Record Player System
プロジェクトX1
¥110,000
カートリッジ部(Pick it S2 MM)●発電方式:MM型●出力電圧:7mV●適正針圧:1.8g●自重:7.2g
トーンアーム部●型式:スタティクバランス・ストレート型●有効長:218.5mm●適合カートリッジ重量:7g~10g(標準装備のカウンターウェイトNo.46装着時)
プレーヤー部●駆動方式:ベルトドライブ●モーター:ACシンクロナスモーター●回転数:33・1/3、45、78rpm●ターンテーブル:20mm厚アクリル製1.5kg●寸法/重量:W415×H125×D335mm/7kg●備考:ダストカバー付属。ハイグロスブラック(BK)、マットウォルナット(MW)、ハイグロスホワイト(WH)の3仕上げあり

XTENSION9TA

¥400,000
トーンアーム部(オルトフォンTA110)●型式:スタティクバランス型●有効長:231mm●適合カートリッジ重量:18g~40g(シェル含む)
プレーヤー部●駆動方式:ベルトドライブ●モーター:ACシンクロナスモーター●回転数:33・1/3、45rpm●ターンテーブル:アルミニウム合金製5.4kg●寸法/重量:W465×H185×D350mm/18.0kg●備考:ダストカバー付属。ピアノブラック仕上げ(BK)とウォールナット・バール仕上げ(WB、日本国内向け特別仕様、写真)あり、写真のカートリッジは別売

必要にして不可欠、シンプルかつ技術的に正しい設計

 1990年頃、オーストリアのウィーンで創業したプロジェクト社(Pro-Ject AUDIO SYSTEMS)。当時はすでにCDを主体とするデジタルオーディオ時代に入り、アナログディスク再生の退潮はもう決定的になっていたわけだが、同社のキャリアはアナログプレーヤーからスタートした。初号機の型名もずばりPro-Ject1だった。

 この製品はやがてX-Line としてシリーズ化され、プロジェクト・プレーヤーの中核を担う看板モデルに育っていく。「必要にして不可欠、シンプルかつ技術的に正しい設計」というのが一貫したコンセプトだ。

 30年に近い歳月を経た今もX-Lineは健在、というより、おそらく世界的なアナログオーディオの復権現象も手伝って、最近ますます活発な動きをみせはじめている。ここで紹介するX1とXTENSION9TA は、先般発売された高級機XTENSION12RSに続く最新モデルである。

 X1はMMカートリッジ(オルトフォン製)付きのコンプリートシステム。低価格ながらプロジェクト製品らしさを凝縮し尽くしたようにまとまりのよいX-Line 入門機だ。スタート/ストップのシーソースイッチがシャーシ底面にあるのには驚くが、33・1/3/45回転の切換えについてはAC同期モーター駆動回路の出力周波数による電子選択を実現。さらにサブプラッターのベルトをかけ替えれば78回転も出せる。あるいは分厚いアクリル材のメインプラッターや、カーボンとアルミを組み合わせた防振構造のトーンアームなどなど、的確に要所を押さえた設計だ。

 仕上がりの音質は、申しぶんのないもの。甘口傾向ではあるけれど、しなやかで優雅でたっぷりと色彩感も豊かだし、高域端のアクセントも芸のうち。若々しくゴージャスな勢いのよさが好ましい。たとえばテクニクスの傑作SL1500Cあたりと聴き比べてみよう。がらり雰囲気表現が一変して、アナログのおもしろさを再認識すること請け合いだ。

↑X1のトーンアームは8.6インチ長のシェル一体型。アームパイプはカーボンとアルミの2重構造。

↑X1はサブプラッターを駆動する構造。33・1/3、45rpm時は写真の平ゴムベルトを使用、78rpm時は付属の丸ゴムベルトを使用し掛け替える。

↑付属カートリッジはオルトフォンと共同開発したMM型Pick it S2 MM。交換針はPick it S2 MM STYLUS(¥10,000)。

↑X1の出力はトーンアームの真下に配置されたRCAアンバランス端子。アース線付きのRCA-RCAフォノケーブルが付属する。

↑X1に付属のダストカバーを付けた状態。

3極管アンプにも通じる上品な透明感

 XTENSION9TA は、同12RSのジュニア版といえそうな中堅モデル。堂々とした金属プラッターの外周ベルトドライブだが、78回転には対応せず、ピッチ調整とスピードカウンターも省かれている。トーンアームはオルトフォンの9インチ・ユニバーサル型TA110(日本では未発売)で、カートリッジは付属しない。代りにSPUシリーズのような重量級カートリッジも使用できることが見逃せないポイントだ。

 フェーズメーションPP2000を装着して聴くと、こちらはるかに細密周到。X1の華麗さには意図した演出があったと分かる。そこがアナログの妙味でもあるわけだが、必要にして不可欠な音の深さとはやっかいなもので、聴いてしまえば力量の差は争えない。12RSよりもすこし細身で同様に誠実なXTENSION9TAの音質は、3極管アンプにも通じる上品な透明感に満ちていた。

↑XTENSION9TA搭載のトーンアームはスタティックバランス型のオルトフォンTA110(日本未発売)。

↑自社製の低ノイズシンクロナスモーターを採用しターンテーブル外周を丸ベルトで駆動。回転数切替えはフロントの電子スイッチで行なう。

↑XTENSION9TA付属のクランパー。800gの重量級。

↑付属ダストカバーを付けたXTENSION9TA。

↑XTENSION9TAを試聴する高津氏。
試聴に使用したカートリッジはフェーズメーション PP2000(¥440,000)。

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