おっさんになってしまった、かつて夢に溢れていた元映画研究会の仲間たちが、昔の恋を成就するべく爆走するコメディ作『ヤウンペを探せ!』が、いよいよ11月20日(金)より公開される。映画、ドラマ、舞台の第一線で活躍する芸達者たちが思う存分暴れまくり、捧腹絶倒のスラップスティック・コメディに仕上がった。そんな中で、往年のマドンナと対を成す、現在のヒロイン役を演じるのは、元NMB48メンバーであり、現在は釣女としても活躍している門脇佳奈子だ。メインキャストに引けを取らない存在感を発揮した彼女にインタビューした。

――出演おめでとうございます。今回、「ヤウンペを探せ!」に出演されての感想をまず、お願いします。
 お話をいただいた時はもう、とにかく豪華すぎるキャストの皆さんが揃っていたので、そんな中に私が入っていいのかと、不安になりました。でも、私の演じた山本冴子はとっても破天荒な女の子でしたから、はちゃめちゃに面白いコメディに仕上がった本作には、合っているんじゃないかって感じました。

――メインキャストの4人は本当に豪華な顔ぶれです。
 子供のころから画面越しに見ていた方々なので、共演できてうれしかったです。中でも宮川(大輔)さんは出演されているバラエティ番組をずっと拝見してきましたから、現場ではテンション上がっちゃいました! なんか、私がテレビというか、映画の中に入ったような感覚になりました。

――現場ではどう過ごされたのでしょう?
 4人とご一緒するのはワンシーンしかありませんでしたので、皆さんとは休憩時間に少しお話をするという感じでした。宮川さんはプライベートで釣りをされるそうなので、私も釣りが好きなんです! というお話をさせていただきました。松尾(諭)さんと池田(鉄洋)さんは、たぶん私がガチガチに緊張しているように見えたのでしょう、気遣って話しかけてきてくれました。一番共演シーンの多かった池内(博之)さんには、撮影前にお菓子をいただきました(笑)。朝、池内さん演じるキンヤの部屋で会話するシーンが最初の撮影だったのですが、(私が)緊張しているように見えたのか、“どうぞ”って(お菓子を)手渡してくれました。美味しかったです。本当に、現場では皆さんにたくさん助けていただきました。

――映画出演ということで、お芝居はいかがでしたか?
 芝居の経験はあまりなかったので、映画に対してのハードルは高かったですね。ただ、コメディ作であったことで、NMB48メンバーだった時代に経験したアドリブへの耐性が活かせたんじゃないかなって思います。やりやすいというか、溶け込みやすかったと感じています。これがコメディではなくてシリアスな作品だったらもう、ガチガチに緊張してしまって、うまくできなかったかもしれません。

――48グループ出身ですから、元々アドリブには強いのでは?
 いやいやもう、当時は本当に行き当たりバッタリで、大変でした。ただ、NMB48はよしもとですから、ほかのアイドルさんに比べたらアドリブの経験は多くて、そこで鍛えられてきた部分があったからこそ、今回の作品に活かすことができたのかな、とは思いましたね。

――少しネタバレしてしまいますが、劇中にはいくつかドッキリがありました。
 そうなんですよ、幸い私にはそういうハプニング的なものはなかったので、助かりました。ただ、後半の榊(英雄)さんとのシーンがほぼアドリブだったのは、とにかく大変でした。

――そうなんですか! それ(アドリブ)はすぐにできるものですか?
 榊さんや池内さんのセリフ(アドリブ)に、うわって驚いて、一瞬どう返そうかと頭の中でグルグル考えるんですけど、やはり最初に思い浮かんだものが、その後どれだけ考えて出てきたものよりもいい、という経験がNMB48の時にあったので、とにかく一番に思い浮かんだものを、それも間を開けないようにやりました。瞬発力とか勢いよくやりきるというのは、NMB48時代に学んだことなので、大事にしています。

――するとそのシーンは、最初から台本がないのですか?
 そうなんですよ(笑)。本当に怖かったです。でも、結果的にすごく楽しい現場になりました。きっと榊さんや池内さんが、私がアドリブ対応しやすいような空気作りをしてくださったからだと、感謝しています。

 本当に、ここまでアドリブの多い映画も珍しいんじゃないか、っていうぐらい多かったんですよ。映画の着地点(結末)こそ決まっていましたけど、撮っている間はどんな映画になるのか想像もつかないぐらいでした。とにかく、アドリブとコメディと勢いと、メインキャストのみなさんが発する素晴らしい部分が全部詰まった映画になったのかなって、試写を観て思いました。

――お芝居への自信はつきましたか?
 自信というよりも、コメディ映画の楽しさの、その核の部分を見た気がしましたし、現場でそれを経験できたことが、大きな財産になったなと思います。映画は好きで、コメディ作もたくさん観てきて、それがどのように作られているのかとか、どこまでがセリフでどこまでがアドリブなのか、なーんて考えて観ることもありましたが、本作ではこんなにも台本通りにいかないのか! ということを体験しましたので、映画が完結したこと自体が奇跡だって思っています。

――そこは監督の手腕ですね。
 頭の中がどうなっているんだろうって思いました。メインキャストの方々がいろんな方向に突き抜けているのに、それを見事にまとめているし、しかも映画を観てくださる方々を飽きさせないような展開で、最後まで引き付けるようになっているな、と。本当にすごい方なんだなって改めて思いました。私も、この作品では心から楽しんで演技をさせていただきましたので、たくさんの方に観ていただきたいです。

――さて、今回演じられた山本冴子の役づくりについてお聞かせください。
 設定については監督とお話をして、最初に大まかなものを決めました。まず、家を持っていなくて、キャリーケース一つでいろいろな男の人の家を転々と泊まり歩いている、と。こうして設定を決めてみると、私にはそうした経験もないし、知り合いに似た人もいないけれど(笑)、とっても(冴子を)理解できて! 自分の中で役を消化しやすくなりました。そこから次は、空想というか妄想を広げていって、冴子ならこうするだろうなって自分の中で役を膨らませていきました。たとえば、同じ男の人の家には1週間は泊まらずに、長くても3日ぐらいだろうとか。そうした妄想と、現場でのアドリブによって、最終的に作品の中にいる冴子像が完成したのかなって思っています。

――すると、冴子の登場シーン(メインキャストが集まる飲み屋)は、次の獲物を物色中だったと。
 そうですね。昨晩泊まった人とはおさらばして、今日はどこで寝ようかなって(笑)。

――そこでなぜキンヤ(池内)を選んだのでしょう?
 それは、一番目があったからですよ。冴子にしたら、この人に決~まりっていう感じでしょう。自分からキンヤを落とそうとしなくても、向こうから見てきて、(私に)落ちちゃったから決めたということですよね。

――翌朝、普通にキンヤの部屋にいました(笑)。
 常習犯ですから(笑)。いままでそうした生活を送ってきたので、その時のセリフに冴子のすべてが全部詰まっていると思います。まあ、そうしたことができちゃうのが冴子、と言えるのかもしれませんけど。

――ところで、本作にはいろいろなジンクス的なものが描かれていますが、門脇さんにとってのジンクスはありますか?
 ジンクスとは少し違うかもしれませんけど、一つあります。釣りのお仕事の前日に、必ず釣りをしている夢を見るんです。釣りの撮影って、釣れないと仕事にならないじゃないですか。だから、前日はすごく緊張しているですけど、そんな時に大漁の夢を見ると、翌日はさっぱり釣れないんです。百発百中なんですよ。そこそこ釣れたとか、釣れなかったという夢ならば、本番でもそこそこ釣れるんですけど。ジンクスというより、もう呪いでしょうか(笑)。

――夢にまで出るとは、だいぶ追い詰められていますね。
 釣り自体は大好きなんですけど、お仕事となると、本当に緊張してしまって……。これからは気持ちを強く持って、夢の結果を吹き飛ばすように頑張ります。

――ところで釣りを始めたきっかけは?
 子供のころは毎年夏に、父の実家に帰省していて、ちょうど近くに海と川があったので、釣りには適した立地だったんです。ある時、父が釣りをしているのを見て、私もやりたいなと思ったのがきっかけでした。そうしたら、ある時大きなボラが釣れたんです。それがとてもうれしくて、釣りがもっと好きになりました。それ以降は毎年、帰省の度に釣りをするようになりました。それがいつの間にかお仕事にもなって、有り難いことです。

――今後釣ってみたい魚は?
 今年はヒラメを狙っているんです。めちゃくちゃ大きいヒラメを座布団と言うんですけど、座布団級のヒラメを釣ってみたいです。

――釣ったらお父さんにも。
 実は父は生の魚が食べられないんですよ。食べられないのに釣りが趣味って不思議ですよね。だから、いつも釣果は母と妹と私で食べているんです。

――では、最後に門脇さんのおススメのシーンをお願いします。
 メインキャスト4人で画面を4分割するシーンが何回か出てくるんですけど、そこです! それぞれの画面の中の情報量が多すぎて、一回観ただけでは把握できないと思うので、何回も観ていただきたいです。その都度、今回はここを観る、という感じで画面を一つに絞っていただくと、必ず新たな発見があるはずです(笑)。4人の生活感とかも感じられます。とにかく何度観ても飽きないので、何回も劇場に足をお運びいただいて、画面の隅々までチェックしてみてください。よろしくお願いします。

映画『ヤウンペを探せ!』

11月20日(金)よりシネリーブル池袋ほか全国順次公開!

<キャスト>
池内博之 宮川大輔 松尾諭 池田鉄洋 蓮佛美沙子
赤楚衛二 門脇佳奈子 松村利史 栗原類 川畑和雄 渡部陽一 ソンモ 永嶋柊吾 ついひじ杏奈 大江駿輔 ほか

<スタッフ>
監督:宮脇亮 脚本:髙石明彦、渋谷未来
制作プロダクション:The icon 制作:吉本興業、読売テレビ 配給:吉本興業 製作:「ヤウンペを探せ!」製作委員会 2019/日本/カラー/ビスタ/86分
(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

公式サイト https://yaunpe.official-movie.com/
門脇佳奈子 http://showtitle.co.jp/content/KadowakiKanako.php