世界第2位のテレビメーカーとなった中国、TCL。同社では、QLEDという量子化ドットを使ったバックライトを装備する液晶テレビ、65X10を旗頭に7モデルで現在展開中だ。その65X10はQLED液晶の搭載のほかにも、ドルビーアトモス対応のサウンドバースタイルの音響システムも特徴とするスタイリッシュな4K対応テレビだ。
 ラインナップとしてはC8シリーズ2モデル(65/55インチ)、P8S/Bシリーズ4モデル(65/55/50/43インチ)を擁する。いずれもVA液晶を採用した4K対応テレビとなっている。なお、ここで紹介する全7モデルともBS/CS4Kチューナーは非内蔵。
 同社では、下記の藤原陽祐さんのインタビューにあるように積極的にQLED液晶テレビの高級モデルを今年後半から日本でも展開する予定。8Kテレビも視野に入っているとのことなので、注目したい。
(編集部)

4K対応液晶テレビ
65X10
オープン価格(実勢価格20万円前後)
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本機は、QLED液晶を搭載したテレビとして日本で初めて登場したモデル。ディスプレイ直下に15000個のMini LEDを搭載、画面を768分割して部分点滅を行ないピーク輝度で1500nitもの明るさを実現。サウンドバースタイルのデザインも魅力だ

 

4K対応液晶テレビ
65C8
オープン価格(実勢価格12万円前後)
ホームページはこちら>

独特の形状の3本足スタイルのスタンドが特徴的な65C8。画面下側には、サウンドバースタイルの音響システムを搭載している

 

TCL JAPAN ELECTRONICS 社長インタビュー   
全世界テレビ第二位のTCL、日本本格参入の意気込みとは?

 

8KのQLED液晶で挑む世界ナンバーワン画質

 洗濯機、冷蔵庫、エアコン、そしてテレビと、世界的な総合家電メーカーとして知られる中国のビッグネーム、TCL。いまから約40年前、もともとは磁気テープの製造、販売からスタートしているが、電話機の製造、販売で大成功を収め、1992年には大型テレビを開発。さらに2004年、フランスの家電メーカー、トムソン社から「トムソン」や「RCA」ブランドを取得し、世界の巨大なテレビ市場に打ち出していくことになる。

 家電以外にも、液晶パネル、モバイル関連、動画配信VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービス、金融投資、不動産と、その事業内容は多岐にわたり、従業員はグループ全体で7万5000人にもおよぶという。グループの年間売上は日本円換算でなんと約2.1兆円。なかでも家電の中核となる液晶テレビは3,200万台(2019年実績)を出荷しているが、これは韓国サムスンに次いで世界第2位の数字となる。

 このTCLがいよいよ日本のテレビ市場に本格参入する。同社のテレビはすでに160ヵ国で販売されており、確かな成果を上げている。日本についてもすでに3年ほど前からオンライン販売が始まっているが、これはあくまでも市場状況の把握、確認であり、本格始動に向けた地ならしのようなもの。(残念ながら2021年に延期になってしまったが)東京オリンピック・パラリンピックというビッグイベントを見据えつつ、いよいよ満を持して本格的な参入を果たす時が到来したというわけだ。

 ここでは同社の日本法人、TCL JAPAN ELECTRONICSの陣頭指揮をとる張海星氏に、日本のテレビ市場における戦略およびTCLテレビの特徴について、お話をうかがった。

 

Special Interview
張 海星 さん
株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS
代表取締役社長

 

TCLはパネル生産から垂直統合型のテレビメーカー

藤原 早速ですが、TCL製テレビの特徴を教えてください。

 TCL ELECTRONICS自体はテレビを製造、販売するセットメーカーですが、液晶パネルはもとより、本体キャビネット、スピーカーのドライバーユニットについても、TCLグループ内で賄うことができます。つまりテレビの主要な部品はほとんど自前で製造・調達して、垂直統合でモノづくりができるわけです。

藤原 それだけ個性的な製品が開発できると……。

 いわゆるサプライチェーンを内製化することで、供給元に依存することなく、魅力的な新製品をより速く、安価で市場に投入できる。それが大きな強みです。

藤原 テレビの心臓部となる液晶パネルが内製化できるのは大きいですね。

 液晶パネルの開発、製造はTCL科技集団の子会社である、TCL−CSOT(TCL Shenzhen China Star Optoelectronics Technology。TCL華星光電技術有限公司)が行ないます。工場は武漢と深圳(シンセン)の2ヵ所に合計6工場あり、家庭用テレビのパネルは主に深圳で生産されます。深圳は第8.5世代の2工場(t1、t2)と、最新鋭の第11世代の2工場(t6、t7)のラインに分けられますが、前者は32~55インチ、後者が65インチ以上のパネル生産を担当しています。88/75/65インチの8Kパネルも最新設備を装備した第11世代のラインで生産されています。

 

TCLは、世界第二位のテレビメーカーとしてアメリカでも大きな存在感を見せている。写真は今年1月に米国ラスベガスで開催された世界最大のエレクトロニクスショー、CESでのプレスカンファレンス(写真上)と、展示ブース(写真下)での様子。8K、QLED、Mini LEDが2020年のTCLの大きな技術的なテーマだ

 

QLED液晶とMini-LED on Glassとは?

藤原 TCL-CSOTで行なっている液晶パネルの技術的な特徴はどんなところですか。

 普及タイプから4K、8Kの高精細タイプまで多様な液晶パネルを生産していますが、画質に関わる部分では光の有効利用が可能なQuantum Dots(量子ドット、以下QLED)を使った液晶パネル技術と、細かなLEDを多数使ったMini-LED on Glassのバックライト技術を特徴として挙げたいと思います。

藤原 どんな技術なのですか。

 まずQLEDですが、これは光の波長変換によって、より効率的にRGBの発色を確保する技術です。液晶パネルとバックライトの間に量子ドット光学シートを配置して、そこに青色LEDの光を入射させます。量子ドットのサイズによって光の波長を制御(波長変換)して発色するため、通常の白色LED(青色LEDに黄色の蛍光体を塗布したタイプ)に比べて、光のロスが少なく、豊かな発色が可能になります。

藤原 4K、8K放送やUHDブルーレイで採用された広色域規格、BT.2020に対して、どの程度カバーできるのでしょうか。

 一般的な液晶パネルの場合、70%前後のカバー率だと思いますが、QLED技術を採用した現行モデル65X10は約80%カバーしています。日本では現在、高級テレビの市場は有機ELテレビが優勢ですが、全世界の市場で見るとQLED液晶テレビと有機ELテレビが拮抗しています。明るさ、鮮やかさではQLEDに分が有ると考えています。

 

QLED液晶の仕組み

QLED(Quantum Dots Light Emitting Diode Display)液晶テレビは、亜鉛、カドミウム、セレン、硫黄原子で構成されるナノメートル単位の極小半導体粒子である量子ドット(Quantum Dots)を用いたバックライトを使った液晶テレビのこと。光や電気の刺激を受け、青色LED光源を、他の色に変換でき、しかもその取り出したRGBの各色の純度が極めて高く、結果的に色再現に優れた映像表現を可能にするという。TCLは、自社グループでQLED液晶の4Kパネル/8Kパネルを生産している。TCLは、4K/8Kの高解像度テレビで、色再現に優れたQLED液晶テレビの高画質を訴求する構えだ。     
(編集部)

 

藤原 なるほど、Mini-LED on Glass技術についてはどうですか。

 この技術は、ミクロンサイズの小型LEDを透明度の高いガラス基板に数万個並べて、液晶テレビのバックライトを構成するというものです。プリント回路基板を用いた通常のLEDバックライトに比べて、効率、寿命、輝度出力などの点で断然有利です。また絵柄に応じてLEDの光量を制御し、高コントラスト化を図るローカルディミング(部分駆動)についても、5184エリアのきめ細かな制御が可能になります。

藤原 輝度、コントラスト、鮮やかな発色、さらにさらに寿命も伸びる、いいことづくめですね。

 国際基準での測定(編註:横、縦方向ともに全体の32、面積では約10%)では最高輝度は1,500nit近くに達します。日本で近々発売する予定で検討している75インチの8Kテレビでは、QLED液晶パネルと一緒にこの技術も投入する計画です。2020年内を目標に導入したいと考えています。

 

TCLは、パネル製造からテレビセットの組み立て、販売までを一貫して行なう、いわゆる垂直統合型のテレビメーカー。最新技術を用いたパネルを最新のテレビセットにいち早く反映させることが可能で、画質の原点であるパネルを自社で生産できることがメリットといえよう。写真上が中国の南東、香港の北に位置する、広東省深圳(シンセン)にある、パネルメーカーのTCL−CSOTの本社。写真下がその最新工場である「t6/t7工場」だ。いずれもその大規模ぶりに驚く

 

この秋、日本に数多くの新製品を投入予定

藤原 まもなく発表される新製品は日本市場向け専用に開発されたようですね。

 この秋、4Kテレビを中心に数多くの新製品を発売する予定です。すべてこの3年間、日本で学んだことをTCL本社にフィードバックして、日本市場向けに開発されたカスタム仕様モデルになります。4Kチューナー内蔵のQLEDテレビや、Android TV OS採用のスマートテレビを用意しています。またコールセンターもすべて日本人が対応し、今年の2月からは土曜日、日曜日も受け付けられる体制を整えました(編註:年末年始を除く)。

藤原 世界のTCLがいよいよ本気になった感じがします。

 画質だけでなく、機能性、デザイン、設置性、購入後のサポートと、日本ではすべてにおいて高いレベルが要求されます。ただ我々は世界のトップブランドを目指していますので、それには日本で認められることが不可欠です。世界でもっとも厳しい市場の日本で成功できれば、名実共に世界のナンバーワンに近づけると考えています。

藤原 今日はお忙しいところどうもありがとうございました。

 

取材を終えて

世界の高級テレビ市場で大きな存在感を示す
QLEDテレビの急先鋒、TCLに注目したい

 世界の高級テレビ市場を有機ELテレビと二分するQLED液晶テレビの急先鋒、TCL。東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、いよいよ今年、日本市場に本格参入を果たす。この秋、まず4Kチューナー内蔵のQLEDテレビ(65/55インチが登場の見込み)をはじめ、4Kテレビ、ハイビジョンテレビの高級機、普及機をとりまぜて10機種前後を一気に発売する。さらに年内にはQLED液晶にMini-LED on Glass技術を加えた8Kテレビを製品化する予定だ。

 このふたつの技術の共演により、明るさ、鮮やかさが際立ち、液晶テレビの最大の弱点とされるコントラストの問題も解消されるという。4K有機ELテレビがプレミアムテレビ市場をほぼ独占しているいまの日本の状況に、TCLのQLEDの4Kテレビ、そして8Kテレビが大きな一石を投じることができるかどうか。オーディオビジュアルファンはぜひ注目したい。          
(藤原陽祐)

 

TCLの2020年ラインナップ

※解像度はすべて4K。チューナーは地デジ、BS/CS各2、HDMI端子は各3系統搭載。実勢価格は編集部調べ

 

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