マランツから、一体型AVセンターのフラッグシップモデル「SR8015」が発表された。価格は¥370,000(税別)で10月中旬の発売予定だ。

 SR8015は、11chパワーアンプを内蔵した現行モデル「SR8012」の後継機種で、価格は据え置き。しかしその内容は大きくグレードアップしていた。

「SR8015」のデザインは前モデル「SR8012」を踏襲する。カラーはブラックのみ

 まず機能面では、既発売のラインナップと同様に、8K/60pや4K/120p対応のHDMI入出力を搭載した(入力1系統/出力2系統)。さらに全HDMI入力が著作権保護技術のHDCP2.3に対応済みとなっている。

 対応信号としては、HDR10やHLG、ドルビービジョンに加えて、HDR10+やダイナミックHDRなどのハイ・ダイナミックレンジ規格が伝送可能。ALLM(オート・ロー・レイテンシー・モード)、VRR(バリアブル・リフレッシュ・レート)、QFT(クイック・フレーム・トランスポート)、QMS(クイック・メディア・スイッチング)といったゲームなどで使われる新機能にも対応を果たしている。

 音声フォーマットでは、ドルビーアトモス、DTS:X、AURO-3D、IMAXエンハンスドがデコードできる。なお後日のアップデートでDTS:X Proにも対応する予定だという。

背面端子部。8K/60p信号に対応した「HDMI7」端子は最上部右側にあり

 また4K/8K衛星放送で使われているMPEG-4 AACストリーム信号のデコードも可能で、その場合はデコードした5.1chにドルビーサラウンドやNural:X、AURO-3Dなどのアップミックス処理の掛け合わせもできる。放送やパッケージの音声をピュアに楽しむもよし、サラウンド機能を活かして迫力充分に楽しむもよし、SR8015ならユーザーの希望に応じた幅広い使い方ができるはずだ。

 スピーカー配置については、SR8015は13.2chのプロセッシングが可能で、外部パワーアンプを加えれば最大7.2.6や9.2.4システムを構築できる。ただし天井スピーカーについては、ドルビーアトモスや/DTS:X Pro向け(トップフロント、トップミドル、トップリア)か、AURO-3D/IAMXエンハンスド向け(ハイトフロント、ハイトセンター、トップサラウンド、ハイトサラウンド)のどちらかを選んでおくことになる。

 ちなみにドルビーアトモス/DTS:X Proの配置を選んだ場合、ディスクの収録方法によってはトップミドルから音が鳴らないケースもあるそうだ。こういったディスクの場合、DTS:X収録ならNural:Xを掛け合わせることで6本のスピーカーすべてから音を再生できるようになるとのことだ。

天井スピーカーを6本使ったイマーシブオーディオ再生用の配置は、図の左ふたつから選択可能

 もうひとつSR8015では、アンプアサイン、スピーカーコンフィグレーション、距離、レベルといったAudyssey Multi EQ XT3やグラフィックEQに関連したパラメーターを2種類記憶し、リモコンで簡単に切り替えられる「デュアル・スピーカープリセット」機能も搭載された。

 たとえば薄型テレビを使う場合と、スクリーンを降ろして映画を見る場合では、厳密にいえば音の反射特性は変わってくる。これは部屋のカーテンを閉めた場合も同様で、この機能を使ってプリセット値を切り替えるだけで、試聴環境等に応じた最適なモードを簡単に選択できるわけだ。

 その他の機能としてはHESテクノロジーを搭載済みで、Amazon Music HDやAWA、Spotifyなどのストリーミングサービスが再生可能(2chのみ)。インターネットラジオも楽しめる。ハイレゾ音源は最大192kHz/24ビットのリニアPCMとDSD 5.6MHzの再生ができる。

大型トランスを中央に配置。その両サイドに11枚のパワーアンプ基板が並んでいる

 さて肝心の音質だが、こちらも長足の進化を遂げている。

 プリアンプ部には、同社ハイファイアンプの手法を盛り込み、ワイドレンジ、ハイスピードな再生を実現する独自のHDAM-SA2を搭載した。新たに定電流回路も追加され、プリアンプ回路の歪みを大幅に低減している(SR8012比)。

 なおSR8015は「プリアンプモード」も備えている。これは、本機をAVプリとして使う場合にパワーアンプへの信号をカットするもので、従来はオン/オフによって回路内部の歪みに差があったという(オンの方が歪みが少ない)。しかしSR8015ではオン/オフによる差がほとんどなく、この点でもプリアンプ部のクォリティが高いことが確認できている。

 パワーアンプ部は独立基板型フルディスクリート回路を内蔵。出力は250W×11chで、全チャンネル同一クォリティとなっている。SR8012からは、新開発のフィルムコンデンサーを搭載し、金属皮膜抵抗を採用することで入力抵抗を3分の1まで低減、電解コンデンサーをELNA製RA2にするといった改良が加えられた。

同社ハイファイアンプでも使われている「HDAM-SA2」をプリアンプ部に採用

 もちろん電源部にも配慮しており、入念な試聴を経て厳選された大型トロイダルトランスやブロックコンデンサーが採用されている。トランスは非磁性体のアルミベースを介してシャーシにマウントしているそうだ。

 1mm厚の銅メッキシャーシ(本体底面)もポイントだろう。同社ハイファイコンポーネントの中級機以上ではよく使われているが、AVセンターでは最上位クラスにのみ採用されている特別な仕様となっている。

 なお各種サラウンドのデコード用にはアナログデバイセズの32ビット浮動小数点プロセッサー「SHARC」を2基搭載、チップ自体も前モデルから進化したバージョンが使われている。

 D/Aコンバーターは旭化成エレクトロニクスの8ch用チップ「AK4458VN」を、こちらも2基使い、32ビット処理による13.2ch音声を得ている。このD/A変換回路は専用基板にマウントすることで、映像回路やネットワーク回路との干渉を排除している。

サラウンド信号のデコードや音場補正などの処理は、ふたつのSHARCチップで行っている

 発表会で、SR8015の音を聴かせてもらった。

 まずCD(SA-12OSEによるアナログ2ch再生)でSR8012との違いを聴く。SR8012もクリアーで、高さ方向の制限製も備えた綺麗なステージを再現してくれる。これに対しSR8015では細かい情報が増え、弦楽器の細かな響きまで聴こえるようになったことで、音場が全体的に豊かになっている。S/Nも改善され、ヴォーカルのヌケがいい。UHDブルーレイによるドルビーアトモス7.1.4再生では、降りしきる酸性雨の描写が細やかで、建物の中の響き具合、低音の厚みがSR8015の方が際立っている。

 同社サウンドマネージャーの尾形好宣氏によると、AVセンターはその多機能性もあり、ハイファイ機器に比べるともっさりした印象を受けやすいという。SR8015ではそういったことのない、クリアーで立体感のあるサウンドが再現できるよう、総合的なチューニングを行ったそうだ。その言葉通り、マランツアンプらしいクリーンな音場はそのままに、いっそう緻密な音に包まれる、そんなサラウンドが再現されていた。

発表会では7.1.4環境でSR8015の音を体験できた