画質を追求した高級機は「有機ELテレビ」、見やすさ(特に明るさ)と求めやすさ(価格)をバランスさせたスタンダード機は「液晶テレビ」という明確な方針を打ち出しているパナソニックの4Kビエラ。今年のラインナップでもその考え方に変わりはない。

 

群を抜いた高画質が魅力のGZ2000

 まず有機ELだが、独自設計パネルに、駆動回路、色調制御に至るまで専用に開発した最高峰、GZ2000シリーズ(2019年7月発売)を継続販売として、汎用パネルながら、映像エンジンに新機軸を投じて、画質に磨きをかけたHZ1800/HZ1000のふたつの新シリーズが加わるという構成。2シリーズの違いはスピーカーシステムの違いのみ(画面サイズは、全ライン65/55インチの2サイズでの展開)。

 

4K有機ELテレビ
TH-65GZ2000
オープン価格(実勢価格50万円前後)
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4K有機ELビエラのトップモデル。自社組立ての「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」を採用。家庭用有機ELテレビとして、史上もっとも明るく、もっとも黒表現に優れるモデルとして名高い

 

4K有機ELテレビ
TH-65HZ1800
オープン価格
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ビエラ2020年の新モデルとして登場。GZ2000同様、画面背後に上向きスピーカーが組み込まれた「ドルビーイネーブルドスピーカー」を搭載。立体音響と高画質が両立した4K有機ELテレビだ

 

 

 まずGZ2000シリーズだが、その実力はいまもトップレベル。映像の基礎体力となるダイナミックレンジの広さでライバルを圧倒し、それも単に画面の明るさが際立っているだけでなく、明るい部分の中の情報が浮き上がり、画面全体のなめらかさも素晴らしい。もちろん有機ELテレビの長所である、暗部/黒はよく締まるが、加えて、暗部の中にある細部の描写が意欲的で、色もしっかりと表現される。こうした総合的な表現力はすべての有機ELテレビの中で、群を抜いた存在だ。

 2020年の新製品、HZ1800/HZ1000は他社同様、LGディスプレイから調達した汎用の有機ELパネルだが、GZ2000の開発で培った技術/ノウハウを投じることで、基本画質を押し上げている。映像エンジンは2019年モデルと同じ「ヘキサクロマドライブ プラス」。今回、4K放送のHLG(ハイブリッド・ログガンマ)方式のHDR映像向けに信号処理アルゴリズムを開発し、「AI HDRリマスター」の進化版を搭載している。

 具体的には、HLG映像の明るさ情報をシーンごとにリアルタイムで解析し、その映像をパネル性能に最適な明るさとして表示させるというもの。昨今、一部で指摘されている「4K放送は暗い」という声に応えたもので、民放キー局が放送している2Kから変換して4K放送しているHDR番組も含めて、明るく、高コントラストで楽しめるようになった。

 同時に、明るさ情報(輝度)、色情報を画素単位で制御するパネル制御技術「Dot Contrastパネルコントローラー」についても、明るさの分布を解析/制御するアルゴリズムを追加。結果として、暗いシーンの再現性を高めているという。

 実際、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』のBS4K放送版で確認したが、黒の締まり、艶、輝き感と、有機ELテレビの優位性は明らかだが、本機ではそれを強調するのではなく、あくまでも自然なタッチで、映像のなめらかさ(グラデーション)を重視したチューニングに仕上げている。

 色彩表現も派手すぎず、ニュートラル。画面の不要なざらつき(ノイズ感)もなく、色も鮮やか。全体として一皮むけた印象で、暗部の中にある細部情報が無理なく浮かび上がる。このあたりの表現力はまさにGZ2000シリーズに通じるもの。大きな進歩だ。

 なおHDR方式は、従来同様、HDR10、HLG、HDR10+、ドルビービジョンの4方式に対応。さらにドルビービジョン映像再生時、視聴環境も加味して、最適な映像の状態で自動的に表示する「ドルビービジョンIQ(アイキュー)」も新たにサポートしている。

 サウンド面は全機種ドルビーアトモス音声対応だが、HZ1800は、GZ2000同様、テレビ背面上部に上向き配置にしたイネーブルドスピーカーを2基搭載している。GZ2000に比べると、センタースピーカーが省略され、最大出力も80Wと控えめという違いはあるが、リモコン内蔵マイクで音響環境を実測し、最適な音質補正を自動的に行なう「Space Tune Auto」を新搭載。通常のステレオ音源も含めて、音質改善を目指す。

 スタンドは、底面がテレビ台にしっかり吸着する「転倒防止スタンド」を採用しつつ、薄型化を実現。さらに左右15度、合計30度のスイーベル(首ふり)機構も備えている。

 

パナソニックのこだわり技術 ①
転倒防止スタンド

吸盤付きで地震に強い
スタンド底面に組み込んだ特殊な構造により、テレビ台など接地面との間を真空に近い状態にして、地震などの強い揺れが生じても本体の転倒を防ぐという独自の吸着スタンド。具体的には、設置面から離れる力がはたらくと、テレビ設置面にスタンドが吸着する。地震はもちろん、子供が画面を揺らしても簡単には本体は倒れない。スライド式スイッチで吸着オン/オフがワンタッチで可能。

 

パナソニックのこだわり技術 ②
Dot Contrastパネルコントローラー

明部、暗部ともに表現力を向上
画素単位で光と色を分離し、それぞれに最適な制御を行なうことによって、より鮮明な明暗表現や、色鮮やかな表現を実現する独自の有機ELパネル制御技術。今年のモデルでは新たに明るさの分布も解析し、その制御アルゴリズムを追加。一定の明るさを保ちつつ、さらなる高コントラスト化を実現した。暗いシーンでも黒つぶれがなく、微細な情報が鮮明に浮き上がる。

 

パナソニックのこだわり技術 ③
Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ

自社組立の高性能有機ELパネル
有機ELセル(表示部分)と一部の駆動パーツを、部品として調達し、独自設計のパネルとして組み立てた。併せて、パネルの駆動や色彩制御に、新たな技術・工夫を盛り込んだGZ2000シリーズ専用の「スペシャルパネル」。明るさが向上しただけでなく、暗部の表現力(特になめらかさ、階調性)が向上し、従来に増して余計な色がつくことのないなめらかなグラデーションを実現。生産時に発生しがちな、有機ELパネル特性のばらつきもよく抑え込まれている。

 

 

液晶ビエラ最高峰HX950に注目

 4K液晶テレビは、高輝度/倍速液晶パネル搭載の高級グレードのHX950(65/55インチ)ラインを筆頭に、倍速液晶パネル搭載のスタンダードグレードのHX900/HX850(75/65/55/49/43インチ)ライン、そして標準(ノーマル)駆動の液晶パネルを搭載した入門グレードのHX750(55/49/43インチ)ラインが続くという全4ライン10製品の構成だ(そのほかレコーダー一体型GR770シリーズ2モデルあり)。

 

4K液晶テレビ
TH-49HX850
オープン価格(実勢価格16万円前後)

視野角が広くリビングルームにぴったりの49インチIPS液晶テレビ。4K放送のHLG方式HDR映像が明るく見られる「AI HDRリマスター」を進化させ搭載。地震に強い転倒防止スタンドも採用されている

 

 

 家庭用テレビとしては、視野角による画質の変化はできる限り少ないほうが好ましいという判断から、VA液晶パネル搭載の75インチモデルを除き、IPS液晶で統一している。ここで見逃せないのは、HX850シリーズの49/43インチモデルについても、画質重視の倍速IPS液晶を搭載していること。50インチサイズ以下の4Kテレビでは、標準(ノーマル)駆動の液晶パネルを採用するモデルがほとんどだけに、この2製品は貴重だ。

 液晶ビエラとして注目されるのは、やはり最高峰のHX950シリーズだろう。有機ELのスマートさを彷彿とさせる特徴的な薄型デザインを実現しつつ、高輝度化と高コントラスト化を実現した「独自設計 高輝度液晶ディスプレイ」を採用。高効率LEDバックライトの採用に加えて、放熱構造を強化、同時に液晶パネルに必須となる光学シートという部品の最適化により、開発陣は「液晶VIERA史上最高クラスの高輝度」と豪語する。

 映像エンジンは高輝度パネルの実力を最大限に引き出す「ヘキサクロマドライブ」の進化版。HLG対応の「AI HDRリマスター」も搭載済みだ。HDRは有機EL同様に4方式に対応する(レコーダー一体型機GR770除く4K有機EL、4K液晶全製品がHDR 4方式に対応)。

 スピーカーシステムはメインのフルレンジスピーカーに、画面後方に上向きに仕込まれたイネーブルドスピーカーを組み合わせたもの。前述したSpace Tune Autoも搭載する。この他、4K対応お部屋ジャンプリンク、スイーベル機能付きの転倒防止スタンドなど、価値ある機能を積極的に搭載している。

 

パナソニック ビエラの2020年ラインナップ

※価格は編集部調べ。GR770シリーズはレコーダー一体型モデル

 

おすすめテレビ ①
独自設計/組み立てパネルでビエラ史上最高画質を実現

“ビエラ史上最高画質”を標榜するパナソニック有機ELテレビの最高峰。独自設計/組み立ての有機ELパネルに加えて、駆動回路、色彩制御にも、これまでにない高度な技術を投じている。ダイナミックレンジに余裕が生まれ、階調性も豊かになったことで、映像そのものの品位が高い。2019年登場の製品だが、総合的な表現力はいまもトップレベル。

4K有機ELテレビ
TH-55GZ2000
オープン価格(実勢価格30万円前後)
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おすすめテレビ ②
総合的表現力に磨きをかけた最新4K有機ELビエラ

最高峰のGZ2000の開発で培った技術、ノウハウを映像エンジン「ヘキサクロマドライブ プラス」に反映させることで、有機ELテレビとしての総合的な表現力に磨きをかけた注目作。「AI HDRリマスター」もHLG対応となり、4K放送が暗く感じる問題も克服している。薄型デザインの転倒防止スタンド(スイーベル機能付き)も実に魅力的だ。

4K有機ELテレビ
TH-65HZ1000
オープン価格(実勢価格42万円前後)
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おすすめテレビ ③
明るい映像が魅力の4K液晶ビエラの最高峰

パネル面とフレームの段差がない新開発パネルを生かしたスタイリッシュなデザインが特徴的な4K液晶ビエラの最高峰ラインの55インチ機。絵柄に応じてLED光量をユニット単位で制御し、同時により微小なエリアごとに電気的に輝度情報を制御するというWエリア制御を高輝度パネルに最適化したことで、明るく、メリハリの効いた映像を描き出す。

4K液晶テレビ
TH-55HX950
オープン価格
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