名球を所有している人には好適なアンプ
カトレアブランドによるヨーロッパシリーズの出力管PX25版。KR製PX25搭載の完成品で、出力管なしの仕様も用意される。
直熱出力管は交流点火しているがハム対策が必要だ。そこで自己バイアスカソード回路のハムバランサーとともに、独自のヒーターハムキャンセル回路をL/R別に用いている。初段は傍熱型3極管のMH4を採用。コンデンサー結合で無帰還である。出力トランスはオリエントカットコア。直熱整流管は5U4G。出力段用電源は大型チョークによる平滑だが、初段用電源は独立巻線とMOS-FETによるアクティヴ型平滑回路を採用。
試聴機に取り付けられたPX25はオスラムの旧型だろうか、いかにも大作りの電極支持法であり、そのためアンプの設置場所、支持法に敏感であり音質が大きく変化するので要注意。
高い純度を持ち高密度で引き締まった音像は、どの音楽分野でも格別な魅力を振りまく。バロックヴァイオリンのアンドルー・マンゼによる「ビーバー・ソナタ集」など、弦の振動ぶりが克明で生まれたての音波を浴びる爽快感は一生脳裏に刻印されそう。長岡京アンサンブル「デビュー」(SACD)のヘンデルも個々の弦が響きあい、互いの響和成分になりつつ掛け合いしている様子が現認できる。デューク・エリントンの「リンボ・ジャズ」などホーンの押しの強さと色艶が抜きんでているし、ドラムのリムショットはスティックの硬質感が感動的だ。各種ヴォーカルも実に鮮明。ナメされた音ではないので中域が目立つこともあるが、名球を所有している人には好適なアンプだ。