クリエイティブメディアが音質にこだわって開発したネックバンド型ワイヤレスイヤホン「Aurvana Trio Wireless」。ポータブル音楽プレーヤーやスマホに保存してあるお気に入りの音楽コンテンツを、より良い音で楽しめるモデルだ。しかも、Bluetoothアダプター「BT-W3」を組み合わせれば、家庭用ゲーム機などのさまざまな機器と、ワイヤレス接続が可能になる。ここでは、注目のAurvana Trio Wirelessを実際に使って、その音質に迫ってみた。加えて、BT-W3との組み合わせによるゲームプレイも試してみた。

なによりも音質にこだわって開発した「Aurvana Trio Wireless」

 クリエイティブメディアは、PC用サウンドカード「サウンドブラスター」シリーズなど、パソコン用周辺機器における“高音質”な製品を、豊富に揃えたメーカーだ。パソコン用のヘッドセットをはじめ、サラウンド用スピーカーシステムやサウンドバーなどもラインナップしており、近年では、テレビ用スピーカーとして同社の製品を購入する人も増えているという。さらに、昨年からは、ヘッドホンやイヤホンでユーザーに最適化した本格的なサラウンド再生を実現する「Super X-Fi」という優れた技術に対応した製品も市場に投入している。

 そんなクリエイティブメディアが、音質にこだわるユーザーのために開発・製品化しているのが「Aurvana」シリーズだ。今回紹介する「Aurvana Trio Wireless」は、すでに発売されている有線イヤホン「Aurvana Trio」のワイヤレス版。Bluetooth接続でさまざまな製品と組み合わせて快適に使えるようにしたモデルとなる。

Bluetoothイヤホン
クリエイティブメディア
Aurvana Trio Wireless
オープン価格(直販価格¥10,000+税)

Aurvana Trio Wirelessの主な仕様
●Bluetooth バージョン:Bluetooth 5.0
●プロファイル:A2DP、AVRCP、HFP
●コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX LL
●ドライバー ユニット:デュアル バランスド・アーマチュア(BA)ドライバー、10mmダイナミック バイオセルロース ドライバー
●周波数特性:5Hz~20kHz
●マイクタイプ:無指向性MEMSマイク
●電源:内蔵型リチウムイオンバッテリー(130mAh)
●電池持続時間:最大約20時間
●充電時間:約2時間
●充電端子:micro USB
●付属品:シリコンイヤーピース(S/M/L 各1ペア)、フォームイヤーチップ×3ペア、キャリーポーチ、micro USB充電ケーブル、クイックスタートガイド/ハードウェア保証書

BA型×2、ダイナミック型×1の3ドライバーで高音質を実現

 Aurvana Trioは、カナル型のコンパクトなイヤホンで、Trioの名称の通りBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーが2つ(高音用・中音用)、バイオセルロース振動板を採用したダイナミック型ドライバー(低音用)の3つのドライバーを使ったハイブリッド型のシステムを採用している。この3つのドライバーにより、低音から高音まで情報量豊かな音で再現する。再生周波数帯域は5Hz~40kHzで、ハイレゾ音源も存分に楽しめる実力を備えている。

▲イヤホン部分は、有線タイプのハイレゾイヤホン「Aurvana Trio」をベースにしている。2基のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーと、10mm径のダイナミック型ドライバーの3基構成となる

 Aurvana Trio Wirelessでは、Aurvana Trioの音の良さを活かすため、ネックバンド型を採用した。Bluetooth対応のための無線アンテナや信号処理チップ、バッテリーといったパーツはネックバンド部に内蔵するので、ハウジングなどの設計はそのまま。音質に影響を与えることなくワイヤレス化を実現している。

 ワイヤレス接続の安定性を保つために、Bluetoothは最新のバージョン5.0を採用。伝送のためのオーディオコーデックは、高音質コーデックの「aptX HD」をサポートするし、「SBC」「AAC」や「aptX」に加えて、低遅延の「aptX LL」にも対応している。それだけでなく、内蔵する信号処理回路やアンプ回路なども、ワイヤレス化に向けて入念な音質チューニングを行なったという。特に、日本のユーザーへのヒアリングを重視し、日本のユーザーの好みに合った音質に仕上げているそうだ。

本格的なHiFi志向の音質。価格を超えたパフォーマンス

 ここでは、Aurvana Trio Wirelessのインプレッションをお届けしたい。まずは、音楽プレーヤーAstell & Kernの「SP1000」を組み合わせて音楽を聴いてみた。BluetoothはaptX HDで接続している。

 クルレンツィス指揮/ムジカエテルナによる「チャイコフスキー/交響曲第6番」を聴くと、耳当たりの良い柔らかな感触で、各楽器の音色やきめ細かく再現した。色彩感あふれる木管楽器やきらびやかな金管楽器も自然な感触だ。そして、ティンパニや大太鼓の音も情報量豊かで雄大に響く。大編成のオーケストラのステージが広々と再現され、スケールの大きなサウンドが楽しめた。また、森口博子の「ガンダム・ソング・カバーズ」では、ボーカルのニュアンスが繊細で、彼女の表現力豊かな歌声を気持ち良く聴かせてくれた。

 中高音の明瞭度はもちろん、量感と音階まで描き分ける解像感がうまくバランスした低音など、その実力は高いレベルにある。それでいて、カリカリの高解像度な音にはせず、耳当たりのよいソフトな感触で、落ち着いた印象の音にまとまっているのが好ましい。ゆったりと音楽を楽しむのにはぴったりだし、長時間聴いていても疲れにくい聴き心地の良さがある。Bluetoothにありがちな高域の荒れた感じもないし、楽器や歌声の自然な音色がきちんと再現される。これで1万円ならばかなりお買い得と言えるだろう。

 ベースとなるハイレゾ対応の有線モデルのAurvana Trioも聴いてみたところ、音場の奥行や楽器の質感再現などに、有線接続ならではの良さを感じる部分もあるが、Aurvana Trio Wirelessにおいても、音のスケール感や楽器の音の粒立ち、なによりも本モデルの魅力である自然な音の感触では、ほとんど見(聴)劣りがない。ワイヤレスモデルであってもかなり良い音であるということが改めて分かる。

 有線モデルをワイヤレス化すると比較試聴ができてしまうこともあり、それなりの差があると気付きやすいのだが、ワイヤレスでも音質的な落差をほとんど感じなかった。全体的な傾向はそのままに、細かな部分をしっかりとチューニングすることで、Aurvanaシリーズのサウンドに仕上げていることがよく分かった。

 そのほか、iPhoneとの接続も試してみたところ、コーデックの違いによる差はあるものの、基本的な音質が優れていることもあり、しっかりとした低音の雄大さによって、音量を絞っていても聴き心地は良かった。

「BT-W3」を組み合わせたゲームプレイは、“かなり楽しい”

 続いては、同社のワイヤレスアダプターの「BT-W3」(オープン価格 直販価格は¥3,980+税)を組み合わせて、「PS4pro」と接続して、ゲームをプレイしてみた。BT-W3は型番の通りBluetoothアダプターとしては3世代目となるのだが、新たに高音質のaptX HDと、ゲームに必須なaptX LLに対応している点がポイント。ゲームユーザーの要望に応えて、低遅延のaptX LLで快適なプレイをできるようにしている。

Bluetoothオーディオトランスミッター
クリエイティブメディア
BT-W3
オープン価格(直販サイト価格¥3,980+税)

USBドングルタイプのBluetoothオーディオトランスミッター。USB Type-Cポートを搭載し、ノートパソコンやゲーム機(PS4やNintendo Switchなど)のType-Cポートに直接挿して使える。もちろん専用USB C-to-A 変換アダプターも付属しているので、USBがType-AポートのPS4やPCでも利用可能

BT-W3同梱のアナログマイク。PS4やパソコン(ノート)のヘッドセット端子に接続して、マイクとして使える

 BT-W3は、aptX HD、aptX LL、aptX、SBCのコーデックに対応しているが、Aurvana Trio Wirelessなど、それらのコーデックに対応したモデルと接続した場合は、アダプターに備わっているボタンを押すと、コーデックの切り替えが可能となる。これにより、Bluetooth接続はそのままで、音質を重視したいときはaptX HD、FPS(一人称視点シューティング)やリズムゲームならば低遅延のaptX LLと、随時切り替えて使い分けることができるのだ。

 筆者はゲーム好きだが、ゲームが上手というわけではないので、タイミングのシビアなリズムゲームだとaptX LLの方がプレイしやすいと感じた程度で、『ファイナルファンタジーVII リメイク』のようなRPGだと、音質的に優位なaptX HDの方がプレイしていて楽しかった。最近のRPGのムービーシーンは映画のような出来で、音質に優れたイヤホンでプレイすると臨場感も増す。こういったゲームが好きな人にはぴったりだと思う。

 また、BT-W3はワイヤレス通話用の「HFPプロファイル」にも対応しているので、Aurvana Trio Wirelessと組み合わせると通話も可能なのだが、それとは別にアナログマイクも同梱している。これはゲーム機などのヘッドセット端子にアナログマイクをつないで、ゲーム中のボイスチャットに使用するための物。PS4やPCでは再生と入力を別管理できるので、ワイヤレス通話用の「HFPプロファイル」より数段音の良いaptX LLでゲーム音とフレンドの声をワイヤレスで聴きながら、アナログマイクで会話するためだ。

 ゲームでのボイスチャットは単なるコミュニケーションだけではなく、チームプレイでの作戦など、プレイへの影響も大きい。そのため、ゲームやチャットの音質が悪いと使いにくいと感じることもある。そのためにアナログマイクもセットしているのだ。ゲームの音を高音質で楽しむだけでなく、チャットが必要な場合もゲームを高音質で楽しめるのは、クリエイティブメディアならではの魅力だ。

 このほか、スマホで使用する場合は、クリエイティブメディアが提供している「SXFI App」も利用できる。これは、一般的なイヤホンで感じやすい頭の中だけで音が響く頭内定位を解消し、スピーカーから音を聴いているような音場感が得られる技術。アプリで自分の正面の顔と、左右の耳の写真を撮るだけで、個人に最適化したデータが生成され、リアルな音場再現が可能になる。SXFI Appには、Aurvana Trio Wirelessのプロファイルも用意されており、音場感だけでなく、音質的な最適化も行なわれ、その効果もしっかりと確認できた。

音楽だけでなく、ゲームや映画も高音質で楽しめる多彩なワイヤレスイヤホン

 今回のAurvana Trio Wirelessの試聴テストでは、さまざまな機器と組み合わせて、一日中使っていることもあったが、耳が痛くなるようなことも少なく、長時間使っていても快適だった。今はコロナウイルスの影響で、誰もが自宅にいる時間が長くなりがちで、仕事面でもリモートワークなどによってビデオ会議をする機会も増えているだろう。そんな在宅ワークでも役立ちそうだと感じた。

▲「Aurvana Trio Wireless」と「BT-W3」を組み合わせると用途が広がり、音楽再生からゲームプレイまで、さまざまな環境で、コンテンツを高音質に楽しむことができる。クリエイティブメディアの直販サイトでは、割安なセット販売も行なわれている(¥12,582+税)

 Aurvana Trio Wirelessは、音楽だけでなく、ゲームや映画といったさまざまなコンテンツを幅広く楽しめるマルチメディア対応でありながら、同時に音質も優秀という、希少なワイヤレスイヤホン。音楽の再生だけなく、オンライン会議やゲームをより高音質で楽しみたい人にも、ぜひともチェックしてほしいアイテムだと感じた。