アマゾンFireタブレットの最新世代となる「Fire HD 8」シリーズが6月に発売された。今回の新生Fire HD 8はストレージの容量違いや、内蔵されるRAM等が異なる上位モデルの「Fire HD 8 PLUS」、キッズモデルなどの合計5モデルをラインナップしている。

Amazon Fire HD 8(32Gバイト) ¥9,980(税込)
Amazon Fire HD 8(64Gバイト) ¥11,980(税込)
Amazon Fire HD 8 PLUS(32Gバイト) ¥11,980(税込)
Amazon Fire HD 8 PLUS(64Gバイト) ¥13,980(税込)
Amazon Fire HD 8 キッズモデル(32Gバイト) ¥14,980(税込)

 今回、この中からFire HD 8 PLUSについて、音楽再生から動画視聴、ビジネス用途などいろいろなシーンで使いたおしてみた。その結果、Echo Showなどとも違う面白さ、魅力があったので紹介してみたい。

Fire HD 8 PLUSと別売のワイヤレス充電スタンド

 Fire HD 8 PLUSのスペック等は前回の記事(関連リンク参照)をご覧いただきたいが、従来モデルからの進化点としてはワイヤレス充電に対応していることが挙げられる。それを活かした別売ワイヤレス充電スタンドも準備されており、ここに本体をセットするだけで簡単に充電できる。

 さらにFire HD 8シリーズはShowモードにも対応しているので、スタンドに載せることでAlexa搭載のスマートスピーカーとして使うことも可能。実際にスタンドに載せた様子は「Echo Show 8」とほとんど同じだ。

 この状態で音楽再生からチェックしてみる。Fire HD 8 PLUSで音楽を楽しむには、Amazon MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスを使うか、micro SDカードに保存したデータを再生することになる。

 まずはAmazon Musicアプリを起動し、ストリーミング音源を聴く。なおFire HD 8シリーズは44.1kHz/16ビットの音楽信号に対応しているとのことで、再生音としてはCDクォリティと考えるといいだろう。

FIre HD 8 PLUSのスピーカー搭載部分(左)。その右側面には電源やボリュウムスイッチ、3.5mmヘッドホンコネクターが搭載されている(右)

 Fire HD 8 PLUSは、本体長手方向の両端にスピーカーが内蔵されているので、この面(ベゼルにカメラレンズがある方)を上にして専用スタンドにセットする。こうすることで音が上方に放射されることになる。

 Fire HD 8 PLUSの正面2mほどの場所に座ってザ・ビートルズ「Ob-La-Di,Ob-La-da」や松任谷由実「リフレインが叫んでる」、クラシックから「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」を再生してみた。

 厚さ1cm弱の本体に内蔵されたスピーカーなので、ボリュウムを上げても正直音圧感は物足りないが、そのぶん高域が立った印象にもなる。ヴォーカルの定位はやや曖昧で、シャープにフォーカスすると言うよりはふわりとした音場を作り出すタイプ。BGM的にいつも音楽を鳴らしておきたいという使い方が向いているだろう。

今回はfinalの有線イヤホン「B1」(写真右下)と、B&OのBluetoothイヤホン「E8 第三世代」(右上)を組み合わせている

 ちなみに以前同じ環境でEcho Show 8も試聴したことがあるが、あちらはパッシブラジエーターを組み合わせて低域感のあるサウンドを再現していた。ヴォーカルも太めで、マッチョな音楽とでもいえばいいだろうか。それに対しFire HD 8 PLUSは、すっきりした誇張感のない鳴らし方と言えるかもしれない。

 Fire HD 8 PLUSはタブレットなので、内蔵スピーカー以外での音楽鑑賞もできる。そこで次は3.5mmヘッドホン端子を使って有線イヤホンで聴いてみた。組み合わせたイヤホンはfinalの「B1」だ。

 Amazon Musicで先ほどと同じ楽曲を聴いてみる。B1はスタジオエンジニアが目指した音の再現を目指したモデルで、シャープな音づくりが持ち味。その効果もあってか、内蔵スピーカーよりもクリアーでタイトなサウンドが楽しめた。

 低音感も豊かとまではいかないが、スピード感のある弾んだドラムが再現されている。組み合わせの相性もいいようで、Fire HD 8 PLUSとB1を持ち歩いたら外出先での音楽鑑賞にも充分楽しめると感じた次第だ。

「E8 第三世代」とペアリングしたところ。AACで伝送されていることが確認できた

 もうひとつ、Fire HD 8 PLUSではBluetooth経由の再生も可能だ。ただし、Fire HD 8 PLUSがどのBluetoothコーデックに対応しているかは公開されていないので、アンカーのBluetoothトランスミッター/レシーバーA3341とつないでみた。

 A3341にはBluetooth接続中にどのコーデックを使っているかがLEDの点滅数で確認できるので、それを確認してみたわけだ。それによるとFire HD 8 PLUSとA3341はAACでペアリングしているとのこと。Fire HD 8の前世代はSBCまでの対応だったようなので、ここは静かに進化していたようだ。

 そこでAACコーデックに対応したB&OのBluetoothイヤホン「E8 第三世代」を組み合わせてワイヤレス再生の音を確認した。もちろんE3 第三世代とfinal B1では音づくりも違うので、曲の印象は異なる。E8 第三世代の方は低域を出す方向で、ウッドベースの鳴り感なども好ましい。ヴォーカルのニュアンスや楽器の微細な音色を聴くのなら有線接続が一歩上だが、気軽に楽しむならBluetoothイヤホンとの組み合わせもアリだろう。

スピーカーの反対側側面にはmicro SDカードスロットを備えており、ここに保存した音楽や映像データの再生も可能

 Fire HD 8 PLUSとE8 第三世代の相性がなかなかよかったので、この組み合わせで外に持ち出してみることにした。CDからリッピングしたFLAC音源をmicro SDに保存し、ローカルでの再生も試す。この状態の方がなんとなく低域が力強いような感じもするけれど、それは気のせいかな? いずれにせよFire HD 8 PLUSは携帯音楽プレーヤーとしても充分活用できることは確認できた。

 さらにせっかく持ち歩いているのだから電子書籍も試してみようと、話題になったSF小説『三体』のKindle版を購入した。何せ昭和の人間なので紙の本の方が好みなのだけど、さすがにハードカバーでかつこれだけのボリュウム(重さ)のあるものを持ち運ぶ気力と体力はもはやない。しかし電子書籍なら問題なし。

 Fire HD 8 PLUSを縦配置にして1ページ分を表示させると、文庫本よりも文字が大きくなり、案外見やすい。雑誌の場合は写真やコラムをどう見せるかなど全体のレイアウトが重要なので8インチ画面では辛いかもしれないが、小説ならそんな不満もなく楽しめる。

左は5インチ画面の「Echo Show 5」で、右が「Fire HD 8 PLUS」。画面の視認性はかなり高い

 細かい文字も読みやすかったので、次は動画かなということで、Amazon Prime Videoも再生してみる。Fire HD 8 PLUSの液晶パネルは水平1280×垂直800画素の16:10画角。さらにDolby Atomosのデコード機能も内蔵済みで、映画鑑賞を意識しているようだ。

 ただ、映画『トップ・ガン』でチェックした限りでは、2時間の作品はちょっと辛い。被写体のディテイルが識別しづらいし、F14の豪快な動きもこぢんまりして映画のカタルシスが感じられない。

 このサイズではテレビドラマやアニメがお薦めだろう。そこで『下町ロケット』や『銀河鉄道999』を試してみたが、これなら画質的にも満足できるし、動きの派手なコンテンツでもないので、8インチ画面でしっかり楽しむことができた。

EwinのBluetoothキーボードをFire HD 8 PLUSと組み合わせて持ち出してみた

 その他にも取材用に使えないかと思い、EwinのBluetoothキーボードと組み合わせてみた。こちらは8-8.9インチタブレット用でFire HD 8 PLUSが付属のカバーにぴったり収まる。

 日本語変換は初期状態ではキーボード配列がずれていたのでおかしな具合だったが、Fire HD 8 PLUS側の設定を変更したら問題なく使えるようになる。ユーティリティのドキュメントでメモを作るわけだけど、慣れれば結構簡単で、キー操作の感触も悪くない。

 などなど気になることをざっと試してみたわけだけど、Fire HD 8 PLUSは使いこなし甲斐のあるタブレットなのは間違いなし。携帯音楽プレーヤーとしても充分楽しめるし、外出先での電子書籍リーダーや動画再生デバイスにも使える。加えてメールもそれなりのサイズで読めてBluetoothキーボードを使えば返事も簡単、メモまで取れる(キーボードを組み合わせても800g弱という軽さもいい)。何よりこれが1万円ちょっとで手に入るのだから、凄い時代になったものです。
(取材・文:泉 哲也)