THE ELEPHANT MAN - UK 4K UHD BLU-RAY STEELBOOK EDTION
with DOLBY VISION/4K DIGITAL RESTORATION

how the Victorians dealt with the unacceptable and the inexplicable

Release Dates (Theater):October 3, 1980 (Domestic)
Domestic Total Gross:$26,010,864
(International: N/A)

映画『エレファント・マン 4K修復版』予告編

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FILM

言わずと知れたデヴィッド・リンチの監督第2作。北米、英国で1980年に公開されて高い評価を受け、日本では翌年5月公開、日本での1981年洋画興行成績第1位に輝いた作品である。昨年、製作40周年を記念した4Kデジタルレストア版がフランスで限定公開。その後、コロナ禍で各国が公開を見送るなか、日本では7月に公開されてシネフィルを歓喜させた。本作はコメディ映画の一時代を築いたメル・ブルックス(ブルックスフィルム)が製作、従来のブルックス作品とは異なり、19世紀末の英国に実在したジョン・メリックの生涯を描いたヒューマン・ドラマに仕上げている。そのブルックスが監督に大抜擢したのは新鋭デヴィッド・リンチ(監督に依頼された時、リンチは屋根工事人として生計を立てていた)。パラマウントは監督に同社『天国の日々』の監督テレンス・マリックを候補に挙げていたが、『イレイザーヘッド』に感銘を受けたブルックスによる大英断であった。すでに『ヤング・フランケンシュタイン』(FOX)のモノクローム撮影で成功を収めていたブルックスは、パラマウントを説得、モノクローム撮影の承諾を取りつける。さらにオープニング・タイトルからブルックスのクレジットを除外したのは、「(風刺作家としての)私の名前があると、作品に対する視点を歪めてしまう恐れがあった」というブルックス自らの配慮によるものだ。

映画『エレファント・マン 4K修復版』デイヴィッド・リンチ監督 インタビュー映像

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ブロードウェイではメリックの実話を感動的な物語に仕上げた舞台劇がヒット、日本でも80年に劇団四季が公演して話題となっていた(77年英国で初演/79年ブロードウェイに上陸~81年まで/79年トニー賞・最優秀演劇作品賞受賞)。だが映画版は舞台劇からの映画化ではなく、実話を下敷きにしたオリジナル・ストーリーである(参考文献はフレデリック・トリーブス著『エレファント・マンとその他の回想』/アシュリー・モンタギュー著『エレファント・マン:人間の尊厳の研究』)。81年日本公開時には舞台のイメージから涙の感動作として宣伝され、前述のように興行成績第1位の大ヒットとなったのだが、観客の多くはホラー映画を思わせる演出に戸惑いを感じたものだった。

出演は前年の『エイリアン』で強い印象を残したジョン・ハート。舞台俳優としてキャリアをスタートさせたのち、映画界に進出して存在感のある演技を披露していたアンソニー・ホプキンス。脇を固めるのは、『奇跡の人』でオスカー受賞のアン・バンクロフト(ブルックス夫人)、翌年『ミスター・アーサー』でオスカー受賞のジョン・ギールグッド、『旅路』でオスカーに輝くウェンディ・ヒラー。
第53回アカデミー賞8部門(作品・監督・主演男優・脚色・作曲・美術監督/装置 ・衣装デザイン・編集)ノミネート。第9回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭・グランプリ受賞。

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VIDEO

撮影はテクニカラーの父ジャック・カーディフ監督作『息子と恋人』、エドワード・ズウィック監督作『グローリー』でオスカーに輝くフレディ・フランシス。監督リンチとのコンビ作は本作の他に『砂の惑星』がある。他に『回転』『フランス軍中尉の女』『ケープ・フィアー』が代表作だが、監督しては英ハマー・プロのホラー作品を多く手掛けるという異色の経歴を持つ撮影監督だ。パナビジョン/アナモフィック撮影。リンチ監修のもとチネテカ・ディ・ボローニャの映画修復研究所(リマージネ・リトロヴァータ研究所)にて、35mmオリジナルカメラネガを16ビット4Kスキャン、デジタルレストア。カラーグレーディングはロサンゼルスのフォトケムで、これまたリンチ監修のもと行なわれている。LUT(ルックアップテーブル)はイーストマン・パンクロマチックフィルムPlus-X 5231。Plus-X 5231は1956年に製造を開始、2010年にディスコンとなったクラシックネガ。フィルム感度はISO80(デイライト)/64(タングステン)、解像度100l/mm、粒状性RMS10という数値は決してハイスペックではないが、本作のムードある絵作りには完全に適合する。HDRは、HDR10、ドルビービジョンHDRを採用。映像平均転送レートは76.5Mbps(HDR10) + 85Kbps(ドルビービジョン=DV)。収録アスペクトは2.35:1スコープサイズ。

2009 BLU-RAY

2020 UHD BLU-RAY

2009年スタジオカナルBLU-RAY版と比較すると、まず画角とフレーミングが異なっていることに気づくはずだ。アスペクトは2.39:1から2.35:1に修正。再スキャンによるフレーミングでは、リンチ監修のもと異なるトリミング調整が行なわれた結果、垂直方向の情報とフレーム左側の部分の映像情報を得ており、一方でフレーム右側の情報がトリミングされている。4Kスキャンの恩恵は、流動的な粒子感や画像の密度レベルを大幅に改善、顔の毛穴、毛髪、アイキャッチ光、衣装の折り目や質感、紳士用グルーミングキットの華やかな彫刻、マザーズヘッドの時計の時刻、ビクトリア朝のロンドンの街路や壁、老朽化し​​た道路の石畳や入り口を飾る彫刻、もちろんジョン・メリックの特殊メイクに至るまで、オーガニックなテクスチャの詳細が現出させている。HDRによるグレースケールの大幅な改善は観どころのひとつで、『シンドラーのリスト』同様にモノクロームとHDRの相性の良さを示す。より包括的で効果的な奥行と空間の描画力を露わにし、グレースケールの持つダイナミズムに見惚れることしきり。DVでは黒レベルがより安定、立体感を伴うハイライト、精緻な陰影ディテイルが再現され、実話が持つ世界観とリンチが持つ画家としての世界観の融合を楽しむことが出来よう。圧縮の問題はほとんど視認できないが、オープニングシーンなどの煙や蒸気の効果がある映像はわずかに不安定となる(集中を欠くほどではない)。

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AUDIO

サウンドデザインはデヴィッド・リンチ、そして『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬(オスカー受賞)』『ブルーベルベット』のアラン・スプレット。音響編集は『遠すぎた橋』『エイリアン2』のピーター・ホロックスが担当する。音声平均転送レートは1.6Mbps(24ビット)を記録。

ここには2009年版に収録されていたオリジナル・モノーラルトラックやリミックス5.1chを選択するオプションがなく、もちろんドルビーアトモスやDTS:Xリミックスも存在しない。オリジナルを愛するシネフィルやサラウンド・ジャンキーはいささかガッカリするかも知れないが、DTS HDマスターオーディオ 2.0(ステレオ)ミックスは適切に提供され、2009年版と比較するとアップグレードされていることを聴取できよう。(ヴィンテージミックスではあるが)ミッドレンジの充実は明快、多様なステレオエフェクトと可触的なアンビエント(群集や街の喧騒ノイズ)を備えている。発声はいかなる場面でも明瞭度を保ち、確かな存在感と息づかいで響く。新たな音素材が追加録音されたわけではないが、常にドラマに付随するインダストリアル・サウンドのスケールを改善、シーンによっては驚くべき量のダイナミックレンジが広がり、深く伸長するローエンドは思いも寄らぬ副次的効果を披露する。深い悲しみの中にあるジョン・メリックの純心を謳い上げた、ジョン・モリスのスコアも聴き逃がせない。モリスと言えば、メル・ブルックス監督作品の常連作曲家だが、ここでは脳髄の中に蓄積されていくような楽曲を響かせて忘れ難い。

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FINAL THOUGHTS

本作のUHD BLU-RAYは、英/独/仏(欧州地区)で登場。今回紹介したスチールブック版以外に、観音開き式スリーブ(大聖堂のポップアップ)/64頁ブックレット/5枚のアートカードを収めた40周年記念エディション(英国)もお薦めのひとつ。また9月にはクライテリオンからもBLU-RAY版(4Kデジタルレストア)が登場予定となっており、購入に迷うシネフィルも多かろう。悩むのもまた楽しからずや。いずれにせよ、この重きテーマのヒューマンドラマ、必見。必聴。

SPECIAL FEATURES

BLU-RAY DISC ONE(REGION-B)

  • Photographing the Elephant Man
    • in this new video program, Frank Connor, stills photographer onThe Elephant Man, discusses his work on the film as well as the evolution of his career, with some very interesting comments about the 'old days' and David Lynch's working methods. In English, with optional German and French subtitles. (26 min).
  • BFI Q&A with Jonathan Sanger
    • presented here is a new Q&A session with producer Jonathan Sanger, which is hosted by Ian Haydn-Smith. The bulk of the information addresses the production ofThe Elephant Man, from script to screen, the film's visual style (with great comments about the decision to shoot in black-and-white), and David Lynch's creative efforts. The session was filmed at BFI Southbank on January 18, 2018. In English, with optional German and French subtitles. (25 min).

BLU-RAY DISC TWO(REGION-B)

  • Interview with David Lynch
    • in this archival video interview, David Lynch recalls howThe Elephant Mancame to exist. In English, with optional German and French subtitles. (25 min).
  • Interview with John Hurt
    • in this archival interview, John Hurt discusses his collaboration with David Lynch onThe Elephant Manand the film's production process. There are also some very interesting comments about the film's international reception. In English, with optional German and French subtitles. (21 min).
  • The Air is on Fire
    • this archival interview with director David Lynch was conducted at the Cartier Foundation in Paris, in 2007. In French and English, with optional English, German and French subtitles where necessary. (15 min).
  • Joseph Merrick: The Real Elephant Man
    • a look at the tragic history of the man whose story inspired David Lynch's film. In English, with optional German and French subtitles. (21 min).
  • Mike Figgis Interviews David Lynch
    • another long and very informative interview. David Lynch's comments on the process of transforming an idea into film are fascinating. In English, with optional German and French subtitles. (20 min).
  • The Terrible Elephant Man Revealed
    • this archival featurette chronicles the production history ofThe Elephant Man. It features clips from interviews with producer producer Jonathan Sanger, executive producer Mel Brooks, John Hurt, and cinematographer Freddie Francis, amongst others. In English, with optional German and French subtitles. (21 min).
  • Stills Gallery
    • a collection of behind the scenes stills.

ADDITIONAL CONTENT(COLLECTOR'S EDITION ONLY)

  • Booklet
    • 64-page illustrated booklet featuring writings by Kim Newman and Dan Heather, original press materials, and technical credits.
  • Sleeve
    • pop-up gatefold sleeve. (See photos).
  • Art Cards
    • five collectible art cards. (See photos).

SCREEN CAPTURES

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DISC SPECS

TitleTHE ELEPHANT MAN
ReleasedApr 06, 2020 (from Studio Canal)
SRP£24.99
Run Time2:03:26.291 (h:m:s.ms)
CodecHEVC / H.265 (Resolution: 4K / DOLBY VISION compatible)
Aspect Ratio2.35:1
Audio FormatsEnglish DTS-HD Master Audio 2.0 (48kHz / 24bit)
German DTS-HD Master Audio 2.0, French DTS-HD Master Audio 2.0
SubtitlesEnglish SDH, French, German

FILM SPECS

タイトルエレファント・マン
1980
監督デヴィッド・リンチ
製作ジョナサン・サンガー
製作総指揮スチュアート・コーンフェルド
メル・ブルックス
脚本クリストファー・デヴォア
エリック・バーグレン
デヴィッド・リンチ
《原作》フレデリック・トリーブス
アシュリー・モンタギュー
撮影フレディ・フランシス
音楽ジョン・モリス
出演ジョン・ハート, アンソニー・ホプキンス, アン・バンクロフト
ジョン・ギールグッド, ウェンディ・ヒラー, フレディ・ジョーンズ
キャスリーン・バイロン, ハンナ・ゴードン, レスリー・ダンロップ

4K画質評価

解像感★★★★★★★★  9
S/N感★★★★★★★★  8
HDR効果★★★★★★★★  8
色調N/A
階調★★★★★★★★★ 9

音質評価

解像感★★★★★★★★  8
S/N感★★★★★★★★  8
サラウンド効果N/A
低音の迫力★★★★★★★   7

SCORE

Film★★★★★★★★★  9
Image★★★★★★★★★  9
Sound★★★★★★★★   8
Overall★★★★★★★★★  9