伊藤沙莉が主人公ビッケの吹替え声優を務める映画『小さなバイキング ビッケ』が公開中。『小さなバイキング ビッケ』は、スウェーデンの作家ルーネル・ヨンソンの児童文学「小さなバイキング」シリーズが原作。半世紀にわたり世界130カ国以上で愛され、1972~74年には日独共同制作のテレビアニメが日本で最高視聴率20.5%を記録するなど話題を呼んだ。また、尾田栄一郎氏の国民的人気漫画「ONE PIECE」のモチーフになったことでも知られている。本作で初めて男の子の役に挑戦した伊藤。本作の撮影秘話を語った。

――これまでにも声のお仕事はされていますが、主人公の男の子、ビッケのアフレコはいかがでしたか?

 声のお仕事は緊張もしますし、足を引っ張ってはいけないという感情もありますが、それ以上に今回は楽しくできました。バイキングの族長でもあるお父さんのハルバル(三宅健太)と、親友の女の子イルビ(和多田美咲)と一緒にアフレコができました。ちょっと私がワガママを言わせていただいて。絡みの多い方と一緒にアフレコができたら心強いなと思ってお願いしたんです。このご時世なので、仕切りがある状態ではありましたが、ひとりきりで録るのとは全然違いました。

――違うものですか。

 違いますね。気持ちの乗っかり方が全然違います。ビッケの興奮状態や、ワクワクした感じとか。やっぱり実際に掛け合いをするからこそ生まれるテンションがあるので。だからご一緒させていただけたのは大きいです。それにプロの声優さんとご一緒させていだだくと、テンションごと引っ張ってくださるんですよね。どうしても私は普段、リアリティよりのお芝居が多いので、やりすぎなくらいの大きなテンションでやるためには、人に引っ張っていただくのが一番早いんです。本当に有難かったです。

――よく覚えているのはどんなシーンですか?

 最後のほうで、お父さんとふたりで雪の中を滑っている場面があって、「ヒャッホー」「イエーイ」とずっと叫んでいるんです。あれはひとりでやってたら厳しかったですね。あとは「俺たちバイキング!」と掛け声をしているシーンも、イルビと一緒に参加させていただきました。最初は私たちも言うとは思っていなかったのですが、ふたりで一緒に言えたのでテンションも上げて出来てよかったです。

――ビッケに決まったときから、気持ちがわかるとお話されていました。実際にアフレコしてみてどういったメッセージをより受け取りましたか?

 やっぱり夢がありますよね。どうしても人って、決めつけられると反発するじゃないですか。私も、末っ子なので「沙莉にはまだできない」と、普段からよく言われているんです。いまだに。ビッケと同じように、何かで認めてほしいという承認欲求はやっぱりありますし、共感します。でもビッケはそれだけでは終わらなくて、体が小さくて力もないから、できないことも多いのですが、知恵があって、ビッケにしかできないことがある。ビッケは反発するのではなくて、「これが自分にはできないなら、ここでカバーすればいい」と考えられるんです。こんなにちっちゃいのに。それってすごくかっこいいですし、勇敢で、そういう姿を見られるのは、夢があるなと思います。

――ご家族からはいまだに末っ子扱いされるとのことですが、ここ最近の伊藤さんの活躍は本当にすごくて、一般的には評価も人気もうなぎのぼりです。末っ子として、「まだできない」と言われていた状態から、今現在の世間からの高い評価というのは、プレッシャーにはなりませんか?

 なりますよ。期待していただけるのであれば、それは裏切れないですし。期待以上のことができなければ、落ちていくと思います。そう考えるとすごく怖いです。私はあまのじゃくなので、「誉めてほしい!」と思いながら、誉められたら誉められたで、慣れていないので、どう対応していいのかわからなくなる。これから先、どうやっていこう。もっと上に行かないと!みたいなプレッシャーは確かにありますね。

――子役時代と比べて、仕事への取り組み方に変化はありますか?

 昔は言われたことだけをやってきましたが、今は自分でも意見を言わせていただくようになりました。自分の役だけじゃなく、作品に対しても深くかかわって、自分から行くようになりました。そこは変わったかなと思います。

――自分の役だけではなく、作品がよりよくなることを考える。

 はい。むしろ役よりも、作品がよくなることが一番です。結局作品のことを考えれば、役にも反映されますし。これからもそうやっていけたらと思います。

――周囲からの視線で変化したことはありますか?

 人の視界に入れてもらえるようになりました。

――え? 以前は入っていなかったという意味ですか??

 はい。同世代に華やかな子が多いこともあって、私はみんなの視界に入っていなかったんです。たとえば私と、もうひとり売れっ子の子が一緒にいたりしたら、やっぱりみんなその子を見て挨拶するんです。まあ、当然と言えば当然のことなんですけどね。今を時めいている子が隣にいたら。そうした時代も過ごしてきましたが、やっと今は人の視界に入れてもらえるようになりました。

 あと年齢を重ねたことで、対等にお話できるようになれたことも変化です。意見を言えるようになりました。でもそれも自分から言い始めたというよりは、聞いてもらえるようになったから、「あ、自分も言っていいんだな」というところから始まって、さっきお話した「自分ももっと作品に深くかかわっていきたい」という思いが生まれていったのかもしれません。もともと受動的なタイプで、自分から歩み寄ることができないタイプなんです。扉を開けてもらえるようになったからというのはありますね。

――でもその扉も、伊藤さんの活躍があったからこそ、開いたわけですよね。そして意見が言えるようになって。いい方向へ相乗効果が働いているんですね。仕事上だけでなく、一般の方からの視線も変化しているのでは? エゴサーチ歴が長いそうですが。

 ベテランです。エゴサーチは10歳からやっていますから。16年目です。芸歴と変わりませんね(笑)。

――最近では昔の掲示板などでの言葉だけでなく、SNSでやりとりもできます。一般の方の反応で、プラスに感じていることは?

 いい意見にしても悪い意見にしても、最近は、知っていてくれているというのがすごく有難いです。たとえば「嫌い」と書かれたとしても、そういう感情を抱いてくれてありがとうと思います。知られていないより嬉しい。なんなら「誰?」と書いてあったとしても、何かの記事を読んでくれたのかな、気に留めてくれたのね。ありがとうと思います。

――マイナスな意見に傷つくことは?

 もう傷つかないです。それに関してはもう鉄ですから。

――さすがベテランですね。最近、嬉しかった言葉は?

 「この人が出てると見ちゃう」と言われるのは嬉しいですね。目指していた部分でもあるので。たとえばビッケにしても、「伊藤沙莉がやるんだ。なら見てみようかな」とか、そういうご意見を見つけたときには、「いえーい!」と嬉しくなります(笑)。

――このところは、お芝居だけでなく、それこそ声が好きとか、かわいいと言った意見も増えているかと。

 あ、ありがとうございます……。優しいお耳と眼球の持ち主ですね。

――もうひとつ。ビッケはバイキングになる夢を持っています。最近の伊藤さんは「色んな伊藤沙莉を見て欲しい」と抱負を語られていますが、個人的なものでもいいので、なにか大きな夢を教えてください、

 とんでもなくデッカイ家を建てる。伊藤ビレッジを作る。

――伊藤ビレッジ!

 千葉に伊藤ビレッジ。野望ですね。

――そのためにはますます仕事にまい進しないといけませんね。

 はい。貯金貯金といった感じで、日々を過ごしております。うふ。

――最後に一言、公開に向けてメッセージをお願いします。

 お母さん世代は懐かしいでしょうし、再放送で観ている方も多いと聞いています。そうしたもともとビッケを知っている方々には懐かしいなとほっこりしてもらえると思いますし、お子様たちはビッケと一緒になってわくわくできると思います。すごく夢のあるお話ですし、映画らしくスケールも壮大です。乗り越える山も大きいですし、それぞれが面白いです。ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。
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 また、この度、北欧神話のオディンに、アイスランドの英雄レイフ・エリクソンまで数々の北欧ネタが登場する本編から、ソーとロキの兄弟ゲンカ新映像が到着しました。

映画『小さなバイキング ビッケ』

EJアニメシアター新宿ほか全国で公開中

<あらすじ>
ビッケは海賊の長ハルバルの息子。父ハルバルは元気な力持ちだが、どうも頭の回転が鈍く海賊長としては頼りない。そんな父とは正反対にビッケは小さくて力はないが、知恵は誰にも負けませんでした。ある日、ビッケの母イルバがハルバルたち海賊団の戦利品である「魔法の剣」の力で黄金に姿を変えられてしまいます。あわてたハルバルは案内役のレイフや船員たちと共に海賊船で、その剣の秘密を解く旅に出発!小さいからとおいてきぼりを食らったビッケはそっと樽に隠れ海賊船に乗り込みます。様々な困難に遭遇する旅を、ビッケの知恵と仲間の力で乗り越え、やがて辿り着いたのは謎の島。そこには天上界から人間界に追放された悪い神ロキが「魔法の剣」を目当てに待ち受けていました。果たしてビッケたちの運命とは――!?

監督:エリック・カズ/アニメーター:ティモ・ベルク 『SING/シング』『ペット』『怪盗グルーのミニオン大脱走』
原題:Vic the Viking and the Magic Sword/2019年/ドイツ、フランス、ベルギー/82分/英語/シネスコ
配給:イオンエンターテイメント、AMGエンタテインメント

出演:伊藤沙莉(ビッケ)、三宅健太(ハルバル)、前野智昭(レイフ)、和多田美咲(イルビ)、田坂浩樹(スベン)、前田雄(ウローブ)、鷲見昂大(ファクセ)、白井悠介(ゴルム)、神尾晋一郎(ウルメ)、長瀬ユウ(スノーレ)、坂田将吾(チューレ)、矢尾幸子(イルバ)、野津山幸宏(ソー)

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