー上でも、カラープロファイル「Pana PQ HL」、色温度「HDR」と表示されることもチェックしている。
「御衣伝達式」のシーンでは、寺の堂内/堂外の光の差し込み具合が実になめらかかつ自然。僧侶たちが着る袈裟の柄や、おそらくシルクであろう生地の紫/橙といった色合いも輝かしく、美しい。五重の塔を俯瞰した映像では、手前や奥の色付いた木々の赤や紅、黄色や緑色が画面から浮き出してくるようで、実に立体的な華やかさである。神事を採り上げた番組という性質もあったかもしれないが、12ビット精度で送られてくる信号には、得も言われぬ品位・品格が横溢しており、真に素晴らしいものだった。
優れたパフォーマンスと高いポテンシャルを強く実感した!
今回の一連のテストで、パナソニックDMR-4X1000の優れたパフォーマンス、高いポテンシャルを強く実感し、掛け値なしで個人的にも今一番欲しいAV機器に躍り出た。きっと同じ思いを抱くAVファンは相当数に上ると確信する。
提供:パナソニック
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DRM-4X1000のホームページ