オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。
★以下の記事はHiVi2011年9月号に掲載されています。
https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/bss_reg_hv/410
コストパフォーマンスに優れた入門機。
落ち着いたトーンで生々しさを漂わせる
＜PROFILE＞
童話の国、デンマークの地でオーディオノード社のスピーカーブランドとして誕生したDALI。製品ラインナップも豊富で、高級家具を思わせる美しいエンクロージャーの高級モデルが印象深い。
「ZESOR（センソール）１」は、小型２ウェイのエントリーモデル。とは言え、バッフル面にアルミ素材を用いた専用パネルを配置したり、DALIの上級モデルでお馴染のウッドファイバーコーンを用いたウーファーを装備したり、その内容はなかなか豪華。この価格設定は最近の円高傾向と無縁ではないだろう。
＜IMPRESSION＞
まず聴き慣れたCDから数曲再生してみたが、明るく、開放的なサウンド傾向ではなく、わずかにくすんだ響きを持ち味にしながら、落ち着きのトーンで、静かに語りかけてくるイメージだ。スマートな外観と裏腹に、演出は控えめ。音の鮮度、勢いをダイレクトに表現するようなモニター的なところもある。
女性ヴォーカルは艶っぽく、細部のニュアンスまできれい表現する。この種の小型スピーカーの場合、２本のスピーカーの中央にピンポイントで定位するケースが多いが、本機はスピーカーの間のスペースに面として声を描きだし、試聴ポジションによる音の変化も比較的少ない。
スネアドラムのアタックの激しさは抑えられる傾向で、フットワークもやや重め。安価なスピーカーシステムだが、組み合せるアンプの選り好みは大きめ。できる限り駆動力のあるモデルを用意して、中低域の質感を整えたい。
AVアンプにパイオニア「SC-LX83」を使い、フォステクスのサブウーファー「CW250A」を加えた2.1chシステムで、映画BD『ブラック・スワン』を視聴すると、空間の音像の動き、気配が生々しく、セリフの質感もしなやか。期待していた以上の再現性だ。スピード感よりも、太いトルクで存在感をアピールするような聴かせ方で、効果音、音楽の拡がりもスムーズ。壁掛け用設置で4.1chのシステムを組んでみるのも面白いと感じた。
SPEAKER SYSTEM
DALI ZENSOR 1
￥37,800（ペア、税別）
●型式：2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット：130mmコーン型ウーファー、25mmドーム型トゥイーター
●インピーダンス：6Ω
●クロスオーバー周波数：2.9kHz
●出力音圧レベル：87dB/2.83V/m
●寸法/質量：W162×H274×D228mm/4.2kg