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 ZYX(ジックス)は、1986年以来MCカートリッジをつくりつづけてきたアナログ専門ブランド。長い実績を踏まえた理論解析がとてもユニークで、そのMCは基本的にオルトフォンタイプなのだが縦横無尽な独自性に満ちている。わけてもの定番トップセラー製品が100シリーズだ。

 当機Ultimate100Sは、同100の発電コイル素材=6NOFCを5N銀線に変更した最新ヴァージョン。ポリカーボネートの樹脂ボディも、内部構造が見直されているということだ。

 今回は、本誌リファレンスのフェーズメーションPP2000を含めて3種類のMCカートリッジを聴いた。同一条件で各々異なる個性、持ち味のちがいを比較対照できたのは贅沢な体験だ。当機100Sの魅力は、音場の奥行きが深くて当りの柔らかな繊細感に富むこと。精緻な音像を包む空気はひときわ流麗。空間が大きいというよりも、八方に目配りを利かせて隙のない闊達さが随一の特徴である。音色表現も端正で、ことさら銀線のキャラクターをチラつかせるように感じることはなかった。押し出しの強さや色濃い味で勝負する方向ではないのだが、多くのユーザーに支持されてきた100シリーズの、これはもっとも洗練された到達点に相違ないだろう。

 価格のケタがちがうハイエンドモデルUltimate天空(アストロ)Xの空間表現はもっとすごく、天下一品級だ。そのエッセンスを当機が受け継いでいることは確かである。

Cartridge
ZYX
Ultimate100S
¥170,000

●発電方式:MC型●出力電圧:0.24mV●インピーダンス:4Ω●使用針圧範囲:1.7g~2.5g(2.0g適正)●自重:5.0g●針交換価格:¥119,000●問合せ先:ヒノ・エンタープライズ TEL. 06(6170)5731

カンチレバーはUltimate100同様のカーボンファイバー製。直径5μmの炭素繊維を千本収束して固めたもので、硬度はチタンの1.5倍、比重はダイアの6分の1、重量はボロンの半分と超軽量・高強度。針先はマイクロリッジ形状。


従来6NOFC線材を採用していたコイルを、5N銀線に変更。筐体は硬質なポリカーボネートによるボディの側面構造を2重構造とし強度を高め、不要な共振の発生を防ぐ。

レコードに針を下ろす高津氏。

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