来る7月3日(金)に、池袋の東口から徒歩5分ほどの複合施設Hareza(ハレザ)池袋に「TOHOシネマズ池袋」がオープンする。全10スクリーン、計1735席のシネマコンプレックス。先日その内覧会に参加し、実際の映写や音響に接したので当日の印象をお伝えしたい。

 読者の皆さんが何より気になるのは、この新劇場が「サウンド・シアター」というこれまでなかった個性を前面に打ち出してきたことだろう。

TOHOシネマズ池袋のエントランス。写真中央の大階段を上った正面に劇場の入り口がある

 先行レポートにあったように、まずは片チャンネルに2基ずつ4つ、左右で計8基のサブウーファーがアイソバリック方式で配置され、スクリーン前面に鎮座している2番スクリーンの威容に驚く。143席、スクリーンサイズは幅9.9×高さ4.6m。裏返しになったウーファーが客席に向けてむき出しになっている、ある意味ホームシアター的な光景だ。

 全身に音を浴びるという感じのデモ上映を体験したが、サラウンドスピーカーもこの轟音に対応したカスタム設計のものが用意されており、ただ耳に痛いだけではなくきちんとバランスが取れている。滲みも無い。この怪物的なシステムのエイジングが進んだら、どのような表情を見せるのかが楽しみに思えた。

 わずか数分間の上映だったが、場内が明るくなると重いサブウーファーがおのれの振動で何cmか動いてしまっている。凄まじいパワーだ。グランドオープンまでどのような形で設置、固定するか、さらに調整されるとのこと。

切れのいい低音を全身で浴びる。轟音上映を目指した2番シアター

2番シアターは座席数143(車椅子席2)とTOHOシネマズ池袋の中では小ぶりな劇場となる。そのスクリーン前には大型サブウーファーが左右にそれぞれ1基置かれ、質のいい低音を体験できるよう配慮されている

サブウーファーを含めて、使っているスピーカーはすべてイースタンサウンドファクトリーの監修によるカスタムモデル。サラウンド用には同軸ユニットにダブルウーファーを組み合わせた縦長のスピーカーを設計した

お披露目時には、サブウーファーはフロアーに直接置かれていたが、轟音を再生するとキャビネットが数cm動いていた。オープンまでにどのように設置するかを追い込むとの話だった

上映時の詳細をインタビューする久保田さん。轟音上映時には規格の範囲内で低音や高音のバランスを微調整して、より迫力があって切れのいいサウンドを再現するのだとか

 それぞれ315席の6番、10番スクリーンには、TOHOシネマズ日比谷に導入され、シネマコンプレックスの水準を大きく引き上げたプレミアムシアター規格(巨大スクリーン『TCXスクリーン』+『プレミアムボックスシート』+『カスタムオーダーメイドスピーカー』)が採用されている。

 スクリーンサイズは幅14.4×高さ6.2m。ドルビーアトモスを日本で初めてカスタムスピーカーで導入した10番スクリーンで(商業用の映画館として)、アトモスのデモンストレーション・フィルムを鑑賞した。

 天井を含めたサラウンドスピーカーは、エンクロージャーや取り付け金具を含めすべてが専用の特注品。スクリーン裏には6番シアターと同じ「カスタム4wayハイコアキシャル」が使用されている。

 高解像でたいへんに見晴らしがよく、イマーシヴオーディオならではのスムーズな移動感が楽しめた。セリフの定位、リアリティもいい。ひじょうにベースの高い再生という印象。ここで上質なドルビーアトモス作品を鑑賞したら得るものがたくさんありそうだ。

映画以外のコンテンツも高品質に上映できる。カスタムスピーカーで仕上げた6番シアター

6番シアターは、TOHOシネマズ日比谷のメインシアターで音がいいと評判を呼んだ、イースタンサウンドファクトリー監修のカスタムスピーカーを採用した7.1ch仕様の劇場となる

サラウンドスピーカーは同軸ユニット+ウーファーの3ウェイシステムで、キャビネットも今回の空間に合わせて設計された薄型仕様となる。壁への取り付け金具もそれぞれの位置に合わせた特注品を使用

 この10番スクリーンはライヴ・コンサートやスポーツ中継などのODS(アザー・デジタル・スタッフ)に対応しており、コンテンツ収録時の残響や反響を演算し独自のエフェクトを掛ける再生が可能とのこと。実際にライヴ演奏の音源を聴かせてもらったが、エフェクトが入るとヴォーカルに芯が入り、広い劇場内で定位感が得られた。映画館では味わったことのないスピーカーリスニング的な体験? とても面白かった。

 またすべてのスクリーンにソニーの4Kデジタル・シネマ・プロジェクター「R815」が導入されており、ツイン・レーザー映写(2台スタック)の10番スクリーンでは暗転の場面で場内がしっかりと闇に沈んだ。

 近日上映予定の武侠アクション『ムーラン』予告篇の薄明かりのなかでの表現、主演リウ・イーフェンの肌も美しい。30000ルーメン、コントラストは10,000:1。そうとうに追い込んだ調整がされているのではないか。サウンドだけでなく映像にも太鼓判が押せる。

10番シアターの、カスタムスピーカーによるドルビーアトモス再生は圧巻

6番シアターと10番シアターは座席数315(車椅子席2)で、TOHOシネマズ池袋では最大サイズとなる。傾斜もつけられているので、前の人の頭がかぶるようなことはない

トップスピーカーは天井に7基を2列配置。サラウンドも同じく左右に各7基、サラウンドバックは左右各4基で、それぞれベースマネージメント用のサブウーファーも取り付けられている

トップやサラウンド用に設計されたカスタムスピーカー。20cmユニットを搭載したモデルで、上面と下面に曲面加工を加えたエンクロージャーを開発したとのこと

6番と10番シアターには、プレミアムボックスシートがそれぞれ9席準備されている。写真は10番シアターのプレミアムボックスシートに座る久保田さん

 Hareza池袋は、TOHOシネマズ池袋以外に、コンサート、ミュージカル、歌舞伎、宝塚歌劇などの開催が可能な「東京建物Brillia HALL」、ポニーキャニオンが運営するライブスペース「harevutai」、多目的ホールがある「としま区民センター」などの3つの棟で構成された複合施設で、前庭空間として中池袋公園が広がっている。

 レッドカーペット・イベントも開催できそうな広い入り口階段からTOHOシネマズ池袋を見上げると、この劇場はこれまでのシネマコンプレックスとは立ち位置の違う情報発信基地に育ちそうな気がしてくる。『スター・ウォーズ』やマーベル映画の上映のときには中池袋公園にコスプレイヤーたちが集まってくるような。

 他のTOHOシネマズと違い、あって当たり前のIMAXや4DXシアターが入っていないのも興味深いところだ。王道を行く。そこで差別化を考えているのだろう。現在のコロナ禍が本当に残念だけれど、他の施設とも歩調を合わせた今後のダイナミックな展開に期待したい。

「TOHOシネマズ池袋」
●座席数(車椅子席)
 1番シアター:78(2)、2番シアター:143(2)、3番シアター:200(2)、
 4番シアター:121(2)、5番シアター:121(2)、6番シアター:315(2)、
 7番シアター:200(2)、8番シアター:121(2)、
 9番シアター:121(2)、10番シアター:315(2)
●住所:東京都豊島区東池袋1-18-1 Hareza Tower内