オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。

以下の記事はHiVi2011年6月号に掲載されています

www.stereosound-store.jp

アナログ入力に特化した最上級機。
肉厚なサウンドで音に色っぽさも漂う

<PROFILE>
 筐体中央に強力なアナログ電源を置き、高出力のデジタルパワーアンプを左右両端に配したデュアル・モノーラル構成のプリメインアンプ。プリアンプ部も左右独立基板によるデュアル・モノーラル構成をとる。

 内部シャーシは5分割構造で回路間の相互干渉の最小化を図る。立体的な配置等による信号経路の最短化も注目点。音量コントロールには信号経路の最短化と左右誤差の極小を意図し、独自の電子ボリュウム、エソテリックDVCシステムを採用する。外観は、入力切替えとボリュウムのみの、きわめてシンプルな仕様。入力端子は、最近流行のデジタル関連は一切なく、バランス2系統とアンバランス3系統のアナログのみである。

 しかし、アンバランス入力の1系統はAVプリ入力に変更可能で、本格AVとの親和性を確保する。そのほか、プリ出力と録音出力の切替え機能や、本機をプリアンプとして使う際に、パワーアンプ動作を止めるパワーアンプシャットダウン機能などもあり、多彩な使い勝手とクォリティ追求に応える。

 本機の価格は決して安くはないが、この面構えに接すれば納得。切削の技が生んだアルミのネイティブな美しさと造形は、まさにそそる意匠美である。

<IMPRESSION>
 CD/SACDプレーヤー「X01」のアンバランス出力をつなぎ、パイオニアの「S2EX」で、上原ひろみのCD「ヴォイス」を聴けば、切れ味のいい強烈なパワー感が襲う。視聴室の低域の個性さえ抑え込む引き締った低音域がジャズのスピード感と緊張感を増幅する。ユジャ・ワンのCD「パガニーニの主題による狂詩曲」では、弛緩のない再生音によって、オケはもちろん、ワンの指が見えるかのような克明な描写で惹く。

 パナソニック「DMR-BWT3100」で視聴したBD「プライベート・ライアン」は、音量が低めでも、引き締った音でセリフも効果音もヌケよく届く。しかも音量を上げれば、恐ろしい戦争の痛烈な音世界が迫ってくる。BDレコーダーのアナログ音声出力とは思えぬ鮮烈さだ。

 バランス入力も試す。X01とのバランス接続でユジャ・ワンを聴いてみると、がぜん低域の厚みが増した。オケのスケール感がひと回り大きいのだ。ピアノのサイズ感もしかりで、惚れ惚れとする。カサンドラ・ウィルソンのCD「シルヴァー・ポニー」の図太いベースはグーンと重心を落とす。声は肉厚で湿り気や色っぽさも漂う。プレーヤーにバランス出力があれば、一番に試したい音である。

INTEGRATED AMPLIFIER
ESOTERIC I-03
¥630,000(税別)※価格は当時のもの
●定格出力:240W×2(6Ω)
●接続端子:アンバランス入力端子3系統(RCA)、バランス入力端子2系統(XLR)、フォノ入力1系統(MM/MC切替式、RCA入力3と排他仕様)、プリアウト1系統
●寸法/質量:W445×H162×D468mm/31kg