デノンから8K映像信号に対応した一体型AVセンターが2モデル発表された。11chパワーアンプ内蔵の「AVC-X6700H」(¥330,000、税別、8月下旬発売)と、9chパワーアンプ内蔵の「AVR-X4700H」(¥180,000、税別、7月下旬発売)というラインナップだ。

11chパワーアンプ内蔵の上位モデル「AVC-X6700H」

 デノンでは1990年代のアナログサラウンドの時代からAVセンターの最先端を走るモデルを送り出してきた。1991年の「AVP-5000」や1996年の「AVP-A1」、2007年の「AVC-A1HD」など、今でも型番を覚えているという方は多いだろう。

 同社ではこの長いAVセンターの歴史の中で、音作りについてひとつのポリシーを持つに至ったという。それが「ストレートデコード」で、昨今は特にサラウンドソースの高音質化に伴い、もともとの音を加工しないでユーザーに届けるという方向で製品を仕上げている。今回の2モデルもその延長にあり、ストレートでピュアな音を狙っている。

 それをベースに、両機には2020年新製品ならではの機能が与えられた。8K映像信号に対応したHDMI入出力を搭載したのだ。入力1系統(HDMI7)、出力は2系統(モニター1/2)というもので、8K/60pや4K/120p信号も入力可能。著作権保護技術はHDCP2.3に対応済み。さらに2Kや4K信号をアップコンバートして8K/60p、4K/60pで出力する機能も備えている。

 一昨年に始まったBS8K放送に加え、プレイステーション5やXbox Series Xなど今年後半には8K映像を楽しめる製品の登場が期待されている。デノンではこれら8K/ストリーミング時代を先取りするモデルとして今回のシリーズを投入してきたのだろう。特に全世界的には4Kの普及に映像配信、ストリーミングが果たした役割は大きく、同様のことは8Kでも起こるとみているようだ。

9chパワーアンプ内蔵の「AVR-X4700H」。本体サイズはX6700Hと同じだ

 ちなみに8K信号に対応したHDMIチップはまだ数社しか供給しておらず、今回の2モデルに搭載されたのは最高速度40Gbps対応のチップになるそうだ。ただし40Gbpsでも8K/60p/4:2:0信号は伝送できるので、ホームシアターでの使用ではまったく問題ないとのことだった。

 8K以外のHDMI関連機能としては、5種類のHDR(HDR10、HLG、HDR10+、ドルビービジョン、ダイナミックHDR)にも対応した。さらに「ALLM」(Audio Low Latency Mode=自動低レイテンシーモード)や「VRR」(Variable Refresh Rate=可変フレームレート表示)などゲームファンが喜びそうな仕様もクリアーしており、まさに今後の高品位映像時代にふさわしい対応力を備えている。

 オーディオ面では、ドルビーアトモス、DTS:X Pro(後日アップデート予定)、オーロ3D、IMAX Enhancedといった現在求められるコーデックを網羅。新たにMPEG-4 AACの5.1chデコードが可能になった。

 MPEG-4 AACはBS4K8K放送で既に採用されているが、これまでは対応AVセンターは発売されておらず、4K単体チューナーや4Kレコーダー側でリニアPCMに変換して出力していた。もちろんその状態でも5.1chで楽しめるのだが、デノンによると変換の際にLFEのバランスが保てない可能性もあったとかで、X6700HやX4700Hを使うことで放送でのサラウンドもクォリティ向上が期待できるようだ。

 残念ながら現在発売されている4K単体チューナーやレコーダーの中にはMPEG-4 AACのストリーム出力に対応していない製品も多いが、そのあたりは今後各社が対応していくことを期待したい。

 また両モデルともNetwork-HEOSテクノロジーを搭載済みで、ハイレゾを含めた音楽ストリーミング(Amazon Music HD、AWA、Spotify、Sound Cloud)も簡単に楽しめる。もちろんNASやUSBメモリーに保存したハイレゾ音源(FLAC/WAV/ALACは最大192kHz/24ビット、DSDは最大5.6MHz)の再生も可能だ。

X6700Hの内部構造。写真右側手前に11chぶんのパワーアンプ基板が並んでいる

 回路面ではX6700H、X4700Hとも上位モデルとなる「AVC-X8500H」に採用されているものと同じDSPを新搭載。処理能力が上がったことでX6700Hでは13.2ch、X4700Hも11.2ch再生が可能になった(どちらも外部パワーアンプが必要)。X8500Hで注目されたプリアンプモードも搭載済みで、このモードを選ぶとパワーアンプ部の電源部から停止するので、セパレートのオーディオシステムを組んでいる方にも最適だ。

 また昨今のサラウンド再生では、D/Aコンバーターの品質もひじょうに重要となる。それを踏まえてX6700H、X4700HともDACを単独の基板で設計し、デジタル回路から独立させている。さらにDACの周辺回路設計も進化させ、動作点の改善や出力アップ、信号ラインのインピーンダンスを可能な限り下げるといった改良も加えられている。さらにX6700HではDAC用に専用電源を与えるなど、動作条件にまで配慮している。

 パワーアンプ回路は、モノリス・コンストラクション・パワーアンプレイアウトを踏襲。X6700Hではすべてのチャンネルを独立基板としてチャンネル間の品質確保とクロストークの低減を達成している。大容量EIコアトランスやブロックコンデンサーにカスタムパーツを投入しているのもデノン流だろう。

 もうひとつ細かいことだが、Bluetoothの送信機能も浸透際されており、再生中のコンテンツをBluetoothイヤホンやヘッドホンでモニターできる。夜中の試聴だけでなく、リビングで再生している音楽をキッチンで一緒に聴くといった家族みんなでの楽しみ方も広がる。

デノンの試聴室でドルビーアトモスやオーロ3Dのデモも体験した

 デノンの視聴室で最終モデルの音を確認することができた。スピーカーにB&W 800D3やHTM1 D3を使った豪華な環境でCD(2ch再生)やブルーレイ(ドルビーアトモス、オーロ3D)を再生してもらった。

 まずX4700HのCD再生では、ドラムの低域がしっかり再現され、すっきりまとまりのいい音が聴ける。S/Nがよく、スタジオの空気感、音のディテイルもしっかりわかるし、男性・女性の声の張り出し感にも微妙な違いが再現されている。

 ブルーレイでは、アクションアニメの効果音が明瞭で、細かい音にも芯がある。ナイフで切りつける音などもスピードがあって怖い。オーロ3Dで収録された実写のSF作品では、セリフが聞き取りやすく、音に包囲される印象が強い。情報密度が濃い、とでもいえばいいだろうか。

 続くX6700Hでは、音のディテイルをさらに描き出してくれた。CDのドラムも皮の張りがよくなったようで、低音が弾む。声の重なりのニュアンスも見事だし、音場も広くなったように感じる。

 オーロ3DのSF作品は、酸性雨が降りしきる描写がよりリアルになるし、宇宙空間からの爆撃ではスピード感のある低音に衝撃を受けた。ドルビーアトモスは5.2.6環境で再生してもらったが、こちらも低音が心地よく響き、群衆の歓声が主人公を取り巻く様子に思わず周囲を見回してしまった。

 デモでは、X6700H、X4700HともS/Nのよさが秀逸だったが、音決めを担当したサウンドマエンージャーの山内慎一氏によると、今回の新製品では「Vivid & Specious」というデノンのポリシーを尊重しつつ、ソースの持ち味をピュアに再生することを意識したとかで、その結果実現されたパフォーマンスなのかもしれない。

両モデルの開発時には8K信号がなかったため、写真右の信号発生器や左の測定器を使って手探りで作り上げていったのだとか

 2モデルの主な違いは、先述したプロセッシング能力(X6700Hが13.2ch、X4700Hは11.2chまで)や内蔵パワーアンプ数(11chと9ch)、入出力端子数などで、その他の機能はほぼ同等となっている。もちろん使われているパーツやパワーアンプの構成などには違いはあるが、X4700Hも相当にお買い得といえるだろう。

 最後にデノンではフラッグシップモデルAVC-X8500Hのユーザーに向けて8K信号に対応するアップグレードサービス(有償)も企画している。実施時期は今年の年末頃を目指しているとのことで、詳細は決まり次第発表される予定だ。

「AVC-X6700H」の主なスペック

●搭載パワーアンプ数:11ch
●定格出力(8Ω、20Hz〜20kHz、THD 0.05%、2ch駆動):140W×2
●周波数特性:10Hz〜100kHz(+1,-3dB、ダイレクトモード時)
●無線LAN:IEEE 802.11a/b/g/n準拠
●Bluetooth対応コーデック:SBC
●接続端子:HDMI入力×8(フロント×1、8K対応×1)、HDMI出力×3(8K対応×2)、コンポジット映像入力×4、コンポーネント映像入力×2、コンポジット映像出力×2、コンポーネント映像出力×1、アナログ音声入力×7、PHONO入力×1、デジタル入力×4(光×2、同軸×2)、13.2chプリアウト×1、ヘッドホン出力×1、LAN端子×1、USB Type-A×1、他
●消費電力:750W(待機時0.1W)
●寸法/質量:W434×H167×D389mm(端子含む、アンテナを倒した場合)/14.8kg

「AVR-X4700H」の主なスペック

●搭載パワーアンプ数:9ch
●定格出力(8Ω、20Hz〜20kHz、THD 0.05%、2ch駆動):125W×2
●周波数特性:10Hz〜100kHz(+1,-3dB、ダイレクトモード時)
●無線LAN:IEEE 802.11a/b/g/n準拠
●Bluetooth対応コーデック:SBC
●接続端子:HDMI入力×8(フロント×1、8K対応×1)、HDMI出力×3(8K対応×2)、コンポジット映像入力×3、コンポーネント映像入力×2、コンポジット映像出力×2、コンポーネント映像出力×1、アナログ音声入力×5、PHONO入力×1、デジタル入力×4(光×2、同軸×2)、11.2chプリアウト×1、ヘッドホン出力×1、LAN端子×1、USB Type-A×1、他
●消費電力:710W(待機時0.1W)
●寸法/質量:W434×H167×D389mm(端子含む、アンテナを倒した場合)/13.7kg