「小岩井ことりと山本浩司のオーディオ研究所」第6回となる今回は、ラックからスタンドへスピーカーを載せ替え、細かなセッティングを試みます。
さらに小型スピーカーを数機種集め、小岩井さんに様々な小型スピーカーを聴いていただきました(編集部)

ラックからスタンドに載せ替えてみます

山本 では、後編ではOBERON1をラックの両サイドに置いたスピーカースタンドに載せた音を聴いてもらいます。使うスタンドは、のちほど聴いてもらうQアコースティクス製スピーカーの専用スタンドです。ことりちゃんが座った状態の耳の高さとスタンドに載ったOBERON1のトゥイーター位置がだいたい一致した状態。いま実測したところ、L/Rスピーカーの距離は芯々で約207センチ。リスニングポイントからL/Rスピーカーそれぞれの距離も207 センチになるように椅子の位置も変更しました。試聴位置とL/Rスピーカーの場所が正三角形になるようにセッティングしたわけです。

まずスピーカーを正面に向けた状態で聴いてもらいます。

スピーカーをラックからスタンドへ載せ替え、正面向きに設置してみた。

小岩井 スピーカーとの距離が離れた分、音圧感が下がりましたけど、そこはM-CR601のボリュウム操作で調整してくださいました。やはり、こうやって聴くと落ち着きますね。音場感が雄大で、ヴォーカルもピンポイントで定位する感じで。小型スピーカーに専用スタンドが用意されている意味がよくわかりました。

山本 これがほぼベストなセッティングだと思います。幅と高さと奥行のあるサウンドステージが出現した感じ。

小岩井 そうですね、奥行感については、最初に聴いたミニコンポ・セッティングがいちばんよかったかも? と感じていたのですが、スタンドに載せたこのセッティングだと幅も奥行も両方感じやすいです。

山本 じゃあ最後にスタンドごとスピーカーを少し内振りにしてみます。ことりちゃんの座った位置からスピーカーキャビネットの両側面が見えないくらいの内振りです。

スタンドを試聴者(小岩井さん)方面へ内向きに向けた。

小岩井 わたしは今までのなかでこの音がいちばん好きです。音場感の豊かさはしっかりとキープされながら、中低音に厚みが感じられて。ヴォーカルも浸透力がある感じです。

山本 あくまでもこのOBERON1というスピーカーのケースですが、このやや内振りセッティングが音のバランスがいいというか座りのいい音というか、いちばん好ましかったですね。

小岩井 正面向きに置いたほうがよいというスピーカーもあるんですか。

山本 うん、あるよ。少しでもいい音が聴きたかったら、こうやってミリ単位の調整をするのが、オーディオの楽しみでもあるんです。

小岩井 先生!L/Rスピーカーとリスニングポイントを正三角で結ぶ意味はよくわかりましたが、スピーカーを2メートル強も広げるのは無理という狭い部屋にオーディオを置いている人が多いと思うんです。もっと近づけてはいけませんか。

山本 なるほど、それはもっとも意見ですね。やってみましょう。OBERON1をスタンドごとラックの前に出して、L/Rスピーカー間の距離を約130センチに、リスニングポイントもそれにL/Rそれぞれ130センチになるように椅子を動かしました。

スタンドを内向きにしたまま、試聴者へ近づけた。

山本 スピーカーに近づいた分、音量を下げて聴いてもらいましたが、いかがでしたか。

小岩井 すごく面白かったです。音楽の細部がよりわかるというか、精緻な絵画にうんと近づいて観ているようなイメージ。

山本 なるほど絵にたとえるのは、とてもいいね。

小岩井 離れて聴いたほうがゆったり聴けますけど……。

山本 それからスピーカーに近づけば近づくほど音量を下げられるのも、音漏れが心配な一般家庭にとって大きなメリットだと思うよ。それから、この近接試聴で内振りと正面向きセッティングを比較してみたけど、どちらがよかった?

小岩井 この状態だと、わたしは正面向きがよかったです。内振りは音が強すぎるというか、圧迫感がありました。

山本 わかる。聴取距離に合わせてスピーカーの向きを変えたりするのも重要なポイントかもね。それから最後に試聴室の照明を落として、薄暗い状態で聴いてもらいましたが、いかがでしたか。

小岩井 あ、とてもよかったです。よりリラックスして聴ける感じで。

山本 そう、音楽を聴くうえでこういう環境演出も大事なんだよね。気持を込めて音楽を聴きたいときは、ぜひ照度を落として白熱光の間接照明かなんかでリスニングルームを演出してもらいたいと思います。その方が絶対音がよく感じられるはずなんだよ。蛍光灯が煌々と光っている部屋で音楽を聴いても落ち着かないからね。蛍光灯の一灯全体照明は、あくまで仕事をする職場照明だから。

小岩井 そんなこと考えたこともなかったです。なるほどリスニングルームの照明か。これも大きなテーマですね。

山本 ということで、長時間にわたってことりちゃんにスピーカー・セッティング講座を受講してもらいましたが、全体の感想をしゃべってもらおうかな。いかがでしたか?

小岩井 こんなにセッティングによって音が変わることに驚きました。先生に「ステレオイメージ」とか「サウンドステージ」という概念を教えてもらっていたので、音の変化がよくわかったのかもしれないけれど。

山本 そう、音を聴くコツはたしかにあって、それがわかるようになるとオーディオは一段と楽しくなるんです。それから、こうやって聴き比べていくうちに、耳が敏感になっていくっていうか、聴感覚がどんどん開かれていくんだよね。小さな変化にヴィヴィッドに反応できるようになるんだよ。

小岩井 そうか、面白いです。オーディオがますます好きになりました。今日聴いたシステムはネットワークCDレシーバーとスピーカー合わせて約12万円ですよね。これくらいの値段の組合せでも、こんなふうにいい音に仕上げていく楽しさが味わえることが今日いちばんの収穫でした。「オーディオは高すぎる!」、「そんなに音出せないよ!」と思い込んで部屋の中でもヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴いている人たちに教えてあげたいです、スピーカー・リスニングの面白さを。

山本 この記事がそんなふうに機能するといいね(涙)

もう一度最後にスピーカー・セッティングの基本として、

①スピーカーはなるべく離して置く。
②スピーカーはシンメトリーを意識して置く。
③L/Rスピーカーと等距離の場所をリスニング・ポイントにする。
④高音用トゥイーターの位置を耳の高さに合わせる。
⑤片チャンネル逆相接続は絶対に避ける。
⑥L/Rスピーカーを結んだ線を底辺とする正三角形の頂点をリスニングポイントにするのが理想。
⑦聴取距離に合わせてスピーカーの向き(角度)を微調整する……。

ま、こんなところかな。

小岩井 音楽制作を行なっている立場から言うと、スピーカーを正しくセッティングしてからEQやリヴァーブの設定をしなきゃ!と今日は痛感しました。いい加減な再生環境でミックスしちゃいけないなって。

山本 そこはぜひお願いします。

小岩井 今日も勉強になりました。人生の宝をいただいた気分です。

山本先生の解説に耳を傾ける小岩井さん。

様々な小型スピーカーを聴いてみよう!

山本 さて、今日はダリのOBERON1の他にスピーカーを2モデル用意してもらいました。ここからはOBERON1試聴で最後に使ったスピーカー・スタンドにそれぞれのスピーカーを載せて聴き比べてみましょうか。試聴曲はことりちゃんが選んでください。

小岩井 はい。どうしようかな、コレはどうでしょう。わたしを含め4人の声優がミュージカル風に歌った「昏き星、遠い月」です。

「昏き星、遠い月」 アルバム『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 05 夜想令嬢 -GRAC&E NOCTURNE』より

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

山本 聴いてみましょう。これはハイレゾファイル?

小岩井 はい、96kHz/24ビット音源です。

山本 じゃあ英国KEFのQ150というスピーカーを聴いてもらいます。値段はOBERON1とまったく同じ。ペア5万7000円です。

小岩井 あ、同軸型だ~

山本 そう、KEFはこの形態をUni-Q(ユニキュー)って呼んでいます。中低域ドライバーの中心にトゥイーターをビルトインしています。これを同軸型と呼ぶわけですが、ことりちゃん、さすがだね。パッと見て同軸型! なんて。

小岩井 いやいやそんな(笑)。普段使っているジェネレックが最近推しているモデルが同軸型なんで、知ってました。

山本 KEFって設立されて50年ほど経つ老舗のスピーカーメーカーなんですが、ちょっと面白い会社で、この5万7000円のQ150から2200万円のMuon(ミューオン)というスピーカーまですべて、このUni-Qドライバーを使っているんですよ。自分たちの信じた技術資産を信じて1点突破、垂直展開するという頑固さ、一徹さがイギリス人ぽいなって思うんだ。

小岩井 ひえ~、2200万円のスピーカーがあるんですか、一度聴いてみたいです。

山本 すばらしい音がするのはたしかですが、今日は5万7000円(笑)。

試聴中・・・

山本 ダリのOBERON1と比較してどうでしたか。

小岩井 はい、ダリのほうがなめらかな音だったんですけど、KEFはよりワイドレンジに聞こえました。高い方の音がよく伸びているというか……。

山本 そうか。

小岩井 それでKEFのほうが歌い手の息づかいが感じやすかったなと思いました。

山本 なるほど。ぼくにはKEFの音はすこし荒っぽく聞こえたな。

小岩井 たしかに。ダリのほうが音がスムーズでナチュラルな感じはしました。KEFはパワフルな感じがします。アタックが強い感じで。

山本 ステレオフォニックな音の広がりはがどちらがよかったですか?

小岩井 ああ、悩ましいです。ダリのほうがよかったかな。KEFは音に一体感があるんですけど。

山本 わかる。KEFは凝縮された音像描写に、ダリは爽やかな広がり感に魅力があるよね。

小岩井 ダリのほうがセッティングに敏感なスピーカーかもしれないって思いました。KEFはどう置いてもダリほど音が変わらない気がする。

山本 あ、それは正しい認識かもしれない。オッケー。それじゃあ最後にもう1機種。KEFと同じイギリスのメーカーのスピーカー、Qアコースティックスの3020iというスピーカーで、なんとペアで2万9000円!

小岩井 ほんとですか、安い!

Qアコースティックスを持つ小岩井さん。白いカラーとマグネットキャッチのサランネットがおしゃれ

Qアコースティックス 3020i
¥29,000(ペア)+税

詳細はこちら

山本 12.5センチ・ウーファーを積んだ2ウェイ機で、ダリ、KEFのほぼ半額です。いま使っているスピーカー・スタンドはこのQアコースティクス製になります。これが1万9000円。

小岩井 スピーカーの値段を聞くと、このスタンドの値段が高く感じますね。でも、家具やラックの上に置くよりもスタンドに載せたほうが音がよいことが今日はわかったから……。

山本 はい、なのでスタンドに載せた状態で聴いてもらいます。スピーカー、スタンドともにホワイト仕上げで、統一感があって見た目も美しいです。

小岩井 ゲーミング・パソコンの両脇に置いたら映えそう。

山本 あ、なるほど。

(試聴中・・・)

山本 いかがでしたか?

小岩井 うわ~、予想以上によかったです。2万円代のスピーカーでこんなステレオ体験ができるなんて、ちょっとビックリしました。

山本 ほんとうにその通りだね。

小岩井 でも、安いからといって、いい加減な置き方で使ってほしくないですね。うちの実家みたいにスピーカーをピッタリくっつけたミニコンポ・セッティングだと、この広々としたサウンドステージは感じ取れないと思います。

山本 あらら、ぼくの言いたいことを先に言われちゃったな(笑)。

小岩井 細かなことを言うと、ダリ、KEFに比べると、包み込まれるような低音が少なめかなって思いました。

山本 そこに値段相応の違いがあるね。

小岩井 はい、そう思います。

山本 先ほど実験した130センチ正三角形の近接試聴により相応しいスピーカーかもしれない。近づくことで音量を上げなくても低音の量感を感じやすいはずだから。

小岩井 そう考えると、ますます狭小空間にお住まいの独り暮らしの若い人にピッタリかもしれません。

山本 じゃあことりちゃん、この3つのスピーカーで好きなの持って帰っていいよって言われたらどれにする?

小岩井 うわ~悩むぅ~。

山本 ウソだけどね(笑)。

小岩井 ダメですよ、持って帰ります(笑)。ダリとKEF、個性がまったく違っていて、どちらもよかったので両方持って帰ります(笑)。

山本 あ、そうきたか(笑)。懐があまり痛まない5万円台のスピーカーだから、両方買って聴きたい音楽に合わせてスピーカーを取り替えるというのはどう? 今日はKEFの日とか、気分で。

小岩井 ロックはKEF、アコースティックな音楽はダリとか?

山本 そうそう。そういう使い方もあるよ。ヘッドフォン・マニアも曲に合わせて使い分けるっていうものね。

小岩井 そうですよ。この2つのスピーカーだったらあまり重くないし、一人で持ち上げられるし。

山本 はい、2モデルお買い上げかな!?

小岩井 あれ?先生持って帰っていいって言ったのに……。

ダリ、KEF、Qアコースティックス、そしてマランツのCDレシーバーと記念撮影。