昨年上演され人気を博した舞台『HERO~2019夏~』が、同じキャストで、さらに松尾諭と斎藤工を加えて映画化され、『HERO~2020~』として6月19日(金)より全国順次公開されることになった。ここでは、舞台版に引き続いて兄想いの妹・飯塚真菜を演じた前島亜美にインタビューした。

――出演、おめでとうございます。今回、舞台と映画、両作に出演していかがでしたか?

 ありがとうございます。同じ作品で、舞台と映画の両方に出演できるのは初めてでしたので、とっても楽しみでした。しかも、映像作品は久しぶりでしたので、嬉しさも倍増でしたね。

――演出は舞台と映画とでは違うのでしょうか?

 基本は変わらず、どちらも、稽古の段階から、ナチュラルさとリアルさを求められたのは記憶に残っています。作品としては、コメディ的な要素もたくさんありますけど、人間ドラマとして、(監督が)すごくていねいに演出をされていたのを覚えています。

――前島さんの演じた飯塚真菜は、どんな女の子でしょう?

 とにかく兄想いな女の子だなって感じました。両親を亡くしていることもあって、唯一の肉親であるお兄ちゃんのために奔走するんですけど、そんなにも全力になれるのって素敵ですよね。元気で明るいし、自分から行動を起こしたり、いろんな人を巻き込んだり、勇気と実行力のある反面、ちょっとから回っちゃうような可愛らしさもあるので、そうした面も表現するようにしました。

――役作りには、長いこと海外生活をしていたという設定も含まれる?

 あるかもしれないですねー(笑)。社交性にも富んでいますし、お兄ちゃんの彼女=浅美(北原里英)さんの応援もするじゃないですか。「絶対に別れないほうがいいよ」って、強めな発言もしますし、自分の意見をはっきり言える子なんだなって、感じました。

――そんな真菜は、お兄ちゃんの見舞いに行くと、いきなり別れ話を聞かされて(笑)。

 それに振り回されるのかと思ったら、実は、自分の行動がきっかけで、ほかの人たちをさらに巻き込んで行ってしまって……。心情的には複雑なところもありますけど、とにかくがむしゃらにお兄ちゃんの決心を変えさせようって! もうそれしか考えずに一直線に行動していくのは、真菜らしいなって思いました。

――週刊誌の怪しい広告にも飛びついてしまうし。

 私も怪しいなって思いましたよ(笑)。あれを見て(依頼に)行くのは勇敢だなって感じますけど、逆に言えば、そこまで追い詰められていたのかもと思いました。そんなピュアなところもあるし、でも、兄のためにそこまでできるのは、素敵なことですね。

――派遣会社の社長と秘書は見るからに怪しかったです。

 本当ですよ。あんな真っ赤なスーツを着ている秘書が実際にいたら、怖いですよね。けれども、現場はすっごく面白かったんです。秘書・舞子役の小築舞衣さんと、社長・松島役の小松準弥さんは、本番での息を合わせるために待ち時間はずっと練習をされていたんです。それを聞いている私までセリフを覚えてしまうほどだったのに、本番ではたまにかみ合わなかったりするのが、面白かったです。映画版には、二人の息ぴったりな姿が収められていますので、注目してほしいです。

――ところで、演じられた真菜の役づくりについてお聞きします。舞台と映画でなにか変更したりしていますか?

 基本は変えていませんけど、舞台・映画、それぞれの媒体に合わせて、表現の仕方は変えています。舞台では、体全体を使って、それこそ、一番後ろに座っているお客さんまで届くようにかなりのエネルギーを使って発声や動きをすることが多いんですけど、映像作品ではすぐ近くにいるカメラに向かってのお芝居になるし、必然的にバストアップが多くなることもあって、特に表情の作り方に注意しながらお芝居をしました。その部分については、監督と、それこそカットごとに話し合いながらやりました。

――監督の演出で覚えているのは?

 舞台の時から、リアルなお芝居をしてほしいと仰っていましたけど、映画版では、さらにそこにこだわっていたように思います。シーンが撮り終わっても、もう一度やってみようかという具合で、粘って粘っていいものにしたいという強い意志は伝わってきました。私も、それを受けて、もっといいお芝居をしたいと思いながらやっていましたね。

――映画版では、舞台と違っていろいろな場所での撮影もありした。

 舞台よりも(その場のことを)分かりやすくイメージできたんじゃないでしょうか。真菜で言えばお墓参りのシーンもあって、どういう家族だったんだろうなということが、より分かりやすくなったのかなと感じています。(撮影は)楽しかったですよ。兄と真菜との関係についても、改めて発見することもありました。

――タイトルにもなっているヒーローシーンも、豪華になっていました。

 そうですよね。死神大佐も、さらにカッコよくなっていました。私は空手をやっていたこともあってアクションが大好きなので、ヒーローになりたかったなーという思いも強くなりました。

――本作は舞台に続いて、伏線が多いですね。

 そこがまた、面白いんですよ。特に、伏線そのものは舞台版と同じなんですけど、その場にいるキャストの数も多くなっているし、私のお芝居が大事な伏線につながっている、というシーンもあって! きちんとお客さんに伝わっているのかな? という不安もありました。でも、試写を観て、うまくできていたなって思えたので、よかったです。ある意味、舞台版よりも分かりやすくなっているんじゃないでしょうか。

――後半、お兄さんに真相を聞き出そうとして、皆で頑張るところは、舞台版とはまた違う面白さがありました。

 そうですよね。撮影もすごく楽しかったです。舞台の時からとても面白いシーンになっていて、笑わないようにって頑張りながら演じていましたから(笑)。おかげで、みんなの団結力が上がっていって、映画では、チームワークも高い状態で撮影に臨むことができました。

――現場での思い出はありますか?

 とにかく和気あいあいとしていました。北原さんが持ってきたカードゲームで、みんなで遊んだり、伊藤(裕一)さんが弾くウクレレを聞いたりしていました。実は私もウクレレを持っているので、弾き方を教わればよかったなーと、少し後悔しています。

――前島さんが印象に残っているシーンは?

 やはり、お兄ちゃんがなぜ、恋を2年限定にしているのか、その理由を話すところですね。妹としても初耳だったので(その伏線もあり)、そういうことがあったのかと、聞かされた内容には衝撃を受けました。

――本作では、タイトルにある通り「HERO」がテーマになっています。前島さんの思うヒーローとは?

 先輩ですね。小さいころから年上というか先輩といることが多かったこともあって、先輩というものにすごく憧れがあったんです。(先輩は)自分よりも優れたものを持っていたり、何かを極めていたり、熱中していたり、知らないことを教えてくれたりと、人生の先達としてとってもかっこいいなと思っていました。そういった、自分にないものを持っている先輩が私のヒーローでしたし、尊敬していました。

――前島さんは、そういう先輩になれていますか?

 いやぁ、どうでしょう。まだ22歳なので後輩が少ないこともあって、自分が憧れた先輩(ヒーロー)になれているのかな? なれるように、頑張りたいです。

――グループを卒業して、ソロの活動も長くなりましたが、振り返っていかがですか?

 映画は6月の公開で、そして私も同じ6月で、お仕事を始めてちょうど10年になります。いまは、一人の大人の女性として、好きなお芝居ができることを心から楽しんでいますし、これからも楽しみながらやっていきたいと思います。一方、プライベートでは、もっと自分を磨いて、人間性を豊かにしたいです。

――そのためには?

 最近はいろいろな生活スタイルを試しながら、どれが自分に合うんだろうって考えたり、新しい趣味を探したりしています。もともとそれほどアクティブな方ではないので、この期間は、自宅で充実した時間を過ごしていました(笑)。おかげで、料理がより好きになって、話題のお菓子のレシピを見ながら自分で作ったりしていました。やっぱり何かを作るのが自分に合っているのかなって、感じています。この間は陶芸教室に通って、お茶碗も作りましたから!

――今後の女優としての目標は?

 昔から演劇が好きで、いまはそれが実現して、楽しく過ごさせてもらっています。さらに3年ほど前から、声優のお仕事もするようになりました。最初のうちは、女優と声優のお芝居の違い――息遣いとか、セリフの抑揚の表現など――に悩んだりもしましたけど、徐々に慣れてきて、両立できるようになってきたのかなって感じています。舞台、声優、映画(映像)と、いろいろなコンテンツで、もっといろいろな役を演じられる女優になりたいです。

――ところで、弊社はホームシアターの専門誌も刊行しています。そうした趣味に興味はありますか?

 素敵ですよね。今は普通のテレビで見ているので、いつかは欲しいなーって思っているんです。このお家期間の間は映画館へも行けなくなっていたので、憧れがより強くなりました。洋画、邦画から、最近は海外のドラマシリーズにもハマっていますし、海外の舞台が限定公開されていたので、そうした作品もよく観ていました。いつかは自宅にシステムを揃えて、作品の臨場感を、より味わいたいです。

映画「HERO~2020~」

6月19日(金)より シネ・リーブル池袋ほか 全国順次公開
<キャスト>
廣瀬智紀 北原里英
小松準弥 前島亜美 小早川俊輔
小築舞衣 中村涼子 米千晴 小槙まこ 加藤玲大 後藤拓斗 双松桃子
飛鳥凛 伊藤裕一 根本正勝 今立進
松尾諭 斎藤工(友情出演)

<スタッフ>
原作:TAIYO MAGIC FILM 第一回公演「HERO」
エグゼクティブプロデューサー:石田誠 中西研二 プロデューサー:村田泰介
脚本・脚本:西条みつとし
配給:ベストブレーン 企画:MMJ 製作:「HERO」~2020~製作委員会

「HERO~2020~」公式HP https://www.mmj-pro.co.jp/hero2020/
前島亜美 https://maeshima-ami.jp/

ヘアメイク:前川泰之
スタイリスト:河原歩
衣装:
 レースシャツドレス -NVY-¥27,000(税抜) ブランド名:Estella.K
 エステラケーサイト https://estella-k.com/
 問い合わせ先 (株)ジャミン
 151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷1-19-9 セルモビル201
 TEL 03-5413-1731(代)

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