春日無線変圧器 KA47SE ¥85,000
●定格出力:2.2W+2.2W(8Ω)
●入力端子:LINE1系統(RCAアンバランス)
●入力インピーダンス:100kΩ●スピーカー出力端子:8Ω
●使用真空管:ECL805/6GV8(Ei Elites)×2
●寸法/重量:W250×H140×D180mm/約4kg
●備考:キット仕様(¥55,000)あり
●問合せ先:春日無線変圧器

 3極5極複合管ECL805(6GV8)を起用したシングル出力アンプ。既発のKA24SEGを改良したとのこと。

 この複合管の3極管部は増幅率50の高ミュー管。出力用の5極管部は100V台の低い電圧での使用も想定した低電圧大電流型だ。つまり内部抵抗が低いのであり、ラジオやテレビ用に使いやすい設計になっている。

 コンデンサー結合の2段アンプであり、出力端から初段へ全体トータルNFBを掛けている。電源の整流は半導体ダイオードによるブリッジ整流。いたって簡素な設計だが、出力トランスの巻線を1次、2次側ともに逆接続しているのがユニークだ。つまり1次巻線の高電圧側端子をプレートに、プレート側端子を電源側に接続。2次側のスピーカー端子も8Ω端子をアースに、0Ω端子を+側にしている。UL接続のタップを1次全体の1/4から3/4位置に変えて、局部帰還をより深く掛けようというねらいだろう。

 小出力でトータルNFBを掛けているアンプらしく、明るいトーンで中高域の主たる情報が明敏に飛び出してくる。音場の立体的構築感が明瞭なのはシンプルな回路構成の効果だろう。ジャズ系の押し出しのいい音、ポップス系の張りのある声が輪郭明瞭でフレーズがしっかり弧を描くなど、相性を感じる。より簡素でシンプルなスピーカーだと、さらに土台から積み上げる帯域バランスになり小気味よい小世界が得られるだろう。

フロントビュー。本機ではシャーシに新型サンドイッチタイプの250mm幅のものを採用。天板は2mm厚のアルミヘアーライン材で、出力トランスをファインメット・コアの同社KAF1280に変更する際の取り付け孔が設けられている。

トランスはフロント側に電源トランスKmB805を配し、後列はオリエントコアの出力トランスKA1280(左、中央)、チョークコイルKAC5120(右)。いずれも同社のオリジナル

底板を開けた内部。プリント基板を使わずリード線による配線を行なう。シャーシは鉄製で、焼き付け塗装加工を施す。

出力管は3極5極複合管ECL805/6GV8。東欧のEi社で生産されたもので6.3V/0.86A規格。3極部のμは50、5極部のプレート損失は9W。

試聴する吉田氏。KA47SEは出力2.2Wのため、試聴には感度の高いフォステクスFE208NS(BK208NS)+T96A(162頁参照)を使用した。

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