スマホでもPCでもなく「小型スマートテレビ」という新提案
テレビといえば、いまやインターネットに接続できるスマートテレビが一般的になりつつある。スマートテレビの普及によって、地デジやBS/CSデジタルといった従来の放送系コンテンツと、YouTubeやAbema TVのほかAmazon Prime VideoやNetflixなどサブスクリプション型の配信サービスを含むネット系コンテンツが横並びで楽しめるようになり、テレビの役割がグンと広がった。ひとつのコンテンツを通勤時はスマートフォンで、仕事の合間にはPCやタブレットで、帰宅したらリビングのスマートテレビで観る。そんなスタイルを実践している人は多いだろう。
ただ、スマートテレビのサイズは、現状ほとんどが40インチ以上の4Kモデル。リビングに置くならそれで問題ないのだが、書斎や寝室といったパーソナルスペースに置くにはちょっと大きく、「4Kじゃなくてもいいから、もう少し手頃なサイズのスマートテレビがほしい」という声が思いのほか多いという。そんな要望に応えるように登場したのがTCLの32インチ2K液晶モデル、32S515だ。今回はこの32S515を1週間ほど借用し、自宅の仕事部屋(広さは6畳、テレビはもともと置いていない)に設置し、そのパフォーマンスを確かめてみた。
世界第2位を誇るTCLの新型スマートテレビ32S515に注目
まだ家電量販店であまり見かけないこともあり、日本ではそれほど知名度が高いわけではないが、TCLは世界第2位のシェアを誇る中国のテレビメーカーだ。すでに日本でもかなり販売台数を伸ばしており、今秋の新製品発売のタイミングで日本市場にさらなる展開を図る構えだという。
32S515のパネル解像度は水平1366×垂直768画素で、地デジ&BS/110度CSデジタルのダブルチューナー仕様。OSにAndroid TVを搭載し、スマホと同じような操作感でネット系コンテンツにアクセスできる。それでいて実売価格は、なんと3万円を切るという。いまやスマホやPCだって3万円で手に入れるのはなかなか難しいので、この価格には驚くほかない。
「でも、やっぱりパフォーマンスは価格相応なんでしょ?」という声が聞こえてきそうだが、結論から言えばこの32S515、パーソナル用途のスマートテレビとしては最良の選択肢のひとつだと思った。コストパフォーマンスがひじょうに高く、何よりAndroid TVによるスムーズな操作感が魅力で、テレビというよりはスマホやタブレットの延長線上の感覚で使うことができるからだ。
便利な音声検索機能を搭載。リモコン操作もストレスがない
中央にGoogleアシストボタン、最下部にNetflixやYouTubeなどにダイレクトにアクセスできるプリセットボタンを配置したリモコンのレイアウトを見るだけでも、32S515がネット系コンテンツの視聴を重視して企画されたテレビだということがわかる。Googleアシストの音声検索は、日本ではまだまだ「使う人は使うけれども、使わない人はまったく使わない」というのが現状だが、32S515を快適に使いたいなら音声検索はマスト。ただし、たとえばAmazon Prime Videoを視聴中に「Netflixで◯◯が見たい」と話しかけてもうまく検索されなかったりするので、まずはホームボタンなりプリセットボタンで該当サービスを選んでから具体的なコンテンツを話しかける、といったコツは知っておく必要がある。
音声検索だけでなく、メニュー画面での十字キーを使った操作レスポンスも素早くストレスがない。リビングにある同じ32インチの2Kテレビ(10年前の製品で、もちろんスマートテレビではない)と比べると、文字入力のしやすさとスピード感は圧倒的だし、先に触れたようにボタンのレイアウトもより機能的・合理的になっている。リモコン下部にプリセットボタンが用意されていないAmazon Prime Videoのようなサービスはホームボタンから入って選択する必要があるのだが、操作レスポンスがいいのでプリセットボタンでダイレクトに選べるサービスを選ぶ際と、所要時間はそれほど変わらない。
もちろんクロームキャスト機能も便利だ。スマホでYouTubeなどを観ていて、近くに32S515があれば画面上のクロームキャストのボタンを押して、接続デバイスは「デバイス名(初期設定時に決めた名前)」を選択する。それだけでスマホで観ているコンテンツを32S515に表示することができる。Googleアシストの音声検索が便利とはいえ、検索はやっぱり手慣れたスマホでやりたい。そういう人にも欠かせない機能だ。
すっきりとした色味の素直な映像。調整メニューも充実
自宅の仕事部屋には映像機器がなく、この部屋で映像コンテンツを観る際はもっぱらPC(MacBook Air)もしくはiPad Proを使っている。今回は仕事机の脇に32S515を置いて、画面からの距離が約70cmという近接視聴でいつも観ているNetflixやAmazon Prime Video、YouTubeのほか、普段はあまり観ないAbema TVなども長い時間をかけて視聴したのだが、6畳という空間に32インチというサイズ感がちょうどよく、かなり現実的に「使える」と感じた。それは画質も含めての印象だ。
4Kでなく2Kという大前提はあるものの、すっきりした色味の素直な映像が楽しめる。リビングの2Kテレビと比べるとノイズが抑えられ、情報量の多いシーンでのチラつきも少ない。Netflixで映画『ジョーカー』を観ると、暗部の多い作品だけに黒がやや浮いたシーンも見受けられるが、青白い蛍光灯に照らし出された顔色の悪い主人公の悲壮感から、クライマックスの暴動シーンで街を包み込む紅蓮の炎の鮮やかさなど、作品を奥深く味わうために求められる映像表現はよく伝わってくる。各種映像調整メニューも充実していて、ノイズリダクション系の調整をオフにすることで主人公が「ジョーカー」となって身につけた赤いジャケットの生地のディテイルがよく見えるようになったことは驚いた。
パーソナル用途のスマートテレビとしてぜひおすすめしたい
いまや4Kテレビには必ずスマート機能が搭載されているが、それを32インチの2Kテレビで実現させたところが32S515の画期的なところだ。「小型のテレビ」としてではなく、「大型&据置きのスマホ/タブレット」とか「放送も表示できるPCモニター」として捉えると、いろいろな可能性が見えてくると思う。パーソナル用途スマートテレビのスタンダードとして、多くの人におすすめしたい。また、こんな新発想のテレビを送り出すTCLというニューカマーにも注目したい。
Smart TV
TCL
32S515
オープン価格(実勢価格 2万7,000円前後)
● 型式:VA液晶テレビ
● 画面サイズ:32インチ
● 解像度:水平1366✕垂直768画素
● バックライト:直下型LED
● 内蔵チューナー:地上デジタル✕2、BSデジタル/CS110度デジタル✕2
● 接続端子:HDMI2系統(最大入力解像度1080p、CEC/HDCP2.0対応、ARC対応1系統)、デジタル音声出力1系統(光)、LAN1系統、USB1系統(番組録画用外付けHDD対応)、ほか
● 主なネットワーク機能:Android TV OS9.0、Googleアシスト、VOD(YouTube / Netflix / Hulu / U-Next / GYAO / AbemaTV / FOD / Rakuten TV / Tsutaya TV / AWA / DAZN / スカパー / VideoMarket / dTV / Amazon Prime Video / K-BOX)、Chromecast built-in、MultiMedia Player、Web Browser、ほか
● 寸法/質量:W731✕H491✕D186mm/4.4kg
● ラインナップ:40インチモデル(フルHD液晶搭載。実勢価格 3万4,000円前後)
● 問合せ先:株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS フリーダイヤル 0120-955-517