リビングエンターテインメントの主役はやはりテレビ。11月に登場したTCLのニューモデルは、ネット動画の魅力を楽しみ尽くすための仕掛けが数多く盛り込まれた製品群だ。世界で躍進するTCLが贈る新製品の実力に迫る。(編集部)

Android TV OS搭載4K対応液晶テレビ一挙登場!

垂直統合型テレビ生産を行ない、世界第2位のシェアを誇るTCL

 世界のテレビ市場において、韓国サムスンに次ぐ市場シェアを誇る中国TCL。1年延期となった東京オリンピック/パラリンピックを見据えつつ、いよいよ満を持して日本市場に本格的な参入を果たす。その主力モデルとなるのが、ここで紹介する65インチモデル、65C815だ。

 

4K LCD DISPLAY
TCL 65C815
オープン価格(実勢価格12万円前後)
● 寸法/質量:W1,446×H934×D366mm/27kg
● ラインナップ:55C815(実勢価格9万円前後)
● 問合せ先:(株)TCLジャパンエレクトロニクス TEL 0120-955-517

 

 

 本題に入る前にTCLブランドについて、簡単に紹介しておこう。会社の創立はいまから約40年前。磁気テープの製造、販売からスタートし、電話機の製造、販売で成功を収め、1992年には大型テレビを開発し、テレビ市場に参入している。

 同社の最大の強みは、液晶パネルはもとより、本体キャビネット、スピーカーのドライバーユニットについても、TCLグループ内で賄えること。テレビの主要な部品はほとんど自前で製造・調達するという垂直統合型のモノづくりができるというわけだ。

 特に注目されるのが、テレビの心臓部となる液晶パネルがTCLの子会社、TCL-CSO T(Shenzhen China Star Optoelectronics Technology/華星光電技術有限公司)で開発、製造できることだ。工場は武漢と深圳(シンセン)の2ヵ所にあり、家庭用テレビ用パネルは主に深圳で生産され、65/75/88インチの8Kパネルも最新設備を投じた自慢のラインで生産されるという。

 同社の液晶パネルの最大の特徴は、光の有効利用が可能なQuantum Dots(量子ドット、以下QLED)技術と、細かなLEDを多数配置し、きめ細かな部分駆動を行なうMini-LEDというバックライト技術にある(編註:本技術は2019年の65X10に採用されている)。

 QLEDは、光の波長変換によって、より効率的にRGBの発色を確保するというもの。具体的には、液晶パネルとバックライトの間に直径2~10nm(ナノメートル)サイズの半導体微粒子を持つ量子ドット光学シートを配置して、青色LEDで画像を照らしだす。

 量子ドットのサイズによって光の波長を制御(波長変換)して発色するため、一般的に広く使われている白色LED(青色LEDに黄色の蛍光体を塗布したタイプ)に比べて、光のロスが少なく、明るさ、色域ともに有利になるのだという。

 4K/8K放送やUHDブルーレイで採用された広色域規格、BT.2020のカバー率は約80%。一般的な液晶パネルの場合同率70%前後と言われるだけに、その優位性は明らかだ。

 

QLED液晶の仕組み

QLED(Quantum Dots Light Emitting Diode Display)液晶テレビは、亜鉛、カドミウム、セレン、硫黄原子で構成されるナノメートル単位の極小半導体粒子である量子ドット(Quantum Dots)を用いたバックライトを使った液晶テレビのこと。光や電気の刺激を受け、青色LED光源を、他の色に変換でき、しかもその取り出したRGBの各色の純度が極めて高く、結果的に色再現に優れた映像表現を可能にするという。TCLは、自社グループでQLED液晶の4Kパネル/8Kパネルを生産している。TCLは、4K/8Kの高解像度テレビで、色再現に優れたQLED液晶テレビの高画質を訴求する構えだ。

 

 

世界戦略モデルながら日本向けサービスにも対応

 さて今回紹介する65C815だが、倍速駆動のQLED液晶パネルを搭載したTCL自慢の高級機だ。OS(基本操作ソフト)はGoogleが提供するスマートテレビOS、Android TV。多彩なネット動画配信サービスに対応し、購入後にでも「Google Play Store」からお目当てのアプリをダウンロードすることも可能だ。

 TCLとしては世界戦略モデルという位置づけになるわけだが、GYAO !、ABEMA TV、U-NEXT、TSUTAYA TV、Rakuten TV、FODなど、日本独自のアプリについてもしっかりとサポートしている。

 早速、Netflix、Amazon Prime Videoなどのネット動画を中心に、その実力を検証していくことにしよう。まずリモコンのダイレクトボタンで「Netflix」を選び、ユーザー選択後、デ・ニーロ×スコセッシによるギャング映画『アイリッシュマン』を検索してみたが、これが思いのほか反応が素早く、快適だ。

2020年11月に発表・発売された最新のTCL製4K液晶パネル搭載テレビ7機種は、すべてAndroid TV OSを搭載。NetflixやAmazon Prime Video、hulu、YouTube、DAZNなど多彩なネット動画サービスがシンプルに楽しめる。TCLは世界第2位の出荷台数(2019年実績)を誇る世界有数のテレビメーカーらしく、世界的な規模で展開されているネット動画サービスにはほぼ対応している。さらに、日本独自のサービス(ABEMAやU-NEXT、GYAO!、dTV、TVerなど)もしっかりと対応しているのが嬉しい。ハイビジョンテレビのS515(32/40インチ)の2機種も含めて、ネット動画再生に注力していることがうかがえる

リモコンの使い勝手が、テレビの使いやすさやネット動画鑑賞の快適さに直結する。リモコン下部に「Netflix」「hulu」「U-NEXT」「ABEMA」「YouTube」のダイレクトボタンを備えている。動作はきびきびしており、使いやすさも上々だ

 

 

 当然、Netflixの検索画面はどれも一緒だが、操作時の画面の反応、検索速度となると、デバイスによって各様。待ち時間が長く、イライラがつのるテレビも珍しくないが、このモデルではそうした不快さはなく、比較的素早く、スムーズに反応する。ネット動画鑑賞ではこの快適さはありがたい。

 HDR映像に関してはHDR10をはじめ、HLG、ドルビービジョンに対応。テレビ内蔵アプリのNetflix再生でも、HDMI経由でのUHDブルーレイ再生でも、ドルビービジョン作品が楽しめるというわけだ。

 

フィルムならではの色をしっかり再現。深く豊かな発色は見応え充分だ

 『アイリッシュマン』の再生でまず感心させられるのが、フィルム映像に通じる深みのある色遣いと、歪みっぽさを感じさせない明瞭度の高いセリフだ。この作品はその多くをコダックの35mmフィルムで撮影されており、しかも時代の移り変わりとともに、色のトーンを微妙に変化させている。

 具体的には、50年代および60年代のシーンでは色濃く、細部までしっかりと乗せた深い色味が特徴的だが、70年代以降は、時間の経過に従って徐々に控えめな色調に変化して、フィルムの粒子感が際立つような画調へと変わってくる。

 特に65C815が持ち味を発揮したのは前者、50~60年代のシーンでの絵柄だ。ハイコントラストな画調をベースに、そこに深い色がしっかりとしみ込むような再現性で、特に赤、グリーンの豊かな表現力には目を見張るものがある。

 これには、光を部分的に遮ることで画像を再現(減法混色)するというフィルム上映と液晶テレビの共通性に加えて、QLED液晶ならではの豊かな色彩表現が少なからず関係しているように思う。

 時折、ハイライトの飛び、あるいは赤、グリーンのオーバーな表現が気になるシーンもあったが、深みのある豊かな発色は見応え充分。なかなかここまで、フィルムルックの重みのある画調を楽しませてくれる家庭用テレビは少ない。

 

テレビ内蔵スピーカーとしてハイレベルなサウンドを実現

65C815は、画面下部にサウンドバースタイルの音響システムを搭載。背面のウーファーと合わせて、スリムボディでも迫力のサウンド再生を目指す。映画館でも使われている立体音場技術「ドルビーアトモス」にも対応し、包まれるようなサラウンド再生も可能だ

 

 

 そして前向きのサウンドバーを備えたオーディオシステムもなかなか立派だ。写真でも画面下に顔をのぞかせているサウンドバーが確認できるが、本体背面にはサブウーファーが組み込まれ、50Wの高出力をアンプで駆動する。昨今、ネット配信動画でも増えているドルビーアトモスにも対応済だ(本体内蔵のNetflixアプリによる再生は、ライセンス認証の関係で非対応)。

 その音づくりは必要以上に空間の広さを求めず、人の声を歪みなく、クリアーに再現するという正攻法の仕上がり。ロバート・デ・ニーロの声も胸板の厚みを感じさせ、しかもこもることなく、明瞭度が高い。テレビ内蔵のスピーカーとしてはそうとうレベルが高いと感じた。

 65C815はBS4Kチューナーは搭載していないが、これもネット配信動画を中心に楽しみたいというユーザーにとっては、そう大きなハンディにはならないだろう。65インチのQLED液晶、サブウーファー付きのサウンドバー、そしてAndroid TV OS、その内容からしてこの価格は実に魅力的だ。

 

QLED液晶+BS4Kチューナー搭載。
ドルビービジョン&アトモスにも対応
65Q815
オープン価格(実勢価格15万円前後)
QLED液晶パネル+BS4K/CS4Kチューナー搭載の新製品で、55インチモデル(実勢12万円前後)もあり。映像のメリハリを向上させるLEDバックライトの「ローカルディミング」を採用し、ネット動画再生のパフォーマンスの向上を目指す。Android TV OS搭載で、テレビをWi-FiかLANケーブルでインターネットにつなぎ、直接ネット動画が楽しめる。ドルビービジョン、ドルビーアトモス対応。

 

Android TV OS、ドルビービジョン対応の
55インチ薄型液晶テレビが8万円と破格!
55P815
オープン価格(実勢価格8万円前後)
QLED液晶パネルは搭載されていないが、BS4K/C S4Kチューナー搭載したTCLの新製品シリーズが、P815/P815Bシリーズ。Android TV OS搭載かつドルビービジョン、アトモス対応の4Kテレビの55インチが8万円前後、50インチが7万円前後、43インチが6万円前後と、手頃なプライスが魅力的だ。ネット動画対応4Kテレビのエントリー用途に最適だ

 

シンプルにネット動画を楽しむなら最適。
Android TV OS搭載のハイビジョンモデル
40S515
オープン価格(実勢価格3万4000円前後)
Android TV OSを搭載し、シンプルにネット動画を楽しむ向きに最適なハイビジョンテレビとしておすすめしたいのが、S515シリーズの2モデル。フルハイビジョン液晶パネル搭載の40インチモデルが3.4万円前後、ワイドXGA(1366×768画素)パネル搭載の32インチモデルが2.7万円前後と、機能を考えると格安といっていいだろう。USB接続の別売り外付HDDへの放送録画も可能だ