デンマークBang & Olufsenから、ノイズキャンセリング機能付きのフラッグシップワイヤレスヘッドホン「Beoplay H95」(¥96,000、税込)が発表される。

 H95の一番の特徴は、ANC(アクティブ・ノイズキャンセリング)技術を搭載していることだろう。物理的な遮音性能に加え、自動調整機能が追加された最新のANC技術で、フィードフォワードマイクとフィードバックマイクの双方で背景ノイズを検知、デジタル音声信号処理で効果的なノイズ除去を可能にしている。

 音質面では独自開発されたネオジウムマグネット駆動の40㎜チタンドライバーを採用し、さらにBluetoothのコーデックとして、SBC、AACとaptX Adaptiveに対応している点もポイントだ。

H95のキャリングケースはボティベースが樹脂製で、アルマイト加工を施したアルミでコーティングされている。その中に有線接続用の3.5mmケーブルや航空機用のアダプター、充電用USBケーブルなどが同梱されていた

 今回、H95の試聴機を数日間借用できた。そこで自宅でいろいろなソースを聴き比べてみたので、そのインプレッションを紹介したい。

 とその前に、H95は箱の質感もなかなかいい。梱包材から取り出すと、シックな黒い箱に「BEOPLAY H95 SINCE 1925」の文字が箔押しされている。手触りはマット調で、お値段に相応しい高級感が漂っている。

 蓋を開け、ケースからH95を取り出すと、こちらもラムスキンを採用した楕円形のイヤーパッドや記憶形状フォームで形成されたイヤークッションなどの手触りが良好で、装着感もいい。個人的には(頭のサイズが大きいので)側圧をもう少し低くしたい気もしたが、使い続けていくと解消する範囲でしょう。

イヤカップの右側に電源スイッチや3.5mmケーブルの挿入口を備える。右側のホイール部を回すとボリュウム調整も可能

 まずはiPhoneとペアリングして、スマホに保存した楽曲を聴いてみる。H95はSBC、AAC、aptX Adaptiveのコーデックに対応しているので、この場合はAACで伝送されているはずだ。

 接続の手順はとても簡単で、H95の右側イヤーカップにある電源ボタンを上側に数秒間長押しすると、LEDが青く点滅してペアリングスタンバイになる。あとはiPhoneでデバイス名の「Beoplay H95」を選ぶだけだ。

 さっそくiPhoneでCDリッピングした音源を聴いてみる。まずH95を装着した瞬間に、周囲の空気感ががらっと変わったことに驚いた。それくらいノイズキャンセリング機能の効果が明瞭で、しかも嫌な圧迫感がないのもいい。

 H95は専用アプリからノイズキャンセリングの効果やリスニングモードを切り替えられるので、そちらも試してみた。ノイズキャンセリング機能は極端に変化するほどではなかったが、一番強く効かせるとさすがに違和感を覚えたので、今回は中点から少し低め(主に室内で聴いたので)に設定している。リスニングモードも聴き比べた結果、デフォルトの「最適」のままとした。

B&Oのアプリをダウンロードすると、ノイズキャンセリング機能のオン/オフや効果の調整も可能になる。ファームウェアアップデートもアプリから行うので、同社製品のユーザーはぜひインストールしておこう

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラから、「Somebody To Love」や「Bohemian Rhapsody」を再生すると、コンサート会場らしい空気感が再現される。ヘッドホン試聴なので前方定位とはいかないが、フレディのヴォーカルが中央に定位し、声のニュアンスもリアルに再現できている。低域も量感を出す方向でチューンされていると感じた。

 続いてアンネ=ゾフィ・ムター/ジョン・ウィリアムズの『Across The Stars』から「レイのテーマ」や「シンドラーのリストのテーマ」を聴いてみる。バイオリンのもの悲しげな響き、ホールの静けさが際立つ印象で、ちょっとすっきりしすぎに思えるくらいだ。楽器の余韻など、ヘッドホンとしてはもっと細かいところまで出せそうだが、AAC伝送の限界かもしれない。

 そこでアンカーのBluetoothトランスミッター/レシーバーのA3341を使ってAVプリアンプ、ヤマハCX-A5100の2chアナログプリアウトをBluetoothでH95に伝送してみることにした。

 A3341はトランスミッターとしてSBC、AAC、aptX、aptX LL、aptX HDに対応している。これをH95とペアリングすると、A3341側にはaptX HDで接続したことが表示された。H95側はaptX Adaptiveなので48kHz/24ビットでの伝送が確保できたということだろう。

イヤークッションはラムスキン製で肌触りもとても快適

 この状態でジョニ・ミッチェルのCD『Blue』から「All I Want」「Blue」を聴く。接続としてはSACD/CDプレーヤーのアナログ2ch出力をCX-A5100に入れ、そのモニター出力をA3341につないでいる。CX-A5100はピュアダイレクトでボリュウム調整のみしている状態となる。

 気持ちの問題かもしれないが、iPhoneによるAAC接続時よりも楽器のディテイルがでてきたようで、空間としてのヌケもいい。彼女の声のかすれ具合、アンニュイな歌い方も心地いい。

 同じ接続でSACD『オフコースBEST “ever”』の「眠れぬ夜」「愛を止めないで」「さよなら」をチェック。この接続でもとにかくS/Nがいいのが印象的。し〜んとした空間に音がぽんと飛び出してきて、ドラムのアタック、キレのいいリズムが楽しめる。

 次にCX-A5100のネットワーク再生機能を使い、ハイレゾ音源(DSD 2.8MHz)の小澤征爾/ボストン交響楽団『ホルスト:組曲《惑星》』から「火星」を再生する。ここでは少しS/Nがよすぎるくらいで、クラシックホールでの演奏としては若干おとなしめに感じられた。

 H95はどのジャンルの音楽でもS/Nがよく、クリーンな空間で楽しませてくれるのは間違いない。特にaptX Adaptiveで伝送したときには情報量も充分で、ノイズキャンセリング効果と組み合わせることで、音楽の世界にどっぷり浸ってしまうことだろう。

付属の有線接続用ケーブルをつないだところ

 最後にUHDブルーレイで映画ソフトを再生し、2chにダウンミックスした状態でH95にBluetooth伝送してみた。

 『スター・ウォーズ/EP4』と『ボヘミアン・ラプソディ』からいくつかのチャプターを再生したが、110インチスクリーンと組み合わせてもほぼ不満のない音質で楽しめる。リアルスピーカーで鳴らした時の移動感や空間の広さの再現はさすがに難しいが、「レディオガ・ガ」の演奏シーンの低音感などはなかなかで、深夜の映画視聴には充分な品質だ。

 ただし、aptXであってもBluetooth伝送では音声の遅れは避けられない。『スター・ウォーズ』のアクションシーンでは問題ないが、『ボヘミアン・ラプソディ』のステージシーンではリップシンクのずれが目に付いてしまった。H95は有線接続も可能なので、映像作品を楽しむ場合はそちらをお薦めする。(取材・文:泉 哲也)

「Beoplay H95」の主なスペック

●仕様:オーバーイヤー型ANCヘッドホン
●使用ドライバー:エレクトロダイナミック型Φ40mmチタンドライバー
●内蔵アンプ:30W Dクラス×2(トゥイーター部とウーファー部の独立駆動)
●インピーダンス:12Ω(+/-15%)
●再生周波数帯域:20Hz〜22kHz
●感度:101.5dB(1mW@1kHz)
●ワイヤレス通信規格:Bluetooth 5.1
●Bluetoothコーデック:SBC、AAC、aptX Adaptive
●キャンセリング技術:アダプティブ・アクティブノイズキャンセリング
●内臓マイク:通話/ANC兼用MEMS×2、ANC専用MEMS×1(左右合計6基)
●連続再生時間:Bluetooth接続/ANC使用時 最大約38時間、Bluetooth接続/ANC未使用時 最大約50時間
●充電時間:約2時間
●バッテリー容量:1,110mAh
●対応音声アシスタント:Siri、Amazon Alexa、Google Voice Assistant(ボイスコマンドに対応)
●素材:アルマイト加工アルミニウム(本体/アーム)、牛革(ヘッドバンド)、ファブリック(ヘッドバンド)、ラムスキン(イヤークッション)、形状記憶低反発フォーム(イヤークッション)、ポリマー(本体)
●寸法/質量:W185×H165×D80mm/330g
※付属品:USB-C/USB-A充電用ケーブル(1.25m)、3.5mm有線接続ケーブル(1.25m)、フライトアダプター、マイクロファイバークリーニングクロス、取扱説明書