国内メーカーのfinalと、シンガポールのオーディオブランドDITAがデザインから音作りまですべてを共同で行なったコラボレーション製品「SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-」が発売される。予価¥298,000(税込)で、2021年2月下旬の発売予定。既に12月12日から予約を受け付けている。

 2015年、DITAがfinalの東南アジア総代理店となり、両社の関係がスタートした。ふたつは、ともに「音作りにこだわり、ダイナミックドライバーの開発を自社で手掛けているところ」や「素材にもこだわりが強く、加工方法までも自社で開発するところ」など、ブランドとしての共通点が多く、お互いの製品やチーム同士に強い敬意と信頼感が生まれたという。

 その後、finalはDITAの日本総代理店となり、2019年の初めに両社のフラッグシップイヤホン「A8000」(final)と「DreamXLS」(DITA)のプロトタイプが完成。双方のエンジニアが相手の製品を高く評価をしたことから、今回のプロジェクトがスタートしている。

 製品名に採用した糸竹管弦(しちくかんげん)とは、音楽や楽器の総称として中国から伝わった古語で、「糸・弦」は糸や弦に刺激を与え、弦の振動を利用して音を出す楽器類・弦楽器を、「竹・管」は竹や管の中の空気の振動を利用して音を出す楽器類・管楽器を指す。

 このSHICHIKU.KANGENという名前には、すぐそこに楽器や演奏者が存在しているかのような生き生きとしたサウンドを奏でるイヤホンであり、音楽を演奏するたびに手に馴染んでいく楽器のように、この製品を長く熱心に愛用してもらいたいという願いが込められている。

 SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-の主な特長は以下の通り。

●伝統技法「沈金」を施した筐体デザイン
 「沈金」は、漆器の表面などに専用の刃物(沈金刀)で文様を彫り、漆を塗り込み、金箔や金粉を塗り重ねる伝統の装飾技法。漆が乾燥した後に、周囲の金箔か金粉を拭い取ることで、彫り込んだ文様部分にのみに金粉が残り、美しく繊細な模様が現れる。金が漆に沈んでいくことで、美しい文様が浮かび上がることから、「沈金」と呼ばれている。

 SHICHIKU.KANGENには、この沈金によって美しい麻の葉文様が施されており、この文様をより美しく輝かせるために、本体色は呂色(ろいろ)鏡面仕上げを採用した。呂色とは黒漆の濡れたような深く美しい黒色を表している。

●輪島の漆職人が手作業で製作
 金粉を定着させる工程は、石川県輪島の名工と呼ばれる漆職人に依頼。輪島は質の高い漆の産地で、古くから漆工芸品の生産が盛んな土地として知られている。麻の葉模様の細かい溝に漆を塗り込み、立体的に輝くように金粉を塗り重ねていく作業は、高い集中力と技術が必要とされている。

●共同開発された「トゥルーベリリウム ドライバーGen.SK」を搭載
 目の前で楽器が演奏されているような「美しい高域」や、さらに「立ち上がりの良い音」を実現するために、A8000と同様にトゥルーベリリウム振動板を採用。

 同時に「広がりのある豊かな低域」を実現するため、ボイスコイルからの引き出し線と振動板との接着方法を新設計している。創業時より複雑な樹脂成形や加工を得意としていたDITAによって、引き出し線と接着剤による振動板への影響がきわめて少ない接着方法を治具から開発している。

●新開発された「OSLOケーブルGen.SK」付属
 イヤホンでのリスニング環境において特に重要なケーブルも新開発された。ベースとなったのはDITAの「OSLOケーブル」という特殊なオイルをコーティングした線材を使用したモデルで、サメの肝臓からとれるスクワレンという、高級化粧品にも使われるオイルをコーティングすることで絶縁性を高めている。さらにオイルにブレンドされたゴールドとシルバーのナノ粒子がケーブルの線材の表面に取り付き、表面を滑らかにすることで導電性を高める。

 今回は芯線の太さ、本数、編み方、被服の厚みなど数十種類も試作を繰り返し、最適なものを調整。線材にスリーブをかけたあと、編み込み、もう一度スリーブをかぶせる二重構造を採用した。

 イヤホン側端子はMMCXリケーブルに対応しており、プレーヤー側端子は3.5mm 3極、2.5mm 4極、4.4mm 5極のプラグを付け替えることができる。

「SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-」の主なスペック

●ドライバー:ダイナミック型(トゥルーベリリウムドライバーGen.SK)
●ケーブル:OSLOケーブルGen.SK
●コネクター:MMCX
●感度:99dB/mw
●インピーダンス:16Ω
●筐体:ステンレス
●仕上げ:呂色鏡面仕上/沈金 麻の葉文様
●重量 :47g
●コード長 :1.2m