マランツから、同社70年のマイルストーンとなる新製品2デモルが発表された。「Modern Musical Luxury」というコンセプトの下、新しいデザインをまとったシリーズとなっている。発売はどちらも9月上旬の予定。

●ネットワークSACDプレーヤー 「SACD 30n」 ¥270,000(税別)
●プリメインアンプ 「MODEL 30」 ¥270,000(税別)

 マランツの創業者であるソウル・バーナード・マランツ氏は、インダストリアルデザイナーとしても活躍していた。今回の新シリーズは、スイッチノブなどに氏が開発を手がけたオールドマランツ時代の製品のテイストを受け継いだ仕上がりとなっている。

 さらに今回の新製品発売に合わせて、同社のロゴやウェブページのデザインなども変更、マランツを再定義(リ・デザイン)するという。そこには多彩な音楽ソースをハイファイクォリティで再生することと、マランツとしての音楽性の追求も含まれている。

 そんなリ・デザインの第一弾となるSACD 30nとMODEL 30は、従来のSA-12、PM-12の価格帯に位置する製品となる。同社として中堅価格帯に最新モデルを投入したのは、手の届く価格帯で最新のスペックをユーザーに提供したいという思いからだろう。

 ここからは両モデルの特長を紹介したい。

ネットワークSACDプレーヤーの「SACD 30n」

 まずネットワークSACDプレーヤーのSACD 30nは、同ブランド史上最高のネットワーク再生と、SA-12に匹敵するSACD/CD再生機能を備えた製品となる。

 一番のポイントは、オリジナルディスクリートD/Aコンバーターの「Marantz Musical Mastering(MMM)」を搭載している点だ。しかもフラッグシップモデル「SA-10」と同一の回路構成が継承されているというから驚きだ。

 ちなみにMMMはPCM信号もDSD変換してD/A処理しており、前段としてPCM信号のオーバーサンプリング処理やDSD変換を受け持つ「MMM-Stream」と、そこから出力されたDSD信号をアナログに変換する「MMM-Conversion」から構成されている。

 そのMMM-StreamはPCM→DSD変換を独自のアルゴリズムで処理しているが、その際のオーバーサンプリングやデジタルフィルター処理をすべて自社開発のアルゴリズム、パラメーターで行うことで同社が理想とするサウンドを具現化しているそうだ。

 またMMM-StreamとMMM-Conversionを別々の基板に配置し、その間に「コンプリート・アイソレーション・システム」を挿入することで、デジタルとアナログの完全な分離を実現、高周波ノイズによる音質への悪影響も排除している。なおMMM-Conversionの出力部には、精密メルフ抵抗や銅箔フィルムコンデンサーといった高品位パーツを多数用いられている点も注目したい。

「SACD 30n」の内部構造。新型ドライブメカの「SACDM-3L」はシャーシ部に従来よりも太いネジで固定され、入念な振動対策が施されている

 また高精度なD/A変換のために、クロックには超低位相雑音クリスタルを採用し、再生するソースに応じて44.1kHzと48kHzを切り替えている。加えて新たに、光通信グレードのジッタークリーナーを用いた「プレミアム・クロック・リジェネレーター」を追加。筐体内での引き回しの間に発生するジッターを排除することで、より高品位なクロック信号を供給できるようになった。

 なおプレミアム・クロック・リジェネレーターはネットワーク再生を受け持つHEOS回路にも有効で、SACD 30nがマランツブランド史上最高のネットワーク再生を実現したと謳っているのは、この回路に負うところも大きいようだ。

 ネットワーク再生については、使わない時にUSBメモリー再生やWi-Fi、デジタル出力回路等の電源をオフにする機能も備わっている。しかもリモコンによるメニュー操作でオン/オフがきるので、ディスク再生をじっくり楽しみたい場合などに活用していただきたい。

 ドライブメカも新開発され、「SACDM-3L」となった。ピックアップは従来と同じだが、トレイ部分がザイロンを用いた樹脂製に変更されている。

 その他にもSACD 30nでは、新開発ブロックコンデンサーやリード型金属皮膜抵抗の採用、フルディスクリートヘッドホン回路(ヘッドホンジャックを挿していないときは電源を自動的にオフにする)といった具合に、再生音質に対する細やかな配慮がなされている。

プリメインアンプの「MODEL 30」

 続いてプリメインアンプのMODEL 30は、従来機PM-12をベースに、サイズの制約から解放された新時代のプリメインアンプとして開発されている。

 入力端子はアンバランス×5、フォノ×1、パワーアンプイン×1(すべてRCA端子)という完全アナログ入力モデルで、光/同軸のデジタル入力やUSB、LAN端子等は備えていない。またF.C.B.S.(プリメインアンプを複数台連動させる機能)は省略されている。

 構成としては、出力200W×2のHypex社製クラスDパワーアンプ「NC500」に、独自のプリ部を組み合わせたセパレートアンプ的な仕様となる。このパワーアンプ部に専用スイッチング電源を搭載することにより、これまでよりもコンパクトな回路設計が可能になったそうだ。

 その余裕をプリアンプ部に割り当てることで、充実した回路を実現できている。まずプリアンプ部用に従来の4倍の電源供給能力を持った専用大型トロイダルトランスを搭載した。パワーアンプ部による電源変動の影響を受けないので、安定した音楽再現が可能になるはずだ。

 電子ボリュウムにはJRC製「MUSES72323」を新規搭載。またJFET(ジャンクションFET)入力を採用し、カップリングコンデンサーも排除している。カップリングコンデンサーは切り替えノイズ、ポップノイズ対策のために必要なパーツだが、コンデンサー固有の音が再生音に乗る事があった。今回はそれをなくしたことで、よりピュアな音を楽しめるのだろう。

 アナログレコード用のフォノイコライザーは、MM/MCカートリッジに対応した「Marantz Musical Premium Phono EQ」を搭載する。これは、20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと、40dBのゲインを持つ無帰還型フォノイコライザーアンプの二段構成を採用した回路で、一段あたりのゲインを抑えることで低歪みを実現するものだ。MC入力は使うカートリッジに合わせて3段階(33/100/390Ω)の切り替えが可能という。

 SACD 30n、MODEL 30はどちらもメーカーによる3年保証がついている点も、いいものを長く愛用したいというオーディオファンに喜ばれるだろう。

中央がプリアンプ用の大型トランスで、その上側がパワーアンプブロック。Hypex社製「NC500」を出力基板に直接取り付けている

 先日行われた発表会で、SACD 30n、MODEL 30の音を聴かせてもらった。SA-12+PM-12の組み合わせから、プレーヤーをSACD 30nに変えると、音場全体のノイズフロアがすっと下がり、ひとつひとつの音が澄んでくる。

 ピアノの立ち上がり、消え際の余韻もより生々しくなるし、女性ヴォーカルの張り出し、ヌケが気持ちいい。細かいニュアンスまで聴き取れるようになったことで、音楽性の再現がアップしていると感じた。

 続いてアンプをPM-12からMODEL 30に交換すると、先述した音の傾向がさらに明瞭になる。音場全体の再現性、ダイナミックレンジが広がって、女性ヴォーカルが近づいてきたかのようだ。

 そのままの接続で、SACD 30nでネットワーク再生を試してもらった。デラのNASに収めた44.1kHz/16ビット音源を再生したが、こちらは奥行方向の再現が緻密になり、ステージも広くなったように感じる。ベースのゆとり、弦の張りのよさが印象に残った。

「SACD 30n」の主なスペック

●再生可能ディスク:CD、SACD
●再生周波数帯域:SACD=2Hz〜100kHz、CD=2Hz〜20kHz
●再生周波数特性:SACD=2Hz〜50kHz、CD=2Hz〜20kHz
●S/N:SACD=112dB、CD=104dB
●ダイナミックレンジ:SACD=109dB、CD=99dB
●接続端子:アナログ音声出力2系統(FIXED/VALIABLE)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、デジタル音声入力3系統(同軸、光×2)、USB入力2系統、LAN端子1系統、ヘッドホン出力1系統
●ハイレゾ対応フォーマット:USB-B=DSD11.2MHz、384kHz/32ビットリニアPCMまで、同軸・光=最大192kHz/24ビットまで
●消費電力:48W(通常待機時0.4W)
●寸法/重量:W443×H130×D424mm/13.7kg(アンテナを寝かせた場合)

「MODEL 30」の主なスペック

●定格出力:200W×2(4Ω、1kHz、THD0.1%)
●全高調波歪率:0.005%(50W、8Ω、1kHz)
●再生周波数特性:5Hz〜50kHz
●接続端子:アンバランス入力端子5系統(RCA)、フォノ入力1系統(MM/MC切替式)、パワーアンプイン1系統、プリアウト1系統、レックアウト1系統、ヘッドホン出力1系統、他
●消費電力:150W(待機時0.2W)
●寸法/質量:W443×H130×D431mm/14.6kg