今冬の各社注目製品

残念ながら2020年度の開催が中止となった「東京インターナショナルオーディオショウ」。
しかしながら、今年も各社から魅力的な製品の数々がリリース予定。そこで、Stereo Sound 217号(12月10日発売)では、楽しみにしていたオーディオファイルの方々に向け、「誌上TIAS2020」と題して、メーカー/輸入商社ごとに各社の《この冬の注目製品》をご紹介する特集企画を用意。今回は誌面に先立ち、WEB上でその内容を一部、先行公開する。

日本音響エンジニアリング株式会社編

 

 

新たに吸音機構を持たせ、定在波対策に効果を発揮する柱状拡散吸音体

 日本音響エンジニアリングから、AGSの新製品「Hybrid ANKH」が発表された。商品企画を担当された同社音空間事業本部の根木健太氏に訊いた、この“柱状音響拡散吸音体”の特徴と、それによってもたらされる室内音響効果についてお伝えする。

高音域の過剰は吸音を抑える設計

 その前にまず、従来の柱状音響拡散体「ANKH」について説明しておこう。

 従来のANKHは、同社独自の音響シミュレーションによって定められた形状/配列/素材による複数の棒が立ち並ぶ「柱の集合体」。ここを通過する音がランダムに拡散することで、「ヌケのよい音」や「緻密な響き」がもたらされるという。元々は森の音響効果を室内で再現しようと開発されたもので、ブランド名「AGS」のGはGrove=「小さな森、木立」を意味する。

 では、今回発表されたHybrid ANKHは、ANKHとは何が違うのか。

 「ANKHが拡散効果だけだったのに対し、Hybrid ANKHではそれに加えて、内部に吸音機能も持つスペースを設けています」

 吸音することで音が痩せるのを避け、活き活きとしたナチュラルな響きをもたらすのが、ANKH最大の特徴である。なのに何故、吸音効果を持たせたのか。

 「吸音機能を加えることで、部屋の定在波による音のピーク・ディップや、低音の過剰な響きや籠り現象、いわゆるブーミングの改善効果を従来機以上に発揮させることができるようになったのです」

 具体的には、どのあたりの周波数帯域の吸音効果があるのだろうか。
 
 「吸音率のデータ上は、コーナー型単体で250から1,000Hzまで、フラット型単体で500から2,000Hzあたりまでがもっとも吸音するようになっていて、それより高い帯域はなるべく吸音しない設計にしています。そのため、低音を処理しながら、吸音特有の高域の音詰まりをなくすことができました」

 最後に、Hybrid ANKHの具体的な使用例について訊いてみた。

 「中低域の響きが多いお部屋では、まずスピーカー側の壁の両角にコーナー型を置いてみて、定在波に対する効果をご確認いただくのが良いと思います。ANKHと併用していただければ、部屋の音響特性にきめ細かく対応でき、さらなる改善効果が得られるでしょう」

 AGS製品は全国の取扱い販売店を通じてデモ機を自宅で試すことも可能のようだ。その音響改善効果をご自身の耳で確認されたい。

 

柱状音響拡散吸音体
AGS(Acoustic Grove System)
Hybrid ANKH-Ⅰ ST-Hy15(フラット型) ¥350,000・税別

 

柱状音響拡散吸音体
AGS(Acoustic Grove System)
Hybrid ANKH-Ⅱ CO-Hy15(コーナー型) ¥400,000・税別

ともに2020年11月末発売

 

 

 

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